第54話 あ~見つかっちゃった

文字数 1,496文字

このままでは、ケルビーノが本当にお城から追い出されてしまう。

スザンナは、必死に伯爵にすがります。
罠です。悪意です。

ペテン師の言うことなど信用なさいますな

しかし、一度疑念を持った伯爵は容易に許してくれません。
出て行ってもらう。あの浮かれ者には
可哀想に……
可哀想に……
(皮肉たっぷり)

ああ、可哀想にな。

だが他にも、私はあいつの逢引現場を押さえておる

何ですって、まさか!
何ですって、まさか!
ここから、伯爵が昨日の出来事を話します。
(スザンナに向かって)

私は昨日そなたの従妹、バルバリーナの部屋に行ったのだ。

ドアをノックしたら、彼女はいつになく、おどおどした様子で開けた。私はその表情に疑念を持ち、そこら中を探したのだ

そして、小机にかかる布をそーっと持ち上げると……

何と、あのガキがいたのだ!

(まったくバルバリーナともイチャついていたとは、呆れた奴め)

説明しながら、伯爵はまったく同じ動作で目の前にあった部屋着をそーっと持ち上げます。

するとそこには……

……
やっ、どうしたことだ!?
(真っ青)

ああ、ひどい不運……!

これはこれは。盛り上がってきたねえ~(大喜び)!
(スザンナをびしっと指さし)

大した女だな!

これでそなたが何をしていたか、はっきりしたぞ

(私を拒絶しておきながら、お前はこの少年とイチャついていたのか)

これより悪いことなんてあり得ないわ。

正義の神様、どうなるのでしょう?

(ニヤニヤが止まらない!)

美しいご婦人は、みんなこうするもの。

少しも珍しいことではありませんぞ

バジリオがここで「みんなこうするもの(コジ・ファン・トゥッテ)」と歌っていますが、これが4年後のモーツァルトのオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』につながっていきます。

やっぱり女の浮気性がテーマだよ

バジリオ、直ちにフィガロを呼んで参れ。

(ケルビーノを指さし)これを見せてやる!

さすがにあの者とて、結婚する意志が失せるであろう

(けっこう強気)

ではフィガロに事情を聞いてもらいます。

どうぞ行って下さい

ふてぶてしいな。どんな言い訳をするつもりだ?

罪は明白というに

罪なき者に言い訳の必要はございません
しかし、このガキはいつ参った?
彼はずっと、私と一緒におりました。

お殿様がここへお越しの時、私に奥方様への取りなしを頼んでいたのです

スザンナは、伯爵のお成りがケルビーノを慌てさせ、とりあえずあの場所に隠れたのだという経緯を話します。
だが私もその椅子に座ったぞ?

この部屋に入ってきたとき

(おずおずと)

……そのとき、僕は後ろに隠れました

では、私がそこに身を置いた時は?
そのとき、僕はそっと回って、ここへ潜みました
(スザンナに小声で)

では、こやつは聞いたのか?

私がそなたに申し聞かせたことを

できるだけ、聞かないようにしました
けしからん!
お静まりを。人が来ます!
外を見ると、どうやらフィガロがこちらへ向かっているようです。
ケルビーノ。そちはここにおれ!

この小蛇め!

……(えーん。また怒られちゃった)
コソコソ隠れたりするから、疑われるんじゃね?

堂々としてりゃいいのに

男女が二人きりでいると、直ちに疑われちゃう雰囲気だったのかもね。

あと、伯爵がとにかく怖かったんじゃない?

少年ケルビーノは、出番は意外と多くありません。

ですが二つのアリアが二つとも有名なのと、特異なキャラで強烈な印象を残します。天使とも妖精ともつかない感じですね。

この場面でも、布の下から「バア!」という感じで出てくることで昔から観客の心をつかんできました。

今日は動画がないので、こちらの画像のみご覧ください!
19世紀の水彩画より。

いつの時代も、この場面が人気だったことがうかがわれます。

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