第93話 踊り場の関所
文字数 2,279文字
真雪と明夏は階段で通行人に助けてもらいながら、なんとか三階と四階の間にある踊り場までやってきた。
派手な服装の男女が数人いて、どうやらこの踊り場でも文化祭の出し物が行われているらしい。
だが、ここはちょっと異様な雰囲気があった。
通行人で真雪たち以外、ここを通ろうとする人が誰もいなかった。
先を急ごうとすると、
「おおっと、ここは通れないぜ」
赤いキャップ帽子に赤ジャンパー、デニムのジーンズをはいた男が、二人の前に立ちふさがった。
「通してよ。私たち急いでるんだから」
「ここは我が校の三大珍部活である関所(せきしょ)部が出し物をしている場所。俺たちと勝負をして、勝てたらここを通してやる」
「そんな暇はないの。ここは通してもらうわよ」
「まあ、とにかくこれを見てもらおう」
ぱちん。
男が指を鳴らすと、横を通ろうとする二人の前に、布のかけられた大きな壁が置かれた。
明夏の驚いた表情を見て、男はにやりと笑みを浮かべる。
「……どういうつもり?」
「だからさっきも言っただろう。我々と勝負してもらう」
うしろからやってきた黒子から、男はゲームのコントローラーを受け取った。男が壁にかかった布をとると、大きなテレビモニターが姿を現す。
「テレビゲームで勝負だ。俺に勝てばここを通してやる」
「明夏ちゃん……」
「ふふっ、私を誰だと思っているの?」
明夏が男からコントローラーをひとつ奪い取る。
「明夏殿は元レトロゲーム部のエースっす!」
「そうドド。お前なんかに勝てるはずないドド」
レトロゲーム部の部長と他一名が言った。
この人たち、いつの間にここに来たんだろう……。
真雪は本気で疑問に思った。
「真雪、ここは私にまかせて。こんな勝負すぐに終わらせてやるわよ」
「ふふふ、威勢だけはいいようだな。だが」
男が手を上にあげると、モニターに映像が映し出された。
ゲームの内容は、格闘ゲームのようだ。
「さあ勝負だ!」
関所部の男の一言でゲームが始まった。
ゲームは三本勝負。先に二本取ったほうが勝利となる。
「うおおおおお!」
男のキャラが前にジャンプした。
空中から明夏のキャラを攻撃しようという構えだ。
明夏はガードしたが、男はまたジャンプして上から攻撃してきた。
「ワンパターンすぎる! 同じ攻撃を何度しても無駄よ!」
その一瞬の隙を見逃さなかった明夏は、対空必殺技からの連続攻撃を決めた。
そして、
KO!
「よし、まず一本!」
「やったあ、明夏ちゃんすごい!」
「ぐぐっ、このゲームは特訓を重ねて自信あったんだが……」
「明夏殿がお主などに負けるわけないっす」
「そうでドド。明夏さんは天才ドド」
「なかなか強いな。だが、ここからが本番だ。さあ、第二ラウンドを始めようか。オッケイ!」
男は後ろを向いて、赤いキャップ帽子を空に向かって放り投げた。
男のキャラは相手に向かって飛びながらパンチを撃ってきた。意表をつかれた明夏は攻撃を受けてしまった。
「ちょっと、いつの間にかゲームのキャラも変わってるじゃないの! どうなってるの!?」
「この格闘ゲームは関所部が改造したものだ。途中でキャラ替えができるようプログラムされている」
「ぐっ、こんなキャラ見たことないから、攻撃パターンが読めない」
今度は明夏が押されていた。
明夏のキャラの体力ゲージがどんどん減っていく。
「どうした、もうギブアップかい?」
「……来るっ!」
明夏の反撃。
男が技を出して飛び込んできたところに、超ウルトラ技のコマンド(↓←↑→AB)を入力した。
どどどどっ!
明夏のキャラが放った超ウルトラ技で、男のキャラの体力ゲージはみるみる減っていく。
そして、
KO!
