第2話 事前の勉強はいらないよ

文字数 1,756文字

私、オペラって見たことないの。前から見てみたかったんだけど、難しそうだと思って敬遠してた。
分かる、分かる! ウサギもそうだったよ。

でも大丈夫。予習なんていらないから!

オペラに興味を持てそうだったら、作品の背景や何かを知ったらいいんじゃないかな。知らないよりは、知ってた方が楽しめる。それだけだよ。

オレはクラシック音楽なら、ちょっとだけ聴くぜ?
お、どんな曲を聴くの?
ベートーヴェン。

幼稚園のとき「運命」を歌いながらカラヤンの真似をしたら、先生たちに「将来は世界的な指揮者だね」って言われたんだぜ(えっへん)。

ま……まあ、夢を語るだけなら自由だよね(かなり引き気味)。
ベートーヴェンは器楽曲が素晴らしいよね。ウサギも大好き!


でもベートヴェンは真面目な性格だったから、オペラは苦手だったみたい。あんなにたくさんの交響曲や協奏曲をものしておきながら、オペラは一つしか作らなかったんだ

ベートーヴェンのオペラは『フィデリオ』といいます。ちょっと難解な部分があるので、この作品で取り上げるとしたら、かなり後のことになると思います(作者より)
真面目な性格だとオペラが苦手って、どういうこと?

オペラこそ高尚で、庶民には敷居の高い芸術なんじゃないの?

そうとも言えるね。だけどオペラって、そもそもヨーロッパの上流階級の娯楽として始まったし、革命後に市民の時代になってからは、大衆性、ユーモアのセンスも求められてきたんだ。


そのあたり、モーツァルトの方が抜群にセンスが良かったと思う。モーツァルトのオペラは明るい雰囲気で、今も大変な人気なんだ。

ちなみにベートーヴェンと同時代にオペラ界を席巻していたのが、ロッシーニだよ。ロッシーニは大衆向けオペラの神様っていうイメージ。

何と言われようと、オレはベートーヴェン派だね。あの「苦しいぜ~!」って叫んでる感がたまらねえ。
サイコパス認定。
上演五分前のブザーが鳴りました。
二人とも、トイレは大丈夫?

途中退席したら、次の幕間まで入れないよ?

大丈夫。
オレも大丈夫。

でも幕間って何?

オペラって長時間に及ぶから、途中で休憩が入るんだ。一幕と二幕の間、とかね。

たまに短い「一幕物」っていう演目もあるけど。

『カルメン』は何幕まであるの?
第四幕まで。バッチリ長い方の演目だね。

物語が面白いから、ちっとも長いとは感じないけど……

『カルメン』の物語? 知らな~い
うん。もう本番が始まっちゃうから、まずは見てみよう。

だけどここで、「主役四人」の確認だけしておこうかな?

主役四人……?

主役だけで四人もいるのか!? オレ、覚えらんねえよ。

大丈夫。四人ともキャラが立ってるから、すご~く覚えやすいんだ。

以下、それぞれ自己紹介してもらいましょう!

何となくでいいので、性格を押さえておいてね。

私はカルメン。ジプシーの女よ。

男たちはみんな、私に言い寄ってくるけど、私は自由がモットー、束縛は大嫌いだから、そこんとこよろしく。

メゾ・ソプラノを代表する役だから、歌手はこぞって私を歌いたがるの。

有名な歌は「ハバネラ(恋は野の鳥)」。

僕、ホセといいます。バスク地方のナヴァラ出身で、今はセビリアの町で衛兵の伍長をしています。

趣味は鎖作りです。え、オタク? まあ、よく真面目って言われますけどね。

故郷に恋人を残してきたんです。かわいい子なんですよ? 僕は本気で愛しています。

テノールの役です。有名な歌は「花の歌」。

私、ミカエラといいます。ホセのお母さんを支えて、教会に通っています。今から都会のセビリアに行くの。お母さんから、大切な手紙を預かって……何が書いてあるかは、知ってるけど、恥ずかしくて言えないわ。

ソプラノの役です。有名な歌は「ミカエラのアリア」。

オレ様はエスカミーリョ。闘牛士の花形、マタドールだ。

死と隣合わせの仕事だが、成功すれば富と栄光、美女は思いのままなのさ。

「キザ男去れ」とか言ったそこのお前、オレと勝負する気はあるか? 命張ったこともないくせに、消えろ、この野郎。

バリトンの役だ。有名は歌は「闘牛士の歌」。

というわけで、次回からお話に入ります。

皆さん、服や髪型がビミョーではありますが(例えばミカエラは、本当は金髪のお下げ髪です)、まあここは性格を表す方が重要ってことで(笑)。

四人の皆さん、頑張って演じて下さいね!

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