第25話 「ある日、幸せそうな君が」
文字数 1,499文字
ヴィオレッタと二人きりになったアルフレード。
ほとばしる思いは抑えきれず、ここでついにぶつけてしまうのです。
ああ、あなたが僕のものだったらいいのに……!
そうしたら、僕が守ってあげられる。
華やかなパーティーでも、中身はむなしいじゃないですか。
はっきり言いますよ。誰もあなたのことを愛していない!
僕は違う。
僕は本物の愛であなたを包んであげられます
一生懸命なアルフレードですが、ヴィオレッタの方は愛の言葉なんて聞き飽きるほど聞いています。
別にありがたくも何ともない。だから笑い飛ばしてしまうのです。
ちょっとだけ、その言葉はヴィオレッタの胸に刺さります。
アルフレードは一年前に、ヴィオレッタに一目ぼれしたということを伝えます。
ここで歌われるのが「ある日、幸せそうな君が」。テノールの名曲です。
あまりに真摯な言葉に、ヴィオレッタは絶句します。
娼婦である自分に、誰が真剣な愛情を注ぐというのでしょう? 冗談ならさっさとやめて欲しいものです。
はねつけたヴィオレッタですが、アルフレードは強硬に口説き続けます。
何度も繰り返される、この問答。
最初は頑なだったヴィオレッタですが……
ヴィオレッタの虚勢は次第に失われていきます。
本当は誰かに愛されたい。その本音を隠し通すことはできません。
震えるヴィオレッタを抱き寄せ、アルフレードはそっとキスをします。
こちらは2000年にパリの歴史的建造物を使い、フランスのテレビで生中継(!)された「椿姫」より。
やや画質が気になりますが、テーブルの下でのキスシーンが素敵なのでこちらを使わせて頂くことに。こういう演出は、舞台ではなかなかできないですね。
アルフレード役は、アルゼンチンのテノール、ホセ・クーラさん。
この方は歌だけでなく、作曲や指揮もこなすそうです。
そのぐらい、ヴィオレッタの生きている世界が普通じゃないからだよ。
この時代、貧しい庶民の女の子がのし上がろうと思ったら、すさまじい世界に首を突っ込まなくちゃならなかったんだ。
ヴィオレッタはその美貌と頭の良さで、十分成功した方に入るわけだけど、ここまで来るには相当な無理があったんじゃないかな