男のキャラがスローモーションで倒れる。
これにより、先に二本取った明夏の勝利が決まった。
「はぁ、なんとか勝てた……」
「やったあ! 明夏ちゃん強い!」
「明夏殿、やっぱりすごいっす!」
「さすがドド。しびれたドド」
明夏は男にコントローラーを返す。
「私の勝ちよ。約束通りここは通してもらうわ」
「ふふっ、そうはいかん。一回の勝負につき通れるのは一人だけ。二人通るならもう一度勝負をしてもらう」
「くっ、なんて卑怯な」
「次のゲームはこれだ!」
モニターに映し出されたのは、野球ゲーム。
しかも選手の名前もない、かなりレトロなやつだ。
「ちょっと、野球ゲームって終わるまで時間がかかるじゃないの。私たち急いでるから別のゲームにしてよ」
「それはできん。得意なゲームを選ぶのは、勝つための戦略でもある。俺はこのゲームは自信がある」
「真雪と一緒に教室に行くのは無理そうね……」
明夏が真雪に向き直る。
「真雪、先に行ってて。あなた一人だけなら、ここを通っても大丈夫なはずよ」
「明夏ちゃん、でも」
「こんなところで私を待ってたら、時間がどんどんなくなってしまうよ! だから先に」
「そうでドドよ。我々も階段上るのを手伝うドド」
「微力ながらも明夏殿に協力するっす」
レトロゲーム部員たちが言った。
「わかった。絶対に勝ってね!」
「当たり前よ。こんな奴らに負けるわけがないじゃない」
真雪はレトロゲーム部員たちに手伝ってもらいながら、階段を上り始めた。
その姿を、後ろから明夏は黙って見ていた。
昔は引っ込み思案だったけど、いつの間にかこんなに積極的になっちゃって。真雪、高校に入ってからとっても成長してるよ。
私も負けてられないな。
真雪、これからも一緒にオンエア部しようね。
「さあ、野球ゲームでもなんでもやってやるわよ!」
「ふっ、今度は負けん。勝負だ!」
踊り場で、再び明夏の戦いが始まった。
派手な服装の男女が数人いて、どうやらこの踊り場でも文化祭の出し物が行われているらしい。
だが、ここはちょっと異様な雰囲気があった。
通行人で真雪たち以外、ここを通ろうとする人が誰もいなかった。
先を急ごうとすると、
「おおっと、ここは通れないぜ」
赤いキャップ帽子に赤ジャンパー、デニムのジーンズをはいた男が、二人の前に立ちふさがった。
「通してよ。私たち急いでるんだから」
「ここは我が校の三大珍部活である関所(せきしょ)部が出し物をしている場所。俺たちと勝負をして、勝てたらここを通してやる」
「そんな暇はないの。ここは通してもらうわよ」
「まあ、とにかくこれを見てもらおう」
ぱちん。
男が指を鳴らすと、横を通ろうとする二人の前に、布のかけられた大きな壁が置かれた。
明夏の驚いた表情を見て、男はにやりと笑みを浮かべる。
「……どういうつもり?」
「だからさっきも言っただろう。我々と勝負してもらう」
うしろからやってきた黒子から、男はゲームのコントローラーを受け取った。男が壁にかかった布をとると、大きなテレビモニターが姿を現す。
「テレビゲームで勝負だ。俺に勝てばここを通してやる」
「明夏ちゃん……」
「ふふっ、私を誰だと思っているの?」
明夏が男からコントローラーをひとつ奪い取る。
「明夏殿は元レトロゲーム部のエースっす!」
「そうドド。お前なんかに勝てるはずないドド」
レトロゲーム部の部長と他一名が言った。
この人たち、いつの間にここに来たんだろう……。
真雪は本気で疑問に思った。
「真雪、ここは私にまかせて。こんな勝負すぐに終わらせてやるわよ」
「ふふふ、威勢だけはいいようだな。だが」
男が手を上にあげると、モニターに映像が映し出された。
ゲームの内容は、格闘ゲームのようだ。
「さあ勝負だ!」
関所部の男の一言でゲームが始まった。
ゲームは三本勝負。先に二本取ったほうが勝利となる。
「うおおおおお!」
男のキャラが前にジャンプした。
空中から明夏のキャラを攻撃しようという構えだ。
明夏はガードしたが、男はまたジャンプして上から攻撃してきた。
「ワンパターンすぎる! 同じ攻撃を何度しても無駄よ!」
その一瞬の隙を見逃さなかった明夏は、対空必殺技からの連続攻撃を決めた。
そして、
KO!
