第48話 オンエア部を残す理由
文字数 1,625文字
ええっと、今度は名前のことを聞いてみようかな。
先輩の本当の名前は何ですか? でいいよね。
いろいろとまわりくどいよりも――。
「真雪ちゃんはさ、どうしてオンエア部を残そうとしてるの?」
真雪がいろいろと考えてるうちに、メロン先輩に質問されてしまった。
思いがけない質問に、真雪はすぐに答えられなかった。
「え? えっと、それは……」
オンエア部を残したい理由。
真雪は考えてみた。
やっぱり、部活動がやりたい! という気持ちがあったからだと思う。
それに、
「私、部活動をするのがオンエア部が初めてなんです。まだ始めたばっかりなのに、何もできないまま終わってしまうのがいやで……まだここで何をしたいかもはっきりとは決まってないんだけど、その、何て言えばいいんだろう……」
「へえ。真雪ちゃん、けっこう真面目なんだ」
「え? 私が?」
「ああ、ちょっとそう思っただけだから。樹々とはまた違うタイプだけどね。そっかー、何をしたいかねえ」
メロン先輩は軽くブランコを漕ぎ始めた。
その目は、どこか遠いところを見ているような感じがする。
「ねえ、真雪ちゃん。もしも私がオンエア部に入部したらどうする?」
「そ、それはとっても嬉しいです! だって、先輩はとても面白いし、気さくに話もできるし。……あの、先輩は入部してくれるんですか?」
「違う違う、ちょっと聞いてみただけだから。ごめんね。私は気の向くままに行動する方が性に合ってるの」
「……そうですか。残念です」
「ちょ、ちょっと、そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。ほら、私がいなくてもさ、樹々がいるじゃない?」
「樹々先輩もすごくいい人なんです。でもメロン先輩がいたほうが、もっと楽しい部活になりそうだなと思って」
「……そっか、ありがと。真雪ちゃんのそういうところって、とても大切なことかもしれないね」
「そういうところ?」
「部活を楽しもうとしてるところ。真雪ちゃんなら、きっとこれからもオンエア部でうまくやっていけるよ。それに……ううん。やっぱりなんでもない」
メロン先輩は、言いかけてやめた。
そして、思い切り足を振り上げて靴を飛ばした。
靴はずっと遠くの、公園の端の方まで飛んでいった。
「おお~、思ったよりも飛んだねえ」
さっきメロン先輩は何を言いたかったのだろう。
真雪は、メロン先輩の言葉の続きが少し気になっていた。
と、そこへ、
「ううっぷ、やっぱりこんなにたくさんアイス食べられな~い」
欲張ってたくさんアイスを頼んだ明夏が、二人の元へよろけながらやってきた。
メロン先輩は明夏を見て、あちゃーと言わんばかりに頭を抱えた。
「もう、しょうがないなぁ。明夏ちゃん、あとどれくらい残ってる?」
「トリプルがあと二つくらい……」
「お、ちょうどいいじゃない。真雪ちゃん、もう一つくらいアイス食べられる?」
「あ、はい。一つくらいなら」
「じゃあ、二人で一つずつ食べよう。マスクメロンとラムレーズン、どっちがいい?」
「私は――」
メロンと言いかけて、ちょっと考えてみた。
ここで私がラムレーズンを選んだら、メロン先輩はマスクメロンを食べるんだよね。
メロン先輩がメロンを食べてるところを見てみたい!
