第4話 クラスメイトの日菜
文字数 1,934文字
放課後。
明夏は、化学のサボテン先生に、職員室に呼び出された。
というのも、授業中に机の上で、ねるねるねるねをしていたので注意されていたのだった。
長い長い説教が終わって、明夏は走って教室に向かっていた。
「サボテン先生って、語尾にサボサボ言うからついを授業さぼりたくなっちゃうんだよね。……っとと。やばいな~、教室に真雪をずっと待たせてるし。戻るのが遅すぎて、もう先に帰ってるかもしれない」
「こらー、廊下を走るなー!」
「ごめんなさーい。ねればねるほど色が変わっていくんですー」
意味不明な言葉で体育教師の怒号をかいくぐり、明夏は何とか教室に戻ってきた。
「ふう、やっとついた。真雪ごめ~ん、遅くなって………って、ええっ!?」
明夏が戻った教室の中は、あちこちにゴミが散乱していた。
そして、その中心にいるのが、ゴミ箱を抱えた真雪だった。
「あ、明夏ちゃんおかえり~」
「『おかえり~』じゃないよ。どうしたのこれ」
「オンエア部に行ってみるべきか行かないべきか、占ってたんだよ。行く行かないって言いながら一つずつゴミを外に出して、なくなったときに言ったほうを」
「それって普通、花びらとかでやるんじゃないの?」
「花がなかったからゴミ箱をかわりに」
「手が汚れちゃうでしょ! 早く手を洗ってきなさいよ、もう」
「あははっ、恥ずかしいところをみられてしまったよ。それじゃあ、またあとで~」
真雪はゴミ箱を立てると、明夏に汚れた手を振って教室を出て行った。
「まったく、後片づけも大変だな、こりゃ」
明夏が掃除道具をとりに教室の後ろに移動したとき、さっき真雪が閉めていったばかりのドアが勢いよく開いた。
「おおっ、これはすごいゴミの散らかりよう。……さてはめいちゃん、さっきまでゴミ箱を漁ってたな~?」
それは真雪ではなく、同じクラスメイトの日菜だった。
おかっぱ頭と底抜けの元気がトレードマーク。
クラスの中ではいろんな意味で、バランスブレイカーとして見られているところがある。
ちなみに日菜は、明夏が怒られていた隣で同じように別の先生に怒られていた。
明夏の説教が先に終わったので、一足先に教室に戻っていたというわけである。
「あ~、これは私じゃなくてね」
「およ? だとしたら、ゴミ箱にレーザービームが炸裂ですか。これは痛い」
「だから、これは真雪がやったの」
「ゆきちゃんが? まさかー。あの子はゴミ箱を漁るような人じゃないにゃろ。これはどう見てもめいちゃんが」
「私はゴミ箱を漁ってても普通なんかーい!」
妙に高いテンションのまま、日菜は明夏が片づけている様子を見ている。
「ねえねえ、めいちゃん。このゴミ箱のネタ、今度お昼の放送で流していい?」
「いいわけないでしょ。それにさっきから言ってるけど、これは私がやったんじゃないってば」
まったく。
日菜と話してると、どうも調子がくるってしまう。
「そういえば、お昼の放送って? 日菜、放送部に入ったの?」
「ううん、オンエア部なのだよ?」
「ふーん」
……。
…………。
「オンエア部!?」
「びっくりした。めいちゃん、急に大声出さないでよ。耳がいたいわん」
「ちょっと。オンエア部って、学食でお昼に放送してるあの?」
「そうなのです。先週、入部届を出しに行ったのねん。でも」
日菜はがくっとうなだれて、
「今は部員を募集していないって言われちゃった。およよ」
「それ、オンエア部に入れてもらえてないでしょ」
「そうとも言うねっ!」
「そうとしか言わないよ……。残念ね、真雪もオンエア部に入りたいって言ってたから、日菜がいれば心強かったのに」
「ゆきちゃんも? じゃあ、これから日菜と一緒にオンエア部の部室まで行ってみるのがいいかもしれないぴよ」
ガラガラ――。
ちょうどそのとき、教室のドアが開いた。
「あ~、ネットに入った石鹸が、網目の間からたくさんぐにょ~って出てて気持ち悪かったよ~。もう、あんないたずらしないでほしいよ」
さっき手洗いに行っていた真雪が教室に戻ってきたのだった。
「ゆきちゃん! ちょうどよかった。今から日菜と一緒に、オンエア部の部室まで行ってみようぺぽ」
日菜は真雪の腕をがっちりとつかんで、廊下に引っ張り出そうとする。
「え、え? ちょっと何? 明夏ちゃん、これってどういうこと?」
「日菜が一緒にオンエア部に行こうってさ。真雪、行ってみなよ」
「ちょっとまって~、まだ心の準備が。あ~れ~」
真雪は半強制的に、日菜に連れていかれてしまった。
「ちょうどよかったじゃない、日菜もオンエア部に入りたいって言っててさ。……さて、真雪と一緒に帰るの無理っぽいから、さっさと掃除して帰ろう」
明夏はほうきとちりとりを持って、真雪の散らかしたゴミの掃除を始めた。
