第21話 一週間のはじまり
文字数 1,481文字
月曜日の朝。
オンエア部部長の樹々は、誰よりも早く学校に登校した。
今日の昼に放送する内容をチェックしたかったので、朝から部室に籠って作業をしていたのだった。
そのとき、オンエア部顧問の先生に、校内放送で呼び出された。
朝から呼び出されるなんて、今までなかったのに。
私には何も心当たりないけど。
もしかして、部員の誰かが何かやらかしたのかしら。
個性的な部員たちの顔を思い浮かべて、少し頭が痛くなった。
「失礼します」
職員室に入ると、多くの先生たちがもう学校に来ていた。
職員室の中を見渡した樹々は、顧問の先生の姿を見つけて、歩いて向かっていく。
顧問の先生は、コピー機の前で授業で使うプリントを印刷しているところだった。
「先生」
樹々が話しかけた。
先生は樹々の声に振り向く。
「おお、来たか。朝早くからすまんな。えっと……オンエア部のことなんだが。……ちょっと大変なことになってな」
先生は自分の机まで戻る。
樹々は先生の後をついていった。
椅子に座った先生は、いつもとは違った感じで明るさがない。
その様子に、樹々は少し不安を感じた。
「あの、先生?」
樹々が聞くと、
「……ああ、すまない。これは本当に言いづらいことなんだが」
その後、先生はしばらく黙っていた。
いったい何を言われるんだろう。
いろいろと想像して覚悟はしているが、それでも何を言われるのか少し怖かった。
それから、先生は樹々の顔をしっかりと見て、ゆっくりと話し始めた。
「実はな、学食棟が今週いっぱいで閉鎖することが決まったんだ。だから、学食棟にあるうちの部活も、それに伴い活動ができなくなるんだ」
「え」
全く想像ができてなかった話だった。
樹々は改めて聞き直す。
「うそ……ですよね。学食棟は夏休みまでは開ける。閉鎖しないって言ってたのに……」
「新しい学食棟の完成を、来年の始業式に間に合わせると決まったんだ。それにはもう少し早くから工事を始めないと間に合わないらしい」
「でもそんな、急に言われても……」
いつも冷静な樹々は、めずらしく動揺していた。
先生は申し訳なさそうしながらも、話を続ける。
「うちの学校が近年、人気がなくなってることは知ってるだろう? それを何とか挽回しようとして、新しいおしゃれな学食棟を来年の新入生たちへの目玉にしたいらしいんだ」
「じゃあ、オンエア部の……活動はどうなるんですか?」
おそるおそる樹々が聞くと、
「活動は今週いっぱいまでで終わらせるように言われたんだ。その後の活動ができない部活は休部もしくは廃部扱いになるらしい」
「じゃあオンエア部の活動は、今週いっぱいでできなくなるんですか?」
「……すまん。先生の力では、どうすることもできなかった」
先生は樹々に深々と頭を下げた。
樹々の頭の中は、一瞬真っ白になった。
これからどうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
頭の中に浮かんだのはその言葉だけ。
先生は今後のことを話し続けたが、樹々の耳に話は入ってこなかった。
「……失礼しました」
樹々は職員室から出た。
この結果を素直に受け入れることはできなかった。
部活のほうも、夏休みまでの計画をちゃんと立てて、その後も存続のためになにをするべきかを考えていた。
でも、それももう無理。
先生方が頼み込んでもだめだったこと。
今更自分が動いたってどうにかなることではないとわかっている。
「……部員のみんなになんて言おう」
樹々はこれからどうしたらいいのか、わからなくなっていた。
そのまま重い足取りで、部室へは戻らずに、自分の教室へと帰っていった。
オンエア部部長の樹々は、誰よりも早く学校に登校した。
今日の昼に放送する内容をチェックしたかったので、朝から部室に籠って作業をしていたのだった。
そのとき、オンエア部顧問の先生に、校内放送で呼び出された。
朝から呼び出されるなんて、今までなかったのに。
私には何も心当たりないけど。
もしかして、部員の誰かが何かやらかしたのかしら。
個性的な部員たちの顔を思い浮かべて、少し頭が痛くなった。
「失礼します」
職員室に入ると、多くの先生たちがもう学校に来ていた。
職員室の中を見渡した樹々は、顧問の先生の姿を見つけて、歩いて向かっていく。
顧問の先生は、コピー機の前で授業で使うプリントを印刷しているところだった。
「先生」
樹々が話しかけた。
先生は樹々の声に振り向く。
「おお、来たか。朝早くからすまんな。えっと……オンエア部のことなんだが。……ちょっと大変なことになってな」
先生は自分の机まで戻る。
樹々は先生の後をついていった。
椅子に座った先生は、いつもとは違った感じで明るさがない。
その様子に、樹々は少し不安を感じた。
「あの、先生?」
樹々が聞くと、
「……ああ、すまない。これは本当に言いづらいことなんだが」
その後、先生はしばらく黙っていた。
いったい何を言われるんだろう。
いろいろと想像して覚悟はしているが、それでも何を言われるのか少し怖かった。
それから、先生は樹々の顔をしっかりと見て、ゆっくりと話し始めた。
「実はな、学食棟が今週いっぱいで閉鎖することが決まったんだ。だから、学食棟にあるうちの部活も、それに伴い活動ができなくなるんだ」
「え」
全く想像ができてなかった話だった。
樹々は改めて聞き直す。
「うそ……ですよね。学食棟は夏休みまでは開ける。閉鎖しないって言ってたのに……」
「新しい学食棟の完成を、来年の始業式に間に合わせると決まったんだ。それにはもう少し早くから工事を始めないと間に合わないらしい」
「でもそんな、急に言われても……」
いつも冷静な樹々は、めずらしく動揺していた。
先生は申し訳なさそうしながらも、話を続ける。
「うちの学校が近年、人気がなくなってることは知ってるだろう? それを何とか挽回しようとして、新しいおしゃれな学食棟を来年の新入生たちへの目玉にしたいらしいんだ」
「じゃあ、オンエア部の……活動はどうなるんですか?」
おそるおそる樹々が聞くと、
「活動は今週いっぱいまでで終わらせるように言われたんだ。その後の活動ができない部活は休部もしくは廃部扱いになるらしい」
「じゃあオンエア部の活動は、今週いっぱいでできなくなるんですか?」
「……すまん。先生の力では、どうすることもできなかった」
先生は樹々に深々と頭を下げた。
樹々の頭の中は、一瞬真っ白になった。
これからどうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
頭の中に浮かんだのはその言葉だけ。
先生は今後のことを話し続けたが、樹々の耳に話は入ってこなかった。
「……失礼しました」
樹々は職員室から出た。
この結果を素直に受け入れることはできなかった。
部活のほうも、夏休みまでの計画をちゃんと立てて、その後も存続のためになにをするべきかを考えていた。
でも、それももう無理。
先生方が頼み込んでもだめだったこと。
今更自分が動いたってどうにかなることではないとわかっている。
「……部員のみんなになんて言おう」
樹々はこれからどうしたらいいのか、わからなくなっていた。
そのまま重い足取りで、部室へは戻らずに、自分の教室へと帰っていった。