第89話 ゴブのオンエア!
文字数 1,408文字
「真雪、どうしちゃったんだろう……」
文香は、心配そうな顔をしていた。
真雪は教室を飛び出していったまま、なかなか帰ってこない。
公開オンエアのためにつくられたセットは、ぽつんと寂しそうに真雪の帰りを待っているみたいだった。
「文香さん。あのセット、片づけとく? 真雪が無理ならもう」
「ううん、もう少し待って。真雪はきっと戻ってくるはずだから」
ホール係の女子が提案だったが、文香はそれを待ってもらった。
だが、喫茶店内に人が多くなってきてるので、場所をとっているセットが邪魔になっているのはたしかだった。
「真雪、早く戻って来て。あなたがやりたかったのは、こんなことじゃないはずよ」
文香の小さな独り言。
すると、それをどこかで聞いていたかのように、いきなりゴブが文香の前に現れた。
「真雪さんはまだ帰ってこないの? 自分でやると言っておきながら、まったくしょうがない子ね」
ゴブはあきれたような感じで言った。
「ゴブ、あなた厨房で料理係じゃなかった?」
「いまは休憩中よ。それよりも、オンエア席が空席になっててお困りのようね。真雪さんが戻ってくるまで、私が代わりにオンエアをやっておきましょうか?」
意外な提案だった。
「ゴブ、いいの? あなた、真雪たちオンエア部のことをあまり良く思ってなかったんじゃ……」
「そうね。ちょっとした気まぐれかしら。それとも、真雪さんも短い間だったけど私たちと同じ放送部員だったから? 本当に不思議なのよね。私、今は真雪さんをちょっとだけ助けてあげたい気持ちになっているのよ」
「ゴブ……」
ゴブはちょっと赤くなって、恥ずかしがるように目をそらして言った。
真雪が放送部を辞めたあと、ゴブは真雪のことを心配してた。オンエア部を新しく作ったって聞いたときは、少し嬉しそうだったし。
仕方なくみたいに言ってるけど、本当は協力したかったのかも。
「どうするの? 早くしないと、私の気が変わって、オンエアをやりたくなくなっちゃうわよ?」
「うん、ありがとう。じゃあちょっとの間だけ、オンエアを頼んでいい? 私、急いで真雪を捜してくるから」
「オッケー、まかせてちょうだい。もし真雪さんが戻らなくても、私が最高のオンエアにしてあげるわ。さあ、放送部で鍛えた腕の見せ所よ!」
注目が集まる中、ゴブはオンエアセットに向かった。
「さ、みなさんご注目。放送部次期エース候補の五文太が、公開オンエアであなたのハートをがっちりキャッチしちゃうわよん」
ゴブの公開オンエアが始まった。
オネエ口調のオンエアは、珍しさもあってみんなに注目されてきているみたいだ。
「さすが放送部のエース候補!」
文香は同じ部のゴブの存在を頼もしく思った。
これでしばらくは時間が稼げそうね。
真雪、お願いだから早く戻って来て!
そのころ真雪たちは、オンエア部の五人そろって2階の空き教室にいた。
なぜそんな場所にいたのかというと、
「……本当にこれで教室まで行くの?」
真雪だけ、大きな雪だるまの着ぐるみを着ている。
ここは演劇部が小道具の物置に使っているところで、雪だるまの着ぐるみを借りにきたところだった。
「謎の雪だるまが現れて、いきなりオンエア開始する。私と日菜が隠れて考えてた今日のオンエアプランよ」
「めいちゃんの言うとおりにょす。ゆきちゃん、日菜たちの思いを乗せて、いざ教室へ!」
「本当に大丈夫なのかな……」
真雪は少し不安になってきた。
文香は、心配そうな顔をしていた。
真雪は教室を飛び出していったまま、なかなか帰ってこない。
公開オンエアのためにつくられたセットは、ぽつんと寂しそうに真雪の帰りを待っているみたいだった。
「文香さん。あのセット、片づけとく? 真雪が無理ならもう」
「ううん、もう少し待って。真雪はきっと戻ってくるはずだから」
ホール係の女子が提案だったが、文香はそれを待ってもらった。
だが、喫茶店内に人が多くなってきてるので、場所をとっているセットが邪魔になっているのはたしかだった。
「真雪、早く戻って来て。あなたがやりたかったのは、こんなことじゃないはずよ」
文香の小さな独り言。
すると、それをどこかで聞いていたかのように、いきなりゴブが文香の前に現れた。
「真雪さんはまだ帰ってこないの? 自分でやると言っておきながら、まったくしょうがない子ね」
ゴブはあきれたような感じで言った。
「ゴブ、あなた厨房で料理係じゃなかった?」
「いまは休憩中よ。それよりも、オンエア席が空席になっててお困りのようね。真雪さんが戻ってくるまで、私が代わりにオンエアをやっておきましょうか?」
意外な提案だった。
「ゴブ、いいの? あなた、真雪たちオンエア部のことをあまり良く思ってなかったんじゃ……」
「そうね。ちょっとした気まぐれかしら。それとも、真雪さんも短い間だったけど私たちと同じ放送部員だったから? 本当に不思議なのよね。私、今は真雪さんをちょっとだけ助けてあげたい気持ちになっているのよ」
「ゴブ……」
ゴブはちょっと赤くなって、恥ずかしがるように目をそらして言った。
真雪が放送部を辞めたあと、ゴブは真雪のことを心配してた。オンエア部を新しく作ったって聞いたときは、少し嬉しそうだったし。
仕方なくみたいに言ってるけど、本当は協力したかったのかも。
「どうするの? 早くしないと、私の気が変わって、オンエアをやりたくなくなっちゃうわよ?」
「うん、ありがとう。じゃあちょっとの間だけ、オンエアを頼んでいい? 私、急いで真雪を捜してくるから」
「オッケー、まかせてちょうだい。もし真雪さんが戻らなくても、私が最高のオンエアにしてあげるわ。さあ、放送部で鍛えた腕の見せ所よ!」
注目が集まる中、ゴブはオンエアセットに向かった。
「さ、みなさんご注目。放送部次期エース候補の五文太が、公開オンエアであなたのハートをがっちりキャッチしちゃうわよん」
ゴブの公開オンエアが始まった。
オネエ口調のオンエアは、珍しさもあってみんなに注目されてきているみたいだ。
「さすが放送部のエース候補!」
文香は同じ部のゴブの存在を頼もしく思った。
これでしばらくは時間が稼げそうね。
真雪、お願いだから早く戻って来て!
そのころ真雪たちは、オンエア部の五人そろって2階の空き教室にいた。
なぜそんな場所にいたのかというと、
「……本当にこれで教室まで行くの?」
真雪だけ、大きな雪だるまの着ぐるみを着ている。
ここは演劇部が小道具の物置に使っているところで、雪だるまの着ぐるみを借りにきたところだった。
「謎の雪だるまが現れて、いきなりオンエア開始する。私と日菜が隠れて考えてた今日のオンエアプランよ」
「めいちゃんの言うとおりにょす。ゆきちゃん、日菜たちの思いを乗せて、いざ教室へ!」
「本当に大丈夫なのかな……」
真雪は少し不安になってきた。