第84話 認められないオンエア部

文字数 1,522文字

 それから、オンエア部はいろいろな場所で活動をした。
 昼休みにグラウンドを使ってパン食い競争、放課後に男子生徒が告白をするお手伝い、園芸部の育てている野菜の収穫のお手伝い、ゲリラ的なイベント開催など、他にもいろいろなことをした。

 それにより、オンエア部は学校でも名前が知れ渡るようになってきた。
 ほとんどの生徒からは受け入れられていたが、一部生徒と教員からは、あまり印象はよくなかった。


「……というように、最近のオンエア部の活動は、いろいろと放っておけないところがあります。生徒会としても、何かしら対策をしておいたほうがいいのではないでしょうか」

 生徒会の会議。
 風紀委員の男子の発言から始まった。

「図書室で受験勉強中の三年生から、オンエア部がうるさいというクレームも出てたわね。他にも、彼女らの活動に迷惑をしている生徒はいるようです」

 図書委員の女子が続けていった。
 その意見に、生徒会長が口を開く。

「わかりました。オンエア部は廃部になっているのに、いまだに活動を続けているのがそもそもの問題です。先生方にも相談して、しかるべき措置をとっていきましょう」

 生徒会長の眼鏡がきらりと光った。
 ここから、オンエア部は厳しい現実を迎えることとなった。


 オンエア部の活動を辞めることを命じる。
 従わない場合は、停学、もしくは退学処分とする。

 次の日、オンエア部の五人が生徒指導室に呼ばれて、この文章が書かれた書類を渡された。

「お前たちも馬鹿じゃないと思うから、この命令は守って欲しい。そうしないと、俺もお前たちのことをかばいきれない。本当に停学か退学になってしまうぞ」

 オンエア部の元顧問の先生から、話を聞いた。

 オンエア部の活動を辞めること。
 部として認められていない以上は、学校としても、いまの活動を認めるわけにはいかないこと。
 自分たちの行動を反省し、今後はきちんとした学校生活を送ること。

 真雪たち五人はしっかりと説明を受けた後にようやく解放された。


 どうしよう……。
 私がオンエア部をやろうって言ったから、こんなに迷惑をかけてる。
 私、みんなになんて言えばいいのかわからないよ……。

 真雪がなにも言えずにいると、

「あの言い方、私はちょっと横暴すぎると思うね」
「……そうね。さすがにこのやり方は納得できないわね」

 西瓜と樹々は、学校側のやり方に少し怒っていた。
 明夏と日菜は何も言わなかった。
 もしかしたら、真雪と同じで少し心に迷いが出ているのかもしれない。

「……真雪はどう思う? これからも続ける?」
「私は……」

 もし自分のせいでみんなが退学になってしまったら……。
 そう考えてしまうと、続けたいとははっきりと言えなかった。

「私は続けるよ」

 明夏が言った。
 その言葉を聞いた真雪は、瞬時に、

「でも、もし明夏ちゃんが退学になったら」
「大丈夫でしよ」

 日菜が言った。

「オンエア部はもう昔のオンエア部とは違うでし!」
「そうよ」

 樹々先輩が相づちを打った。

「私たちはもう、学食で誰も聴いていないオンエアをしていた頃とは違うわ。オンエア部の存在も知ってもらえてきてるし、みんなが楽しめるオンエアを作っている。いまはまだ部として認められていないけど、きっと、わかってもらえるはず」
「樹々先輩……」
「おばあちゃんに聞いたらさ、昔のオンエア部もいまの私たちと同じで、最初は学校に認められていなかったんだって」
「そうだよ真雪ちゃん。私たちも認めてもらえるまで、他の手段でやってみようじゃない」

 西瓜先輩もやる気になっていた。

「みんな……ありがとう」

 自然にありがとうという言葉が出てきた。
 みんなのおかげで、真雪もオンエア部の活動を続けていく気持ちになった。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

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