第91話 雪だるま部!
文字数 2,540文字
真雪たちはなんとか階段の前までやってきた。
「真雪ちゃん、ここから階段だから気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
西瓜は階段前まで案内して、明夏たちと一緒に先に階段をのぼっていく。
だが、なぜか真雪(雪だるま)だけはずっと階段の前で止まって動かなかった。
「真雪? どうしたのよ、そんなところでちまちま動いて。ガムでも踏んづけ?」
「違うよ! よくわかんないけど階段が上れないんだよ。なにかじゃましてるような感じがして……」
明夏が真雪の足下を見た。
雪だるまのまんまるな体が階段の段差にひっかかって、足がそこまで届いていない。
「しまった。この雪だるま、足が短すぎて階段を上れそうにないな」
「どうするなす? ゆきちゃんこのまま置いていくにゃす?」
「そんなのできるわけないでしょ。教室に行ったら、真雪がオンエアする予定なのよ」
「それもそうにゃりん。うむむ……迷っちゃうのです」
「二人とも。こういうときは、真雪ちゃんが上るのを助けること。私たちで雪だるまを抱えていけばいいんだよ」
西瓜が雪だるまの体をつかんだ。
「さ、二人とも、反対側を持って」
「げっ……まじすか? 真雪ってば重そうだから、持ち上げるのはきついかも」
「ひどーい! 私、そんなに重くないですー! ……たぶん」
明夏に言われたが、真雪もあまり自信がない。
最近よく食べるし、昨日もおやつに焼き芋を3つも食べてしまった。
「めいちゃん、とりあえずやってみるにゃふ。重すぎたらゆきちゃんに雪だるま脱いでもらうしかないにょろ」
三人は雪だるまを持った。そして、
「さ、いちにのさんで持ち上げるよ。……いちにの」
「さん!」
三人は力を込めて雪だるまを持ち上げた。
少しふらついてて、頼りない感じだ。
「どう? 重くない? 重くない?」
真雪は自分が重すぎないかすごく気になっている。
「だ、大丈夫……。ふんばれば……なんとかね」
「それじゃあ、一段ずつゆっくり上っていくよ」
雪だるまを抱えて、階段を一段ずつ上っていく。
重さと丸みがあって、思っていたよりも持ちにくかった。
「ふぬぬ~、根性だにょす~」
そしてなんとか、二階と三階の間の踊り場までやってきた。
「どうだった? 重くなかった?」
「あ、うん……。ちょっと休ませて……。腕が痛い」
「あ~、やっぱり重かったんだ~」
頭を抱えて落ち込む雪だるま。
と、そこへ、
「あっ、雪だるまが落ち込んでる! これはレアな状況だわ。みんな、集合!」
ぞろぞろと人が集まってくる。
今度は集団で雪だるまの写真を撮られてまくっていた。
「なんなのよ、この人たち。うちの学校の生徒みたいだけど」
「あちゃー。とんでもないのにつかまっちゃったね」
集団の姿を見て、西瓜が頭を押さえた。
「西瓜先輩、あの人たちは?」
「この学校の雪だるま部の人たちだよ。雪だるまを見つけたら、ああやって写真を撮りまくってるんだ。もちろん、部室は雪だるまグッズだらけになってる」
「いったいどんな活動をしてるのよ……」
明夏はあきれながら言った。
「あっ、この雪だるま足が生えてる!」
「どこどこ? むむっ、これは珍しい!」
「もしもし? こちらに足付き雪だるま発見。ただちに現場に集合せよ」
雪だるまへの関心は薄れるどころかますますヒートアップしていた。
しばらくするとさらに人が集まってきて、いつの間にか踊り場は人で埋め尽くされるような状態になっている。
「まだ人が来るの!? 西瓜先輩、雪だるま部って部員多すぎませんか?」
「掛け持ちOKでめったに活動がない部活だから、けっこう気軽に入部する人が多いんだよ。私もしつこく誘われてるからね」
「西瓜先輩、明夏ちゃん、日菜ちゃん、助けて~」
雪だるまはそのまま別の場所に連行されそうになった。
「先輩どうするにゃる? このままではゆきちゃんが教室にたどり着けなくなるぽぽ」
「……しょうがない。ここは私にまかせておいて」
西瓜はしばらく真雪の雪だるまを見ていた。
真雪ちゃん。
オンエア部の完全復活、あんたならきっとできるよ。
そのためにも、ここは私が……。
深呼吸をして落ち着いたあと、ずんずんと人混みの中に入っていく。
「あー、ちょっとごめんよ。どいてどいて」
西瓜はそのまま、集団にいる一人の女子生徒の前まで行った。
「よ、久しぶり」
「あなたは……メロンさん? やっぱりメロンさんだ!」
女子生徒の言葉に、真雪の周りにいた雪だるま部の人たちが一斉に振り向く。
雪だるま部の人たちは、今度はなぜか西瓜の周りを囲み始めた。
???