明夏は、化学のサボテン先生に、職員室に呼び出された。
というのも、授業中に机の上で、ねるねるねるねをしていたので注意されていたのだった。
長い長い説教が終わって、明夏は走って教室に向かっていた。
「サボテン先生って、語尾にサボサボ言うからついを授業さぼりたくなっちゃうんだよね。……っとと。やばいな~、教室に真雪をずっと待たせてるし。戻るのが遅すぎて、もう先に帰ってるかもしれない」
「こらー、廊下を走るなー!」
「ごめんなさーい。ねればねるほど色が変わっていくんですー」
意味不明な言葉で体育教師の怒号をかいくぐり、明夏は何とか教室に戻ってきた。
「ふう、やっとついた。真雪ごめ~ん、遅くなって………って、ええっ!?」
明夏が戻った教室の中は、あちこちにゴミが散乱していた。
そして、その中心にいるのが、ゴミ箱を抱えた真雪だった。
「あ、明夏ちゃんおかえり~」
「『おかえり~』じゃないよ。どうしたのこれ」
「オンエア部に行ってみるべきか行かないべきか、占ってたんだよ。行く行かないって言いながら一つずつゴミを外に出して、なくなったときに言ったほうを」
「それって普通、花びらとかでやるんじゃないの?」
「花がなかったからゴミ箱をかわりに」
「手が汚れちゃうでしょ! 早く手を洗ってきなさいよ、もう」
「あははっ、恥ずかしいところをみられてしまったよ。それじゃあ、またあとで~」
真雪はゴミ箱を立てると、明夏に汚れた手を振って教室を出て行った。
「まったく、後片づけも大変だな、こりゃ」
明夏が掃除道具をとりに教室の後ろに移動したとき、さっき真雪が閉めていったばかりのドアが勢いよく開いた。
「おおっ、これはすごいゴミの散らかりよう。……さてはめいちゃん、さっきまでゴミ箱を漁ってたな~?」
それは真雪ではなく、同じクラスメイトの日菜だった。
おかっぱ頭と底抜けの元気がトレードマーク。
クラスの中ではいろんな意味で、バランスブレイカーとして見られているところがある。
ちなみに日菜は、明夏が怒られていた隣で同じように別の先生に怒られていた。
明夏の説教が先に終わったので、一足先に教室に戻っていたというわけである。
「あ~、これは私じゃなくてね」
「およ? だとしたら、ゴミ箱にレーザービームが炸裂ですか。これは痛い」
「だから、これは真雪がやったの」
「ゆきちゃんが? まさかー。あの子はゴミ箱を漁るような人じゃないにゃろ。これはどう見てもめいちゃんが」
「私はゴミ箱を漁ってても普通なんかーい!」
妙に高いテンションのまま、日菜は明夏が片づけている様子を見ている。
「ねえねえ、めいちゃん。このゴミ箱のネタ、今度お昼の放送で流していい?」
「いいわけないでしょ。それにさっきから言ってるけど、これは私がやったんじゃないってば」
まったく。
日菜と話してると、どうも調子がくるってしまう。
「そういえば、お昼の放送って? 日菜、放送部に入ったの?」
「ううん、オンエア部なのだよ?」
「ふーん」
……。
…………。
「オンエア部!?」
「びっくりした。めいちゃん、急に大声出さないでよ。耳がいたいわん」
「ちょっと。オンエア部って、学食でお昼に放送してるあの?」
「そうなのです。先週、入部届を出しに行ったのねん。でも」
日菜はがくっとうなだれて、
「今は部員を募集していないって言われちゃった。およよ」
「それ、オンエア部に入れてもらえてないでしょ」
「そうとも言うねっ!」
「そうとしか言わないよ……。残念ね、真雪もオンエア部に入りたいって言ってたから、日菜がいれば心強かったのに」
「ゆきちゃんも? じゃあ、これから日菜と一緒にオンエア部の部室まで行ってみるのがいいかもしれないぴよ」
ガラガラ――。
ちょうどそのとき、教室のドアが開いた。
「あ~、ネットに入った石鹸が、網目の間からたくさんぐにょ~って出てて気持ち悪かったよ~。もう、あんないたずらしないでほしいよ」
さっき手洗いに行っていた真雪が教室に戻ってきたのだった。
「ゆきちゃん! ちょうどよかった。今から日菜と一緒に、オンエア部の部室まで行ってみようぺぽ」
日菜は真雪の腕をがっちりとつかんで、廊下に引っ張り出そうとする。
「え、え? ちょっと何? 明夏ちゃん、これってどういうこと?」
「日菜が一緒にオンエア部に行こうってさ。真雪、行ってみなよ」
「ちょっとまって~、まだ心の準備が。あ~れ~」
真雪は半強制的に、日菜に連れていかれてしまった。
「ちょうどよかったじゃない、日菜もオンエア部に入りたいって言っててさ。……さて、真雪と一緒に帰るの無理っぽいから、さっさと掃除して帰ろう」
明夏はほうきとちりとりを持って、真雪の散らかしたゴミの掃除を始めた。