第58話 もうすぐ公開オンエア?
文字数 1,682文字
樹々先輩の勉強部屋を部室にして、活動を再開してから二週間。
公開オンエアの練習は、毎日のように繰り返された。
最初は緊張して全くできなかった真雪も、度重なる練習のおかげでどんどん上達していった。
今日も先輩の勉強部屋での練習中。
ちょうど真雪が、みんなの前で公開オンエアの練習しているところだった。
「……というわけで、この学校にもたくさんの伝統と風習がありました。みなさんもぜひ、学校について調べてみてくださいね。それでは、また会いましょう。ばいばーい」
真雪は手を振ってから、そっと台本を閉じた。
見ていた部員たちからは、自然と歓声と拍手がわき起こる。
真雪は頭をかいて照れていた。
「よくここまで成長したわね、真雪さん。これだったら、学食で公開オンエアをしても大丈夫よ」
「ゆきちゃんすごいのす。最初は緊張して言葉も出なかったのに、別人のようなす」
「真雪すごーい。女子アナみたい」
「えへへ、そんなぁ。みんなほめすぎだよぉ」
真雪はにやにやしながら言った。
「この調子なら問題ないわね。学校に申請も出してるし、もうすぐ公開オンエアもできるようになるはずよ。そうなったら、最初は真雪さんにやってもらおうかしら」
樹々は言った。
「え、私が?」
真雪の顔が少し緊張でこわばる。
「大丈夫よ。この二週間でいちばん練習したのは真雪さんだから。私の厳しい目で見ても、さっきのはちゃんとオンエアできてたわ」
「ゆきちゃんが最初ですか!? これは素晴らしいにょす!」
「あ~、ちょっと緊張してきた……」
明夏が真雪の肩をぽんとたたく。
「大丈夫だって。私が近くで見守っててあげるから」
「……明夏ちゃん……ありがとう」
真雪は部活を始めてから、こんなに大役を任されたことがなかった。
緊張と同時に、ちょっぴりの嬉しさもあった。
次の日の昼休み。
樹々は生徒会室に呼び出されていた。
おそらく先日提出しておいた、仮の学食での公開オンエアの申請の結果についてだろう。
思ったよりも早かったわね。
これで、オンエア部も活動が再開できそうだわ。
教室から足早に歩いて、あっという間に生徒会室にやってきた。
「失礼します」
樹々が生徒会室に入ると、そこには生徒会長が一人で待っていた。
「オンエア部の樹々さんですね?」
「あ、はい。そうです」
「どうぞこちらへ」
樹々は生徒会長の向かいの椅子に座った。
それから、生徒会長は書類を長机の上に出した。
「以前提出されていた、学食での公開オンエアの件ですが」
生徒会長は黙って頭を下げる。
「昼食中の学食の使用は、許可できません」
「そんな、どうして」
「……知ってのとおり、新しくできた仮の学食は敷地が狭いので、毎日多くの生徒でいっぱいになっています。そんなところで、まともに公開オンエアができると思いますか?」
「そ、それは……」
そこまでは気が付いてなかった。
「でも、人の少ない入り口付近とかにすれば、できるのではないでしょうか」
樹々が言うと、
「理由はそれだけではありません。以前の学食で、あなたたちのオンエアを聴いていた生徒はいたのでしょうか? 大部分の生徒は、オンエア部の存在自体を知らないという事実もあります」
「……」
「人気があるオンエアなら少しは考える余地があったのですが……誰にも望まれていないことを、無理にする必要がありますか?」
「それがないと私たちは部活ができなくなってしまうんです。今日まで公開オンエアのために練習もしてきました。私たちにチャンスをください」
「……それはあなた方の自己満足でしょう? 視聴者あってのオンエア。誰も見てない聴いていないじゃ意味がないんですよ」
「……」
厳しい意見だったが、正論でもあった。
今まででも、あまりオンエアを聴いてくれる人はいなかった。
「それに、オンエア部が今後どういう扱いになるのか、すでに決まっています」
「私は何も聞かされていないんですが……」
「昨日の生徒会会議で決定したことです。オンエア部は」
樹々は黙って話を聞いていた。
生徒会長は、何のためらいもなく言い放つ。