解放された真雪は、なんとか明夏のそばまでやってきた。
「あの、明夏ちゃん。これってどういうこと?」
「わかんない。でも、西瓜先輩がまかせておいてって」
雪だるま部の人たちに、西瓜はものすごく慕われているみたいな感じだった。
「あのさ、私、最近雪だるまに興味を持ち始めたんだよね。それで、部活やってみてもいいかなーとか」
「本当ですか! うれしい! メロンさんほどの、雪だるま力(ちから)の持ち主に入ってもらえたら、雪だるま部はものすごくパワーアップします!」
「すばらしい! ぜひとも入部を!」
「あ~。だからさ、ちょっと話でも聞いてみようかと思ってね」
「もちろんです! ささ、こちらのほうへ。我が部室に案内します」
雪だるま部のみんなは完全に西瓜に気をとられていた。
「……行っちゃった」
「雪だるま力(ちから)ってなんだぽす?」
「なんだろう……」
雪だるま部は、謎を残したままいなくなってしまった。
「……あっ、もしかして!」
「雪だるま力(ちから)のことがわかったの?」
「違う! 西瓜先輩のこと!」
続けて、明夏が自信ありげに言う。
「たぶん真雪がはやく教室に行けるように、あの人たちの気を引いてくれてたんだ」
「でも、西瓜先輩はどうするの?」
「そういえば、さっき西瓜先輩が言ってたにょる。あとから必ず行くから、先に行ってほしいって」
「やっぱり。真雪、先を急ごう。先輩たちの気持ちを無駄にしないためにも」
「う、うん……」
「そうと決まれば……日菜、準備はいい?」
「もちろんにゅる!」
明夏と日菜は二人で雪だるまを支えて、階段を上り始めた。
西瓜先輩がいない分、さっきよりも上るのがきつかった。
「真雪ちゃん、ここから階段だから気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
西瓜は階段前まで案内して、明夏たちと一緒に先に階段をのぼっていく。
だが、なぜか真雪(雪だるま)だけはずっと階段の前で止まって動かなかった。
「真雪? どうしたのよ、そんなところでちまちま動いて。ガムでも踏んづけ?」
「違うよ! よくわかんないけど階段が上れないんだよ。なにかじゃましてるような感じがして……」
明夏が真雪の足下を見た。
雪だるまのまんまるな体が階段の段差にひっかかって、足がそこまで届いていない。
「しまった。この雪だるま、足が短すぎて階段を上れそうにないな」
「どうするなす? ゆきちゃんこのまま置いていくにゃす?」
「そんなのできるわけないでしょ。教室に行ったら、真雪がオンエアする予定なのよ」
「それもそうにゃりん。うむむ……迷っちゃうのです」
「二人とも。こういうときは、真雪ちゃんが上るのを助けること。私たちで雪だるまを抱えていけばいいんだよ」
西瓜が雪だるまの体をつかんだ。
「さ、二人とも、反対側を持って」
「げっ……まじすか? 真雪ってば重そうだから、持ち上げるのはきついかも」
「ひどーい! 私、そんなに重くないですー! ……たぶん」
明夏に言われたが、真雪もあまり自信がない。
最近よく食べるし、昨日もおやつに焼き芋を3つも食べてしまった。
「めいちゃん、とりあえずやってみるにゃふ。重すぎたらゆきちゃんに雪だるま脱いでもらうしかないにょろ」
三人は雪だるまを持った。そして、
「さ、いちにのさんで持ち上げるよ。……いちにの」
「さん!」
三人は力を込めて雪だるまを持ち上げた。
少しふらついてて、頼りない感じだ。
「どう? 重くない? 重くない?」
真雪は自分が重すぎないかすごく気になっている。
「だ、大丈夫……。ふんばれば……なんとかね」
「それじゃあ、一段ずつゆっくり上っていくよ」
雪だるまを抱えて、階段を一段ずつ上っていく。
重さと丸みがあって、思っていたよりも持ちにくかった。
「ふぬぬ~、根性だにょす~」
そしてなんとか、二階と三階の間の踊り場までやってきた。
「どうだった? 重くなかった?」
