第60話 「こっちに来て、膝を付いて」

文字数 1,211文字

ケルビーノの歌に感嘆する伯爵夫人。
素晴らしいわ! あなたがこんなに歌がうまいなんて、わたくし知りませんでした
本当に、彼は何でも上手ですのよ
だけどこの後は、フィガロの計画に沿って準備をしなければなりません。
さて、伯爵夫人に歌を聴いて頂いたことだし、

次は私たちが仕事をしなければね、ステキな兵士さん!

フィガロから話を聞いているでしょう?

みんな話してくれたよ
ケルビーノと背比べをするスザンナ。
ちょっと見せてね。

うまく行きそうだわ。同じぐらいの背丈だし。

そのマントを取って

スザンナはケルビーノの男物のマントを脱がせます。
こんなところを誰かに見られたら大変!

伯爵夫人は気が気ではありません。

それを察したスザンナは、ドアに鍵をかけます(これが後で効いてきます)。

どうやって髪を結いましょう?
衣装部屋から、わたくしのボンネット(帽子)を取ってきて。
スザンナが衣装部屋に行っている間に、ケルビーノは軍隊行きの辞令書を伯爵夫人に見せます。


フィガロの計画はまだ進行中。うまく行けばケルビーノは入隊を免れるかもしれませんが、まだわかりません。


兵士になれば、戦争で命を落とすかもしれません。ケルビーノ本人は今生の別れのつもりで、辞令書を見せたのです。

呆れた。あの人、いつも仕事が遅いくせに、こういうことには素早いのね!
今しがた、バジリオから受け取ったんです
だけど、伯爵夫人は大事なことに気づきます。
あの人ったら慌てて用意したから、印を忘れているわ
そもそもが伯爵の気まぐれの辞令。かなり無理があるのです。

ケルビーノが少し希望を取り戻したとき、ボンネットを手にしたスザンナが戻ってきます。

はい、お帽子
急いでちょうだい。伯爵が戻ってきたら、私たち大変よ!
ここからスザンナのアリア「こっちへ来て、膝をついて」です。

女物のドレスを着せられたケルビーノ。スザンナは張り切って、フルメイクをしていきます!

こっちへ来て。膝をついて。

じっとしててね

……(奥方様は、やっぱりきれいだなあ)
どうしても伯爵夫人を見てしまうケルビーノ。

スザンナは彼の顎を自分に向け、びしっと言い聞かせます。

あたしの方を向いて。

ほらその目! あたしの方へ

……
しっかり、まっすぐ!

奥方様はここにおられませんよ

襟を立てて、

視線は低く。両手は胸の下に。


じゃあ立ってもらって。

歩き方も、おしとやかにね

ケルビーノを立たせ、伯爵夫人を振り向くスザンナ。
ご覧下さいませ、この悪戯っ子を!

何てかわいいの!

女の子がみんな、夢中になるわ

むむむ。

……これは女性向けの「萌え」シーンかな?

きっとそうだろうね。可愛い少年の変身に、女性たちは大喜びしたと思われます。


この動画ではちょっと「百合」が入っていますが(あんまり可愛いので、伯爵夫人もクラクラしてしまったのでしょう)、もっとコメディー感の強い演出もあります。またケルビーノ自身も一緒に楽しんでいるものと、嫌がっているのに無理やり女装させられるものとがありますよ

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