第25話 「ある日、幸せそうな君が」

文字数 1,499文字

ヴィオレッタと二人きりになったアルフレード。

ほとばしる思いは抑えきれず、ここでついにぶつけてしまうのです。

ああ、あなたが僕のものだったらいいのに……!

そうしたら、僕が守ってあげられる。


華やかなパーティーでも、中身はむなしいじゃないですか。

はっきり言いますよ。誰もあなたのことを愛していない!


僕は違う。

僕は本物の愛であなたを包んであげられます

一生懸命なアルフレードですが、ヴィオレッタの方は愛の言葉なんて聞き飽きるほど聞いています。

別にありがたくも何ともない。だから笑い飛ばしてしまうのです。

真面目な人ね。

私のような女には、そんな大層な愛なんて無縁なのよ

あなたには心がおありですか
心……?

ええ、たぶん。でもなぜそんなことを?

心があるなら、愛を大切に思えるはずだ
ちょっとだけ、その言葉はヴィオレッタの胸に刺さります。
……あなた、本気なの?
ええ。一年前からです
アルフレードは一年前に、ヴィオレッタに一目ぼれしたということを伝えます。

ここで歌われるのが「ある日、幸せそうな君が」。テノールの名曲です。

ある日、幸せそうな君が

女神のように麗しい姿が僕の目の前に現れた

その日から、僕は胸ふるわせ

未知の愛に生きてきた

その愛は、ときめき

天も地も揺るがす、ときめき


そして不可思議で、また尊く、心に悩みと喜びをもたらすんだ

(途中で注釈ごめんね)

↑この、三番目のアルフレードの言葉は、この後も繰り返し出てきますよ~

あまりに真摯な言葉に、ヴィオレッタは絶句します。

娼婦である自分に、誰が真剣な愛情を注ぐというのでしょう? 冗談ならさっさとやめて欲しいものです。

それなら、私と関わらぬこと。

友情だけ、差し上げますわ

私は愛を知らぬ者。ご立派な愛は好みません。

私はつまらぬ女。他の女をお探しあそばせ。


そしたら私のこと、すぐにお忘れになりますわ

はねつけたヴィオレッタですが、アルフレードは強硬に口説き続けます。
愛は尊いんだ!
お忘れ下さい……!
何度も繰り返される、この問答。

最初は頑なだったヴィオレッタですが……

愛は、尊いんだ……
いいえ、お忘れに……
ヴィオレッタの虚勢は次第に失われていきます。

本当は誰かに愛されたい。その本音を隠し通すことはできません。


震えるヴィオレッタを抱き寄せ、アルフレードはそっとキスをします。

こちらは2000年にパリの歴史的建造物を使い、フランスのテレビで生中継(!)された「椿姫」より。

やや画質が気になりますが、テーブルの下でのキスシーンが素敵なのでこちらを使わせて頂くことに。こういう演出は、舞台ではなかなかできないですね。


アルフレード役は、アルゼンチンのテノール、ホセ・クーラさん。

この方は歌だけでなく、作曲や指揮もこなすそうです。

うわ~。

これはかなりの「胸キュン」シーンですね!

女性なら誰しも、一度はここまで口説かれてみたいものでは?
しかし、ヴィオレッタは頑なだな。

自分も好きなら好きって言えばいいのに。

素直じゃねえな

そのぐらい、ヴィオレッタの生きている世界が普通じゃないからだよ。

この時代、貧しい庶民の女の子がのし上がろうと思ったら、すさまじい世界に首を突っ込まなくちゃならなかったんだ。

ヴィオレッタはその美貌と頭の良さで、十分成功した方に入るわけだけど、ここまで来るには相当な無理があったんじゃないかな

そういえば、あのおっかない男爵は?

あいつはヴィオレッタの心配をしてくれないんだね

男爵は今ごろ他の女性と踊っているんでしょう。

パトロンの貴族なんて、それが普通。

むしろアルフレードが普通じゃないんだよ。


ヴィオレッタがそんな彼をどう感じていたかが、この後に語られます。

というわけで、次回もお楽しみに!

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色