第26話 真雪と明夏の放課後ティータイム

文字数 1,413文字

 次の日の放課後。
 真雪は明夏に誘われて、下校途中にある商店街に寄り道していた。

「いやいや~、真雪とこういう所で、ティータイムを過ごすのって久しぶりだねぇ。あ~、紅茶がおいしい」
「そだね~。この季節はちょっと暑いし、虫とか飛んでくるかもしれないけど~」

 商店街のすぐ近く。
 二人は噴水がある公園のベンチに座って、商店街のスーパーで買ったペットボトルの紅茶を楽しんでいた。
 ちなみに、奮発してファーストフードに入ったときは、安いドリンクを頼んで店内で2時間以上は粘るという荒技もできる。

 節約女子高生の鑑と言える二人だが、今日は少し様子が違っていた。
 いつもとは違う、大切な話をするためにやってきたのだ。

「……真雪。こうして公園で話すのって久しぶりだね」
「うん。この前来たときは、まだ部活に入る前だったかな」

 ……。

 しばらくの沈黙のあと、明夏が話を切り出した。

「ねえ、真雪はどうする? オンエア部はあきらめて、一緒に他の部活を探してみる?」
「私は……」

 どうしたいのかな……。

 オンエア部を続けたいといっても、学食がなくなってしまったら、もう活動ができなくなってしまう。

「……」

 真雪は言葉が出ずに黙っていた。
 明夏はベンチに座ったまま、のけぞるようにして天を仰ぐ。

「ま、やっぱり簡単に答えは出せないかー。真雪がせっかく見つけた、やりたい部活だったもんね」
「……明夏ちゃんは、これからどうしようと思ってるの?」
「私? う~ん、やっぱりオンエア部が無くなるのはちょっと寂しいかな……。せっかく仲良くなりかけてた部員のみんなと別れるのもいやだし」
「私も同じ。オンエア部のおかげで、日菜ちゃんとよくお話するようになったし、樹々先輩とも知り合えたんだもん」
「だよね。何とかしてオンエア部を続ける方法があればいいんだけど」

 方法と言われても、簡単には思いつくものではなかった。

 学食の取り壊しによって部室が無くなってしまう。
 そして、唯一の活動だった学食オンエアも、これからできなくなってしまうのだから。

「……深く考えてもしょうがないか。さ、食べよ食べよ」
「何も食べもの持ってないよ」
「そう思って持ってきておいたのです。じゃーん」

 明夏が鞄から風呂敷包みを取り出して、それを開いた。

「自家製おまんじゅう~!」
「なんか渋い! だけど、すごくおいしそう!」
「五つあるから、二人で分けよう」
「明夏ちゃんが持ってきたものだから、明夏ちゃんがみっつで、私がふたつだね」
「なに遠慮してんのよ~、うりうり~。ひとつを半分こにすればいいじゃない。ほら」

 明夏はおまんじゅうのひとつを半分に分けた。

「はい、これ真雪の分。あとはふたつづつね」
「明夏ちゃん……ありがとう」

 真雪は明夏の友情に感動した。
 感動さめやらぬうちに、おまんじゅうを口にした。

「ゴフッ。……なにこれ、すごく固い」
「このおまんじゅうはね、痛みそうだから早く食べてって言われて持ってきたんだよ。けど、鞄に入れてること忘れちゃって。……だから、お腹壊しちゃったらごめんね。てへっ」
「それできっちり半分こに……」
「ジョニーと僕とで半分こだよ」
「ジョニーって誰よ」
「ジョニーデース」
「お前かよ!」
「ふふっ」
「ぷっ、あははっ」

 二人の笑いが公園に響いた。
 二人の友情が最高に盛り上がった瞬間だった。

 ……。

 ……そしてその後。

 同じおまんじゅうを食べたのに、なぜか真雪だけがお腹を壊してしまった。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

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