第41話 生徒会長との話
文字数 1,502文字
真雪と明夏は、生徒会室の前までやってきた。
場所は一階。
正面玄関のすぐ前にある、事務室の隣。
普段生徒が近寄らないような場所で、中には入りづらい雰囲気がある。
「め、明夏ちゃん。やっぱりやめない? ここは私たちには場違いすぎるよ」
「なに言ってんの。せっかく新しい部室が使えるかどうかってところまできたんだから。ほら、行くよ」
真雪は明夏の後ろをついていくように、生徒会室に入った。
中にいたのは、出っ歯で眼鏡という風貌の生徒会長が一人だけ。
山積みにされた書類に一枚ずつサインをしていた。
「あの、お話あるんですけど」
明夏が話しかけると、生徒会長は面倒くさそうに顔を上げた。
「で、話とはいったいなんですか?」
「はい。じつは」
明夏は今のオンエア部の事情を説明して、四階の空き教室を使えるようにお願いした。
すると、
「残念ですが、それはできないです」
なんの抑揚のない、機械のような話し方。
まるで興味がないといった感じの返事だった。
「なんで? どこの部も使ってない空き教室だよ? 他の部に迷惑をかける訳じゃないし、使ってもいいじゃない」
生徒会長の態度に少しむかっとした明夏は、感情的になって生徒会長に問いつめる。
だが、生徒会長は少しも動じずに相変わらず冷静だった。
指で眼鏡のずれを直しながら、明夏に言った。
「あのですね……、オンエア部は放送をオンエアをする部です。空き教室を使っても、放送機材がないんだから何も活動ができないでしょう?」
「新しい学食ができるまでの間、ネタ作りとかに使いたいんです。放送機材がなくても、それくらいできます」
「だめですね。それでは活動しているとは言えないです。オンエア部としての正式な活動ができない限り、空き教室を使うことは認められません。もうすでに、オンエア部の活動はやめてもらうということが決定しています」
「じゃあ、これから考え直してくれませんか?」
「これは私一人の意見ではありません。生徒会全体での決定事項です」
「そんな……」
「……行こう、明夏ちゃん」
真雪が明夏の服の袖を引いた。
これ以上話をしても、何も変わらないことは明白だった。
「それと、せっかく来たついでに話しておきますが」
生徒会長が部屋を出ようとした二人を止めた。
「先生方の話では、新しい学食棟に放送室は必要ないという話も出ていたそうですよ。学校の中に二つ放送室があっても、無駄ですからね」
「じゃあこれからオンエア部はどうすればいいのよ!」
「明夏ちゃん」
真雪が明夏の言葉を止めた。
「行こう? ここで文句を言っても、何も変わらないよ」
「……」
結局、何の進展もないまま、二人は生徒会室を去った。
帰る途中、明夏は気持ちが収まらない様子で、ずっといらいらしていた。
「私、やっぱり納得できない! 樹々先輩のところに行って話をしてくる!」
いったん教室に戻って、帰る準備をしていたときに、明夏は言った。
「明夏ちゃん、ちょっと待ってよ」
「いやだ! 真雪はここで待ってて。私、今から二年生の教室に行って来るから。すぐ戻ってくる」
「あっ、明夏ちゃん!」
明夏は鞄を置いたまま、走って教室を出ていった。
そして……。
「うおおおお、どけどけー! ぶふぉっ!!」
「大変だ! 四階の廊下に遠征していた『廊下を走る部』の連中が、当たり負けして吹っ飛ばされたぞ!」
「すげえ……相手は誰だよ」
「一年の女子だ! すごい勢いで駆け抜けていったぞ!」
廊下から大きな声が聞こえてきた。
真雪にとっては、なんとなく聞き覚えのある部活だった。
「明夏ちゃん、大丈夫なのかな……」
真雪は心配そうに、明夏が出ていった廊下のほうを見ていた。
場所は一階。
正面玄関のすぐ前にある、事務室の隣。
普段生徒が近寄らないような場所で、中には入りづらい雰囲気がある。
「め、明夏ちゃん。やっぱりやめない? ここは私たちには場違いすぎるよ」
「なに言ってんの。せっかく新しい部室が使えるかどうかってところまできたんだから。ほら、行くよ」
真雪は明夏の後ろをついていくように、生徒会室に入った。
中にいたのは、出っ歯で眼鏡という風貌の生徒会長が一人だけ。
山積みにされた書類に一枚ずつサインをしていた。
「あの、お話あるんですけど」
明夏が話しかけると、生徒会長は面倒くさそうに顔を上げた。
「で、話とはいったいなんですか?」
「はい。じつは」
明夏は今のオンエア部の事情を説明して、四階の空き教室を使えるようにお願いした。
すると、
「残念ですが、それはできないです」
なんの抑揚のない、機械のような話し方。
まるで興味がないといった感じの返事だった。
「なんで? どこの部も使ってない空き教室だよ? 他の部に迷惑をかける訳じゃないし、使ってもいいじゃない」
生徒会長の態度に少しむかっとした明夏は、感情的になって生徒会長に問いつめる。
だが、生徒会長は少しも動じずに相変わらず冷静だった。
指で眼鏡のずれを直しながら、明夏に言った。
「あのですね……、オンエア部は放送をオンエアをする部です。空き教室を使っても、放送機材がないんだから何も活動ができないでしょう?」
「新しい学食ができるまでの間、ネタ作りとかに使いたいんです。放送機材がなくても、それくらいできます」
「だめですね。それでは活動しているとは言えないです。オンエア部としての正式な活動ができない限り、空き教室を使うことは認められません。もうすでに、オンエア部の活動はやめてもらうということが決定しています」
「じゃあ、これから考え直してくれませんか?」
「これは私一人の意見ではありません。生徒会全体での決定事項です」
「そんな……」
「……行こう、明夏ちゃん」
真雪が明夏の服の袖を引いた。
これ以上話をしても、何も変わらないことは明白だった。
「それと、せっかく来たついでに話しておきますが」
生徒会長が部屋を出ようとした二人を止めた。
「先生方の話では、新しい学食棟に放送室は必要ないという話も出ていたそうですよ。学校の中に二つ放送室があっても、無駄ですからね」
「じゃあこれからオンエア部はどうすればいいのよ!」
「明夏ちゃん」
真雪が明夏の言葉を止めた。
「行こう? ここで文句を言っても、何も変わらないよ」
「……」
結局、何の進展もないまま、二人は生徒会室を去った。
帰る途中、明夏は気持ちが収まらない様子で、ずっといらいらしていた。
「私、やっぱり納得できない! 樹々先輩のところに行って話をしてくる!」
いったん教室に戻って、帰る準備をしていたときに、明夏は言った。
「明夏ちゃん、ちょっと待ってよ」
「いやだ! 真雪はここで待ってて。私、今から二年生の教室に行って来るから。すぐ戻ってくる」
「あっ、明夏ちゃん!」
明夏は鞄を置いたまま、走って教室を出ていった。
そして……。
「うおおおお、どけどけー! ぶふぉっ!!」
「大変だ! 四階の廊下に遠征していた『廊下を走る部』の連中が、当たり負けして吹っ飛ばされたぞ!」
「すげえ……相手は誰だよ」
「一年の女子だ! すごい勢いで駆け抜けていったぞ!」
廊下から大きな声が聞こえてきた。
真雪にとっては、なんとなく聞き覚えのある部活だった。
「明夏ちゃん、大丈夫なのかな……」
真雪は心配そうに、明夏が出ていった廊下のほうを見ていた。