第98話 応援団のエール
文字数 1,449文字
応援団の中でもとりわけ大きな男、応援団長が真雪の雪だるまに向かって言った。
「雪だるま……いや、名前も知らないお嬢さん。いつか応援してくれたときのお礼にきたぜ」
「は、はぁ……」
私、応援したかな?
以前真雪は、応援団がグラウンドをランニングしていたときに、少しの間だけ見ていたことがあった。
だが、団長は見ながら応援してくれていたといまだに勘違いしているらしい。
「おい野郎ども、準備はいいか?」
「押忍!」
応援団のメンバーは、団長を中心にVの字のフォーメーションを組んだ。
団長が中腰になって両手を挙げる。
「フレーフレー雪だるま!」
ぽかんとした雰囲気になる教室内。
魂のこもった応援は、わずか数秒で終わった。
「よし。引き上げるぞ!」
「団長、せっかく応援に来たんです。せめてもう一言だけでも」
「ここでの主役は俺たちじゃない。これ以上目立っても、お嬢さんたちに迷惑をかけるだけだ」
「さっ、さすがは団長! 立場をわきまえていらっしゃる!」
「……邪魔したな。ひゅるるる~」
教室内があっけにとられている中、団長率いる応援団は下駄の音を響かせながら教室を去っていった。
「……今のは何だったんだろう」
真雪にはよくわからなかったが、教室の空気は一変していた。
生徒会長たちの発する暗黒オーラが、きれいさっぱり消えていたのだった。
席に座っていた生徒会長は、手に持っていたカップをぷるぷると震わせていた。
「さっきの応援で、教室内の暗黒オーラが薄れてきている! このままでは倒れかけていたオンエア部が立ち直ってしまうではないか。こうなったら……」
生徒会長は懐からスマホを取り出した。
「もしもし、こちら会長。例の奴をこっちに向かわせてくれ」
一方、真雪のほうは、応援団の起こした変化に気が付き始めた。
よくわからないけど、さっきの応援団さんのおかげかな。教室の雰囲気がさっきよりも良くなってるみたい。
これならいけるかも!
「応援団さん、応援ありがとうひゅん! 雪だるまも元気が出たひゅん!」
真雪は去っていった応援団に手を振って感謝した。
「それじゃあさっそく、雪だるまのオンエアを再開するひゅん。今度は」
「おおっと、ちょっと待ちな!」
派手な七色のマントを羽織った男子生徒が教室に入ってきた。
「! あなたは……じゃんけん王!」
真雪の前に現れたのは、かつて校内じゃんけん王と言われた、生まれながらの特殊能力(予知)を持った男。
真雪に敗れて王の座を追い出されて以来、誰にも気づかれることなく地味な学校生活を送っていた。
「以前じゃんけんで負けたことを根に持ってるわけではないが、とある大物さんからの依頼でね。これ以上好き勝手はさせられないのよね」
「なっ、なにがしたんだひゅん!」
「俺ともう一度じゃんけんで勝負してもらう。チャンピオンの座を賭けて!」
じゃんけん王は勢いよくマントを脱いだ。
その下から、ぼろぼろの制服が現れる。
「その姿は……」
「お前にじゃんけんで負けて以来、俺の存在感は無くなり学校の誰からも相手にされなくなってこのザマよ。この借りはきっちりと返させてもらう。リベンジだ」
「さっきは根に持ってないって言ってたのに、根に持ってるひゅん!」
「うるさい! 今度は俺が勝ち、再び学園じゃんけんドラマの主人公に返り咲いてみせる! じゃんけん勝負だ!」
言い争う二人の様子を見て、生徒会長は不気味な笑みを浮かべた。
「こっちはもしものときのために刺客を用意していたのです。オンエア部もここまでですよ。ククク……」
「雪だるま……いや、名前も知らないお嬢さん。いつか応援してくれたときのお礼にきたぜ」
「は、はぁ……」
私、応援したかな?
以前真雪は、応援団がグラウンドをランニングしていたときに、少しの間だけ見ていたことがあった。
だが、団長は見ながら応援してくれていたといまだに勘違いしているらしい。
「おい野郎ども、準備はいいか?」
「押忍!」
応援団のメンバーは、団長を中心にVの字のフォーメーションを組んだ。
団長が中腰になって両手を挙げる。
「フレーフレー雪だるま!」
ぽかんとした雰囲気になる教室内。
魂のこもった応援は、わずか数秒で終わった。
「よし。引き上げるぞ!」
「団長、せっかく応援に来たんです。せめてもう一言だけでも」
「ここでの主役は俺たちじゃない。これ以上目立っても、お嬢さんたちに迷惑をかけるだけだ」
「さっ、さすがは団長! 立場をわきまえていらっしゃる!」
「……邪魔したな。ひゅるるる~」
教室内があっけにとられている中、団長率いる応援団は下駄の音を響かせながら教室を去っていった。
「……今のは何だったんだろう」
真雪にはよくわからなかったが、教室の空気は一変していた。
生徒会長たちの発する暗黒オーラが、きれいさっぱり消えていたのだった。
席に座っていた生徒会長は、手に持っていたカップをぷるぷると震わせていた。
「さっきの応援で、教室内の暗黒オーラが薄れてきている! このままでは倒れかけていたオンエア部が立ち直ってしまうではないか。こうなったら……」
生徒会長は懐からスマホを取り出した。
「もしもし、こちら会長。例の奴をこっちに向かわせてくれ」
一方、真雪のほうは、応援団の起こした変化に気が付き始めた。
よくわからないけど、さっきの応援団さんのおかげかな。教室の雰囲気がさっきよりも良くなってるみたい。
これならいけるかも!
「応援団さん、応援ありがとうひゅん! 雪だるまも元気が出たひゅん!」
真雪は去っていった応援団に手を振って感謝した。
「それじゃあさっそく、雪だるまのオンエアを再開するひゅん。今度は」
「おおっと、ちょっと待ちな!」
派手な七色のマントを羽織った男子生徒が教室に入ってきた。
「! あなたは……じゃんけん王!」
真雪の前に現れたのは、かつて校内じゃんけん王と言われた、生まれながらの特殊能力(予知)を持った男。
真雪に敗れて王の座を追い出されて以来、誰にも気づかれることなく地味な学校生活を送っていた。
「以前じゃんけんで負けたことを根に持ってるわけではないが、とある大物さんからの依頼でね。これ以上好き勝手はさせられないのよね」
「なっ、なにがしたんだひゅん!」
「俺ともう一度じゃんけんで勝負してもらう。チャンピオンの座を賭けて!」
じゃんけん王は勢いよくマントを脱いだ。
その下から、ぼろぼろの制服が現れる。
「その姿は……」
「お前にじゃんけんで負けて以来、俺の存在感は無くなり学校の誰からも相手にされなくなってこのザマよ。この借りはきっちりと返させてもらう。リベンジだ」
「さっきは根に持ってないって言ってたのに、根に持ってるひゅん!」
「うるさい! 今度は俺が勝ち、再び学園じゃんけんドラマの主人公に返り咲いてみせる! じゃんけん勝負だ!」
言い争う二人の様子を見て、生徒会長は不気味な笑みを浮かべた。
「こっちはもしものときのために刺客を用意していたのです。オンエア部もここまでですよ。ククク……」