第29話 「神は私にお与え下さった」
文字数 1,801文字
アンニーナがテーブルの片付けをしていると、ヴィオレッタが入ってきます。
ヴィオレッタは財産の処分をするので、その手続きのための客を迎える予定でいます。
ジュゼッペが持ってきた手紙を開くと、それはかつての娼婦仲間、フローラからのパーティーの招待状でした。
招待状を傍らに置いた時、ジュゼッペがお客様を案内して入ってきます。
ところが。
それは、ヴィオレッタが待っていた相手ではありませんでした。
ガタンと椅子から立ち上がるヴィオレッタ。
あからさまな敵愾心。
ヴィオレッタの方も抵抗を覚えます。
アルフレードの父、ジョルジュ・ジェルモンは部屋の中をぐるっと見渡します。
とんだ勘違いです。
ヴィオレッタは、アルフレードからは一切のお金を受け取っていないと主張します。
そしてちょうど、財産を売り渡すための証書が手元にありました。これこそが証拠です。
叩きつけられた証書を見て、ジェルモンは驚きます。
ヴィオレッタは慌てて手で制し、ジェルモンを黙らせます。
一応は、ヴィオレッタの誠意を理解したジェルモン。
それでも、この父親には言わねばならぬことがあったのです。
それは、アルフレードの妹に関することでした。
ジェルモンは愛する娘の肖像画を取り出し、ヴィオレッタに見せます。
ヴィオレッタは頭の良い女性。
自分が何を要求されているのか、すぐに理解します。
そこで相手の先手を打ち、打開策を提案しますが……
ジェルモンによって歌われる「神は私にお与えくださった」。
なぜ自分がここへ来なければならなかったか、その事情を切々と訴えますが、別れろという命令は今のヴィオレッタにとってあまりに残酷。彼女の心はズタズタになります。
憎まれ役のジェルモンですが、この人がいるからこそ、『椿姫』の物語に真実味が加わります。
ある意味、アルフレードよりも重要な登場人物ですね。
頑固な老人として描かれることも多いのですが、こちらの動画のジェルモンは、アメリカのバリトン、トーマス・ハンプソンさん。ジェルモン役をやるにはカッコ良過ぎ!?