「放送部と合併することが決定しました」
公開オンエアの練習は、毎日のように繰り返された。
最初は緊張して全くできなかった真雪も、度重なる練習のおかげでどんどん上達していった。
今日も先輩の勉強部屋での練習中。
ちょうど真雪が、みんなの前で公開オンエアの練習しているところだった。
「……というわけで、この学校にもたくさんの伝統と風習がありました。みなさんもぜひ、学校について調べてみてくださいね。それでは、また会いましょう。ばいばーい」
真雪は手を振ってから、そっと台本を閉じた。
見ていた部員たちからは、自然と歓声と拍手がわき起こる。
真雪は頭をかいて照れていた。
「よくここまで成長したわね、真雪さん。これだったら、学食で公開オンエアをしても大丈夫よ」
「ゆきちゃんすごいのす。最初は緊張して言葉も出なかったのに、別人のようなす」
「真雪すごーい。女子アナみたい」
「えへへ、そんなぁ。みんなほめすぎだよぉ」
真雪はにやにやしながら言った。
「この調子なら問題ないわね。学校に申請も出してるし、もうすぐ公開オンエアもできるようになるはずよ。そうなったら、最初は真雪さんにやってもらおうかしら」
樹々は言った。
「え、私が?」
真雪の顔が少し緊張でこわばる。
「大丈夫よ。この二週間でいちばん練習したのは真雪さんだから。私の厳しい目で見ても、さっきのはちゃんとオンエアできてたわ」
「ゆきちゃんが最初ですか!? これは素晴らしいにょす!」
「あ~、ちょっと緊張してきた……」
明夏が真雪の肩をぽんとたたく。
「大丈夫だって。私が近くで見守っててあげるから」
「……明夏ちゃん……ありがとう」
真雪は部活を始めてから、こんなに大役を任されたことがなかった。
緊張と同時に、ちょっぴりの嬉しさもあった。
次の日の昼休み。
樹々は生徒会室に呼び出されていた。
おそらく先日提出しておいた、仮の学食での公開オンエアの申請の結果についてだろう。
思ったよりも早かったわね。
これで、オンエア部も活動が再開できそうだわ。
教室から足早に歩いて、あっという間に生徒会室にやってきた。
「失礼します」
樹々が生徒会室に入ると、そこには生徒会長が一人で待っていた。
「オンエア部の樹々さんですね?」
「あ、はい。そうです」
「どうぞこちらへ」
樹々は生徒会長の向かいの椅子に座った。
それから、生徒会長は書類を長机の上に出した。
「以前提出されていた、学食での公開オンエアの件ですが」
生徒会長は黙って頭を下げる。
「昼食中の学食の使用は、許可できません」
「そんな、どうして」
「……知ってのとおり、新しくできた仮の学食は敷地が狭いので、毎日多くの生徒でいっぱいになっています。そんなところで、まともに公開オンエアができると思いますか?」
「そ、それは……」
そこまでは気が付いてなかった。
「でも、人の少ない入り口付近とかにすれば、できるのではないでしょうか」
樹々が言うと、
「理由はそれだけではありません。以前の学食で、あなたたちのオンエアを聴いていた生徒はいたのでしょうか? 大部分の生徒は、オンエア部の存在自体を知らないという事実もあります」
「……」
「人気があるオンエアなら少しは考える余地があったのですが……誰にも望まれていないことを、無理にする必要がありますか?」
「それがないと私たちは部活ができなくなってしまうんです。今日まで公開オンエアのために練習もしてきました。私たちにチャンスをください」
「……それはあなた方の自己満足でしょう? 視聴者あってのオンエア。誰も見てない聴いていないじゃ意味がないんですよ」
「……」
厳しい意見だったが、正論でもあった。
今まででも、あまりオンエアを聴いてくれる人はいなかった。
「それに、オンエア部が今後どういう扱いになるのか、すでに決まっています」
「私は何も聞かされていないんですが……」
「昨日の生徒会会議で決定したことです。オンエア部は」
樹々は黙って話を聞いていた。
生徒会長は、何のためらいもなく言い放つ。
「放送部と合併することが決定しました」