「あ、うん……。ちょっと休ませて……。腕が痛い」
「あ~、やっぱり重かったんだ~」
頭を抱えて落ち込む雪だるま。
と、そこへ、
「あっ、雪だるまが落ち込んでる! これはレアな状況だわ。みんな、集合!」
ぞろぞろと人が集まってくる。
今度は集団で雪だるまの写真を撮られてまくっていた。
「なんなのよ、この人たち。うちの学校の生徒みたいだけど」
「あちゃー。とんでもないのにつかまっちゃったね」
集団の姿を見て、西瓜が頭を押さえた。
「西瓜先輩、あの人たちは?」
「この学校の雪だるま部の人たちだよ。雪だるまを見つけたら、ああやって写真を撮りまくってるんだ。もちろん、部室は雪だるまグッズだらけになってる」
「いったいどんな活動をしてるのよ……」
明夏はあきれながら言った。
「あっ、この雪だるま足が生えてる!」
「どこどこ? むむっ、これは珍しい!」
「もしもし? こちらに足付き雪だるま発見。ただちに現場に集合せよ」
雪だるまへの関心は薄れるどころかますますヒートアップしていた。
しばらくするとさらに人が集まってきて、いつの間にか踊り場は人で埋め尽くされるような状態になっている。
「まだ人が来るの!? 西瓜先輩、雪だるま部って部員多すぎませんか?」
「掛け持ちOKでめったに活動がない部活だから、けっこう気軽に入部する人が多いんだよ。私もしつこく誘われてるからね」
「西瓜先輩、明夏ちゃん、日菜ちゃん、助けて~」
雪だるまはそのまま別の場所に連行されそうになった。
「先輩どうするにゃる? このままではゆきちゃんが教室にたどり着けなくなるぽぽ」
「……しょうがない。ここは私にまかせておいて」
西瓜はしばらく真雪の雪だるまを見ていた。
真雪ちゃん。
オンエア部の完全復活、あんたならきっとできるよ。
そのためにも、ここは私が……。
深呼吸をして落ち着いたあと、ずんずんと人混みの中に入っていく。
「あー、ちょっとごめんよ。どいてどいて」
西瓜はそのまま、集団にいる一人の女子生徒の前まで行った。
「よ、久しぶり」
「あなたは……メロンさん? やっぱりメロンさんだ!」
女子生徒の言葉に、真雪の周りにいた雪だるま部の人たちが一斉に振り向く。
雪だるま部の人たちは、今度はなぜか西瓜の周りを囲み始めた。
???
解放された真雪は、なんとか明夏のそばまでやってきた。
「あの、明夏ちゃん。これってどういうこと?」
「わかんない。でも、西瓜先輩がまかせておいてって」
雪だるま部の人たちに、西瓜はものすごく慕われているみたいな感じだった。
「あのさ、私、最近雪だるまに興味を持ち始めたんだよね。それで、部活やってみてもいいかなーとか」
「本当ですか! うれしい! メロンさんほどの、雪だるま力(ちから)の持ち主に入ってもらえたら、雪だるま部はものすごくパワーアップします!」
「すばらしい! ぜひとも入部を!」
「あ~。だからさ、ちょっと話でも聞いてみようかと思ってね」
「もちろんです! ささ、こちらのほうへ。我が部室に案内します」
雪だるま部のみんなは完全に西瓜に気をとられていた。
「……行っちゃった」
「雪だるま力(ちから)ってなんだぽす?」
「なんだろう……」
雪だるま部は、謎を残したままいなくなってしまった。
「……あっ、もしかして!」
「雪だるま力(ちから)のことがわかったの?」
「違う! 西瓜先輩のこと!」
続けて、明夏が自信ありげに言う。
「たぶん真雪がはやく教室に行けるように、あの人たちの気を引いてくれてたんだ」
「でも、西瓜先輩はどうするの?」
「そういえば、さっき西瓜先輩が言ってたにょる。あとから必ず行くから、先に行ってほしいって」
「やっぱり。真雪、先を急ごう。先輩たちの気持ちを無駄にしないためにも」
「う、うん……」
「そうと決まれば……日菜、準備はいい?」
「もちろんにゅる!」
明夏と日菜は二人で雪だるまを支えて、階段を上り始めた。
西瓜先輩がいない分、さっきよりも上るのがきつかった。