第38話 2 下の階へ行く

文字数 1,048文字

 2 下の階に行く

 真雪は一つ下の階にやってきた。
 三階、二年生の教室がずらりと並んでいる。

 二年生といえば……樹々先輩、まだ教室にいるかな?
 もしいたら、部室になりそうなところがあるか聞いてみよう。

 真雪は樹々先輩のいる教室に向かっていった。
 だが三階の廊下は少し様子が変だった。

 いくら放課後とはいえ、廊下には、真雪以外は誰もいない。
 休日の学校のように、しんと静まりかえっていた。

 真雪が不思議に思っていると、先のほうからどどどどっと足音が聞こえてきた。

「うおおおっ、どけどけどけー!」

 二人の男子生徒が、全力疾走で廊下を走ってきた。
 真雪はあわてて、通路の隅のほうによける。

「負けるかぁぁぁぁ」

 どどどどどどっ。

 二人の男子生徒は、真雪の前をあっという間に通り過ぎてしまった。

「なんなのあれ……。ちょっとこわい」
「あれは廊下を走る部よ」
「わあっ! 誰?」

 分厚いノートを持った女子生徒が、いつの間にか真雪の横に立っていた。
 女子生徒はノートのページをぺらぺらとめくって、真雪にとあるページを見せてきた。

「廊下を走る部……廊下を走ったら先生に怒られる。この部活は、先生に怒られたあと、どれだけ逃げきれるかを研究する。最近では、昼休みに学食一番乗りを目指す生徒もぞくぞく入部している……って、これはいったいなんですか?」
「私の部活動研究ノートよ。そして私は、この学校にたくさんある部活動を研究する、部活動研究部の、通称部活子よ!」
「え~っと……部活動研究をしてる部活動研究部の部活動子さん?」
「惜しい! 名前は部活動子じゃなくて、部活子よ!」

 どうでもいい情報だった。

 と、ここで真雪が気になることを質問してみた。

「あの……じゃあオンエア部のことを知っていますか?」
「なにその部活! この学校にそんな部活があったの!? まだまだ私の知らないことがたくさん……あなた、詳しいことを聞かせてちょうだい!」

 部活子は真雪にずいずいと迫ってくる。
 真雪は気持ち、あとずさった。

「いや、あの……私、急いでいるんで失礼します!」

 真雪は走ってその場を切り抜けようとした。
 すると、

「あ、ちょっとあなた。いま走ったら」
「うおおおー。どけどけー!」
「わぁぁぁ!」

 真雪は、間一髪のところを横にそれる。
 危うく引き返してきた廊下を走る部の人とぶつかりそうになった。

「この階は危険な部活がいっぱいいるよ……。樹々先輩に会いに行くのは、また今度にしよう」

 真雪は階段を上って、一年生の教室がある階へと戻っていった。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

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