第29話 レトロゲーム部を探して
文字数 1,711文字
学食棟が閉鎖されて一週間が経過した。
オンエア部の活動は全くなくなってしまい、部員たちはそれぞれ自分の好きなように行動していた。
放課後になって、クラスメイトたちがそれぞれの部活に行っている時間。
真雪は何もすることがなく、教室の机にうつ伏せになっていた。
ときおり頭を動かして、髪の毛で書道をしているような見た目になっている。
「これからどうしよう……。何もすることがないよ」
部活に入る前までは普通に帰っていた時間なのに、今では、そのまま家に帰るのはなんだか物足りない時間になっていた。
「そういえば、明夏ちゃんは放課後どこに行ってるのかな……。最近いつもすぐに教室からいなくなるけど」
放課後の教室には、明夏の姿はなかった。
以前はもう家に帰っていたのかと思っていたが、最近、明夏の机に鞄が置きっぱなしであることに気がついた。
「鞄があるから、まだ学校にいるんだよね……。どこに行ってるのか気になる」
真雪は椅子から立ち上がって、教室の外へ出た。
廊下を歩きながら、明夏の行きそうな場所を考える。
「明夏ちゃんの行きそうな場所……。行きそうな場所は~……やっぱり、あそこかな?」
真雪の頭にある部活動が思い浮かんだ。
明夏が以前入部しようとしたレトロゲーム部。
オンエア部に入る前はよく遊びに行っていたらしいので、明夏はそこにいるかもしれない。
「レトロゲーム部かぁ。ゲームをしてる部活ってことしかわからないけど……とにかく行ってみよう」
真雪はレトロゲーム部の部室まで行ってみることにした。
だが、数歩だけ歩いたところで、ある問題が真雪の頭をよぎった。
「レトロゲーム部って、どこで活動してるんだろう……」
部室がどこにあるのか、聞いたことがなかった。
この学校には数多くの謎部活があるのだが、部室の場所は想像とは全く違う場所にあることが多い。
たとえば、家庭科部の部室が、書道準備室にあるという感じだ。
どうしよう……。
だれか部室を知ってそうな人に聞いてみようかな。
でも、聞くのはちょっと恥ずかしい。
真雪がどうしようか迷っていると、
「レトロゲーム最高だよな。今のゲームにはない硬派な感じがたまらないっていうか」
「だよなー。俺たちは、生まれてくる時代を間違えたよ。当時の熱狂をリアルタイムで感じてみたかったぜ」
レトロゲームが好きそうな会話をした男子学生が二人、真雪の方に向かって歩いてきた。
あの人たちなら、絶対に場所を知ってそう。
緊張するけど……聞いてみようかな。
真雪は二人の前に立った。
話をしていた男子生徒たちは、目の前にいる真雪のことに気がついて会話を中断した。
「あの、その。……あのね? レトロゲーム部の部室、どこにあるか知らない?」
真雪が聞くと、二人は驚いた表情でお互いの顔を見合わせた。
「い、いや。知らないけど」
「俺も。そんな部活あることも知らない」
「そ、そうなんだ。……あの、ありがとう」
真雪は二人にお礼を言って、その横をすり抜けていく。
残された二人はしばらくその場にとどまっていた。
「お、おい。俺たち女の子から話しかけられちゃったぜ!」
男子生徒の一人が、ちょっと興奮気味に話した。
「しかも、ちょっとかわいい子じゃなかった? 恥じらいを感じながら話してる姿とか」
もう一人も、気持ちの高ぶりを抑えられない。
「……中学高校と、周りからキモいとかずっと言われ続けてたけど……ついに、ついに俺たちも女の子と会話が! うおおお~!」
「まじで嬉しい! うけええええ!」
二人の男子学生は、全力で廊下を駆けていく。
誰もいない砂浜を、もてない男子二人が全力疾走している情景が浮かんでくる。
「どうする? 俺たちの高校生活はここから始まる気がする」
「もちろん、今からレトロゲーム部に入部だ! 探しに行こうぜ!」
「もしかしたら、さっきの子もいるかもしれないよな」
「おっと、……それは言わない約束だぜ。俺たちは硬派なレトロゲーマー。女の子とお話することが目的ではないよ」
「さすが相棒。俺としたことが、危うく道を踏み外してしまうところだったぜ!」
