第16話 また会うぜ
文字数 1,650文字
レメンダードに首根をつかまれ、引きずるように連れて来られた人物がいます。
それは、金髪に青いスカートの娘。
人々は驚いて見つめます。
もちろん、一番仰天したのはホセです。
駆け寄ってきたホセを、ミカエラはじっと見据えます。
そして静かに歌い出すのです。
じっと唇を噛み締めるホセ。
ミカエラの言うことは分かるけれど、今さらどんな顔で帰ったら良いのでしょう?
ホセがかちんときたのは、この時です。
泣きながらホセに取りすがるミカエラ。
ホセはミカエラを突き飛ばし、カルメンにつかみかかります。
ホセはカルメンの髪をつかみ、その首を絞めようとします。
周囲の人々が止めようとしても、ホセの怒りは収まりません。
ミカエラは泣きながらホセの説得を続けます。
ここで合唱団も、悲痛な声で歌います。
ホセの内面で起きている葛藤を代弁しているのです。
しかしそれでもなお、ホセはカルメンを離しません。
苦痛に顔を歪めるカルメン。
半狂乱になったホセは、ありったけの思いを彼女にぶつけます。
この、ホセが狂気の鬼に変貌していくシーンの迫力がすごいんです~!
全幕通して『カルメン』を観る時があったら、この部分にぜひ注目して下さいね。
歌詞に「鎖」の言葉が出てきましたが、これも一種のモチーフなのでしょう。
カルメンとホセが初めて出会った時にも、ホセはこれをいじっていました。
ホセを落ち着かせようと、人々は大騒ぎ。
しかし……
ミカエラが大声を発し、人々を黙らせます。
突然訪れた静寂の中、ミカエラは静かに語り出します。
悲痛な面持ちで、天に向かって絶叫するホセ。
ホセはくるりとカルメンに向き直ります。
しかしカルメンがほっとしたのを見逃さず、ホセは憎々しげに不気味な言葉を残すのです。
ミカエラの肩を抱き、立ち去るホセ。
カルメンはやっと解放されたとばかり、笑い出します。
残された人々のところに、遠くから歌声が聞こえてきます。
やはり遠ざかっていく、闘牛士の歌です。
うっとりと聞き入るカルメン。
もう心は完全にエスカミーリョの方に移っています。
これにて、第三幕の終了。
70年代、カルロス・クライバー指揮の『カルメン』より。
ホセ役はプラシド・ドミンゴさんです。近年セクハラ疑惑で騒がれてしまいましたが、やっぱり歌の迫力はさすが。「世界三大テノール」の一人として大スターになったのも納得です。