「よし、まず一本!」
「やったあ、明夏ちゃんすごい!」
「ぐぐっ、このゲームは特訓を重ねて自信あったんだが……」
「明夏殿がお主などに負けるわけないっす」
「そうでドド。明夏さんは天才ドド」
「なかなか強いな。だが、ここからが本番だ。さあ、第二ラウンドを始めようか。オッケイ!」
男は後ろを向いて、赤いキャップ帽子を空に向かって放り投げた。
男のキャラは相手に向かって飛びながらパンチを撃ってきた。意表をつかれた明夏は攻撃を受けてしまった。
「ちょっと、いつの間にかゲームのキャラも変わってるじゃないの! どうなってるの!?」
「この格闘ゲームは関所部が改造したものだ。途中でキャラ替えができるようプログラムされている」
「ぐっ、こんなキャラ見たことないから、攻撃パターンが読めない」
今度は明夏が押されていた。
明夏のキャラの体力ゲージがどんどん減っていく。
「どうした、もうギブアップかい?」
「……来るっ!」
明夏の反撃。
男が技を出して飛び込んできたところに、超ウルトラ技のコマンド(↓←↑→AB)を入力した。
どどどどっ!
明夏のキャラが放った超ウルトラ技で、男のキャラの体力ゲージはみるみる減っていく。
そして、
KO!
男のキャラがスローモーションで倒れる。
これにより、先に二本取った明夏の勝利が決まった。
「はぁ、なんとか勝てた……」
「やったあ! 明夏ちゃん強い!」
「明夏殿、やっぱりすごいっす!」
「さすがドド。しびれたドド」
明夏は男にコントローラーを返す。
「私の勝ちよ。約束通りここは通してもらうわ」
「ふふっ、そうはいかん。一回の勝負につき通れるのは一人だけ。二人通るならもう一度勝負をしてもらう」
「くっ、なんて卑怯な」
「次のゲームはこれだ!」
モニターに映し出されたのは、野球ゲーム。
しかも選手の名前もない、かなりレトロなやつだ。
「ちょっと、野球ゲームって終わるまで時間がかかるじゃないの。私たち急いでるから別のゲームにしてよ」
「それはできん。得意なゲームを選ぶのは、勝つための戦略でもある。俺はこのゲームは自信がある」
「真雪と一緒に教室に行くのは無理そうね……」
明夏が真雪に向き直る。
「真雪、先に行ってて。あなた一人だけなら、ここを通っても大丈夫なはずよ」
「明夏ちゃん、でも」
「こんなところで私を待ってたら、時間がどんどんなくなってしまうよ! だから先に」
「そうでドドよ。我々も階段上るのを手伝うドド」
「微力ながらも明夏殿に協力するっす」
レトロゲーム部員たちが言った。
「わかった。絶対に勝ってね!」
「当たり前よ。こんな奴らに負けるわけがないじゃない」
真雪はレトロゲーム部員たちに手伝ってもらいながら、階段を上り始めた。
その姿を、後ろから明夏は黙って見ていた。
昔は引っ込み思案だったけど、いつの間にかこんなに積極的になっちゃって。真雪、高校に入ってからとっても成長してるよ。
私も負けてられないな。
真雪、これからも一緒にオンエア部しようね。
「さあ、野球ゲームでもなんでもやってやるわよ!」
「ふっ、今度は負けん。勝負だ!」
踊り場で、再び明夏の戦いが始まった。