第33話 レトロゲーム部の場所

文字数 1,096文字

「明夏ちゃんって子、私も探してあげようか? ちょうどすることなくて暇だったんだ」
「本当ですか? でも、さっきはどんな子かわからないって」
「写真とか見ればわかると思うけど。私って、けっこう人の顔を覚えてるタイプだから、どこかですれ違っていたら覚えてるかもしれない」
「写真……あ、携帯に明夏ちゃんの写ったのがあります」

 真雪はポケットからピンク色の携帯をとりだす。
 いつのように慣れた手つきで、パカッと開けて画面を見た。

「あ、ガラケーだ。すごいね。真雪ちゃん、周りに流されないで我が道を行くタイプ?」
「そんなことはないんですけど、いろいろわけあってガラケーなんです。……あ、ありました。これが明夏ちゃんです」

 真雪は、携帯の画面をメロン先輩に見せた。
 両手でピースをした上半身の写真で、これがいちばん顔がわかりやすかった。

「あー、この子が明夏ちゃんか。最近いろんなところでよく見かける子だ。ついさっきも見たよ?」
「本当ですか!? いったいどこで」

 真雪は興奮気味に前のめりになった。
 メロン先輩は、真雪を抑えながら言う。

「最後に見たのは宿直室かな」
「宿直室? ……あ、先生が、学校に泊まるための部屋のことだ! ……でも、なんでそこに明夏ちゃんが……」
「よくわからないけど、そこで数人の男子とテレビゲームしてたよ。ついさっき見たから間違いないよ」
「それです! それがレトロゲーム部! 宿直室で活動してたんだ」
「へえー、あれってレトロゲーム部だったんだ」

 メロン先輩は感心している。
 真雪は明夏の居場所がわかると、いてもたってもいられなくなった。

「私、明夏ちゃんに話があるんで、いまから宿直室に行ってみます」
「行ってきなよ。私が見てからそんなに時間は経ってないから、まだいると思うよ」
「メロン先輩、ありがとうございます!」

 真雪は立ち上がって、屋上の扉から出て行った。
 残ったメロン先輩は、不思議そうな顔でその様子を見ていた。

「天然でドジっ子。おどおどしてると思ったら急に活発になったりして、見ていて飽きない……か。やっぱりちょっと変わった子。樹々の話、本当だったんだ」

 メロン先輩は、両手を上にあげて、おもいきり背中を伸ばした。

「う~ん。さて、私もそろそろどこかにいこうかね」

 屋上から出ようとすると、下から走って階段を上ってくる足音が聞こえた。
 しばらく待っていると、途中で階段を踏み外して転びそうになりながら、真雪が走って屋上まで戻ってきた。

「メロン先輩、宿直室ってどこにあるんですか!?
「真雪ちゃん……。やっぱり樹々の話は本当みたいだね」

 天然でドジっ子。
 メロン先輩は、改めてそう思った。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

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