「ラムレーズンで」
「ほい、ラムレーズン。じゃあ、私はこっちか」
メロン先輩に箱ごとラムレーズンを渡された。
メロン先輩は自分の大納言あずきの上にマスクメロンをのせた。
それから、幸せそうな表情をして、メロンを食べていた。
メロン先輩を見て、真雪がくすっと笑った。
「ん? 真雪ちゃんどした? 箱の中にラブレターでも入ってた?」
「いや、違うんです。メロン先輩がマスクメロンを……ふふっ」
「私もメロンくらい食べるよ~。真雪ちゃんだって、雪だるまとか食べるでしょ?」
「食べません!」
真雪はぷくっと頬を膨らませる。
今日は最後の最後まで、油断のできない一日だった。
それでも今日は真雪にとって、思い出に残る一日だったことには変わりなかった。
先輩の本当の名前は何ですか? でいいよね。
いろいろとまわりくどいよりも――。
「真雪ちゃんはさ、どうしてオンエア部を残そうとしてるの?」
真雪がいろいろと考えてるうちに、メロン先輩に質問されてしまった。
思いがけない質問に、真雪はすぐに答えられなかった。
「え? えっと、それは……」
オンエア部を残したい理由。
真雪は考えてみた。
やっぱり、部活動がやりたい! という気持ちがあったからだと思う。
それに、
「私、部活動をするのがオンエア部が初めてなんです。まだ始めたばっかりなのに、何もできないまま終わってしまうのがいやで……まだここで何をしたいかもはっきりとは決まってないんだけど、その、何て言えばいいんだろう……」
「へえ。真雪ちゃん、けっこう真面目なんだ」
「え? 私が?」
「ああ、ちょっとそう思っただけだから。樹々とはまた違うタイプだけどね。そっかー、何をしたいかねえ」
メロン先輩は軽くブランコを漕ぎ始めた。
その目は、どこか遠いところを見ているような感じがする。
「ねえ、真雪ちゃん。もしも私がオンエア部に入部したらどうする?」
「そ、それはとっても嬉しいです! だって、先輩はとても面白いし、気さくに話もできるし。……あの、先輩は入部してくれるんですか?」
「違う違う、ちょっと聞いてみただけだから。ごめんね。私は気の向くままに行動する方が性に合ってるの」
「……そうですか。残念です」
「ちょ、ちょっと、そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。ほら、私がいなくてもさ、樹々がいるじゃない?」
「樹々先輩もすごくいい人なんです。でもメロン先輩がいたほうが、もっと楽しい部活になりそうだなと思って」
「……そっか、ありがと。真雪ちゃんのそういうところって、とても大切なことかもしれないね」
「そういうところ?」
「部活を楽しもうとしてるところ。真雪ちゃんなら、きっとこれからもオンエア部でうまくやっていけるよ。それに……ううん。やっぱりなんでもない」
メロン先輩は、言いかけてやめた。
そして、思い切り足を振り上げて靴を飛ばした。
靴はずっと遠くの、公園の端の方まで飛んでいった。
「おお~、思ったよりも飛んだねえ」
さっきメロン先輩は何を言いたかったのだろう。
真雪は、メロン先輩の言葉の続きが少し気になっていた。
と、そこへ、
「ううっぷ、やっぱりこんなにたくさんアイス食べられな~い」
欲張ってたくさんアイスを頼んだ明夏が、二人の元へよろけながらやってきた。
メロン先輩は明夏を見て、あちゃーと言わんばかりに頭を抱えた。
「もう、しょうがないなぁ。明夏ちゃん、あとどれくらい残ってる?」
「トリプルがあと二つくらい……」
「お、ちょうどいいじゃない。真雪ちゃん、もう一つくらいアイス食べられる?」
「あ、はい。一つくらいなら」
「じゃあ、二人で一つずつ食べよう。マスクメロンとラムレーズン、どっちがいい?」
「私は――」
メロンと言いかけて、ちょっと考えてみた。
ここで私がラムレーズンを選んだら、メロン先輩はマスクメロンを食べるんだよね。
メロン先輩がメロンを食べてるところを見てみたい!
「ラムレーズンで」
「ほい、ラムレーズン。じゃあ、私はこっちか」
メロン先輩に箱ごとラムレーズンを渡された。
メロン先輩は自分の大納言あずきの上にマスクメロンをのせた。
それから、幸せそうな表情をして、メロンを食べていた。
メロン先輩を見て、真雪がくすっと笑った。
「ん? 真雪ちゃんどした? 箱の中にラブレターでも入ってた?」
「いや、違うんです。メロン先輩がマスクメロンを……ふふっ」
「私もメロンくらい食べるよ~。真雪ちゃんだって、雪だるまとか食べるでしょ?」
「食べません!」
真雪はぷくっと頬を膨らませる。
今日は最後の最後まで、油断のできない一日だった。
それでも今日は真雪にとって、思い出に残る一日だったことには変わりなかった。