彼らの青春はここから新たな展開に向かっていく……と信じたい。
オンエア部の活動は全くなくなってしまい、部員たちはそれぞれ自分の好きなように行動していた。
放課後になって、クラスメイトたちがそれぞれの部活に行っている時間。
真雪は何もすることがなく、教室の机にうつ伏せになっていた。
ときおり頭を動かして、髪の毛で書道をしているような見た目になっている。
「これからどうしよう……。何もすることがないよ」
部活に入る前までは普通に帰っていた時間なのに、今では、そのまま家に帰るのはなんだか物足りない時間になっていた。
「そういえば、明夏ちゃんは放課後どこに行ってるのかな……。最近いつもすぐに教室からいなくなるけど」
放課後の教室には、明夏の姿はなかった。
以前はもう家に帰っていたのかと思っていたが、最近、明夏の机に鞄が置きっぱなしであることに気がついた。
「鞄があるから、まだ学校にいるんだよね……。どこに行ってるのか気になる」
真雪は椅子から立ち上がって、教室の外へ出た。
廊下を歩きながら、明夏の行きそうな場所を考える。
「明夏ちゃんの行きそうな場所……。行きそうな場所は~……やっぱり、あそこかな?」
真雪の頭にある部活動が思い浮かんだ。
明夏が以前入部しようとしたレトロゲーム部。
オンエア部に入る前はよく遊びに行っていたらしいので、明夏はそこにいるかもしれない。
「レトロゲーム部かぁ。ゲームをしてる部活ってことしかわからないけど……とにかく行ってみよう」
真雪はレトロゲーム部の部室まで行ってみることにした。
だが、数歩だけ歩いたところで、ある問題が真雪の頭をよぎった。
「レトロゲーム部って、どこで活動してるんだろう……」
部室がどこにあるのか、聞いたことがなかった。
この学校には数多くの謎部活があるのだが、部室の場所は想像とは全く違う場所にあることが多い。
たとえば、家庭科部の部室が、書道準備室にあるという感じだ。
どうしよう……。
だれか部室を知ってそうな人に聞いてみようかな。
でも、聞くのはちょっと恥ずかしい。
真雪がどうしようか迷っていると、
「レトロゲーム最高だよな。今のゲームにはない硬派な感じがたまらないっていうか」
「だよなー。俺たちは、生まれてくる時代を間違えたよ。当時の熱狂をリアルタイムで感じてみたかったぜ」
レトロゲームが好きそうな会話をした男子学生が二人、真雪の方に向かって歩いてきた。
あの人たちなら、絶対に場所を知ってそう。
緊張するけど……聞いてみようかな。
真雪は二人の前に立った。
話をしていた男子生徒たちは、目の前にいる真雪のことに気がついて会話を中断した。
「あの、その。……あのね? レトロゲーム部の部室、どこにあるか知らない?」
真雪が聞くと、二人は驚いた表情でお互いの顔を見合わせた。
「い、いや。知らないけど」
「俺も。そんな部活あることも知らない」
「そ、そうなんだ。……あの、ありがとう」
真雪は二人にお礼を言って、その横をすり抜けていく。
残された二人はしばらくその場にとどまっていた。
「お、おい。俺たち女の子から話しかけられちゃったぜ!」
男子生徒の一人が、ちょっと興奮気味に話した。
「しかも、ちょっとかわいい子じゃなかった? 恥じらいを感じながら話してる姿とか」
もう一人も、気持ちの高ぶりを抑えられない。
「……中学高校と、周りからキモいとかずっと言われ続けてたけど……ついに、ついに俺たちも女の子と会話が! うおおお~!」
「まじで嬉しい! うけええええ!」
二人の男子学生は、全力で廊下を駆けていく。
誰もいない砂浜を、もてない男子二人が全力疾走している情景が浮かんでくる。
「どうする? 俺たちの高校生活はここから始まる気がする」
「もちろん、今からレトロゲーム部に入部だ! 探しに行こうぜ!」
「もしかしたら、さっきの子もいるかもしれないよな」
「おっと、……それは言わない約束だぜ。俺たちは硬派なレトロゲーマー。女の子とお話することが目的ではないよ」
「さすが相棒。俺としたことが、危うく道を踏み外してしまうところだったぜ!」
彼らの青春はここから新たな展開に向かっていく……と信じたい。