第11話 放課後の廊下は危険がいっぱい
文字数 1,544文字
「日菜ちゃん、ちょっとまってよー」
真雪は走って日菜を追いかけた。
だが、日菜にはその声が聞こえていないのか、後ろを振り向くこともないまま階段まで走っていった。
真雪も懸命に追いかけたが、先を行く日菜は、あっという間に見えなくなってしまった。
「どうしよう。私の鞄を間違えて持っていったことに気がついてない。それに、日菜ちゃん走るの速すぎだよ」
真雪は、息を切らして途中で止まった。
走るときついので、自分のペースで歩いていくことにした。
オンエア部に行くって言ってたよね。
ということは、学食のほうに行ったのかな。
しばらく歩いていくと、一階の職員室の前で日菜の後ろ姿が見えてきた。
日菜ちゃん?
こんなところで何を……。
「あれほど廊下を走るなと言っただろう。今月はもう23回目だぞ」
「うう~、ごめんなちゃい」
どうやら先生から怒られているようだった。
走って追いかけなくて正解だったかも。
もし走ってたら私も一緒に怒られてたよ。
とりあえず、先生のお説教が終わるまでここで待ってよう。
真雪は窓から外の様子を眺めた。
「おおーい、ゴール運ぶぞー。早く来いよー」
「はいみんな並んでー。外回りのランニング行くよー」
グラウンドではいろいろな運動部が練習を開始していた。
放課後にみんなと一緒に何かをする。
私、運動苦手だから文化系のほうがいいけど、こういうのやってみたいなぁ。
部活といえば、休憩時間にみんなでおしゃべりとか楽しそうだなあ。
そう、お菓子とか持ち寄ってお話するの。
お茶会みたいな感じで憧れる~。
あ、今日は夕方から再放送の部活動青春ドラマがあったんだっけ。
磯崎さん、部活選びで悩んでたみたいだけど、いったいどうなっちゃうんだろう。
前の話は、磯崎さんがけん玉部の部長さんから、けん玉勝負を挑まれたところで終わったんだよ。
……うーん、続きが気になる。
何気なくテレビをつけると、たまたまやっていたドラマ。
それ以来、真雪はこのドラマをよく見るようになった。
自分と同じような境遇の主人公が、どういう方向に進んで行くのかがすごく気になっていたのかもしれない。
しばらくして、
「おいっす、恥ずかしいところを見られてしまいましたなぁ。おほほ」
日菜のほうから、真雪の前に来て言った。
先生はもう職員室に戻ったらしい。
「日菜ちゃん。鞄、間違えて私のを持っていってたよ?」
「ごめんなちゃい。じつはわざとです。日菜と一緒にオンエア部に来てほしかったのです」
「でも私、どの部活に入部するか迷ってて……」
そう言って、真雪は日菜から鞄を受け取る。
「ごめんね。私、今日は帰る。ちょっと見たいテレビがあるんだ」
「あ、ちょっとまってっす」
「止めないで。今日の夕方からある再放送のドラマ『磯崎さんの部活動』は絶対に見たいの!」
「そっちは行き止まりだにょ」
「ぶはっ!」
前をよく見ていなかった真雪は、思いっきり壁におでこをぶつけた。
「いった~い。たんこぶできたかも」
「ゆきちゃん大丈夫かの? 保健室行こうなり」
保健室――。
「はい、これでおしまい。歩くときはちゃんと前を見て歩きましょうね」
「先生、これ目立ってちょっと恥ずかしいんですけど」
おでこに目立つばってんじるしのテープ。
大きめのガーゼをつけた真雪が言った。
「かわいいかわいい。プチ怪我女子高生とか流行るかもよ?」
保健の先生は、真雪のおでこを見てくすくすと笑っている。
「おおっ、ブームの先駆けを行くとはさすがは真雪氏。ファンの期待を裏切りませんなあ」
「……うれしくない」
結局この日は、二人ともオンエア部に行けなかった。
ついでに言うと、保健室での時間が長引いたせいで、真雪は「磯崎さんの部活動」の放送までに家に帰ることができなかった。
真雪は走って日菜を追いかけた。
だが、日菜にはその声が聞こえていないのか、後ろを振り向くこともないまま階段まで走っていった。
真雪も懸命に追いかけたが、先を行く日菜は、あっという間に見えなくなってしまった。
「どうしよう。私の鞄を間違えて持っていったことに気がついてない。それに、日菜ちゃん走るの速すぎだよ」
真雪は、息を切らして途中で止まった。
走るときついので、自分のペースで歩いていくことにした。
オンエア部に行くって言ってたよね。
ということは、学食のほうに行ったのかな。
しばらく歩いていくと、一階の職員室の前で日菜の後ろ姿が見えてきた。
日菜ちゃん?
こんなところで何を……。
「あれほど廊下を走るなと言っただろう。今月はもう23回目だぞ」
「うう~、ごめんなちゃい」
どうやら先生から怒られているようだった。
走って追いかけなくて正解だったかも。
もし走ってたら私も一緒に怒られてたよ。
とりあえず、先生のお説教が終わるまでここで待ってよう。
真雪は窓から外の様子を眺めた。
「おおーい、ゴール運ぶぞー。早く来いよー」
「はいみんな並んでー。外回りのランニング行くよー」
グラウンドではいろいろな運動部が練習を開始していた。
放課後にみんなと一緒に何かをする。
私、運動苦手だから文化系のほうがいいけど、こういうのやってみたいなぁ。
部活といえば、休憩時間にみんなでおしゃべりとか楽しそうだなあ。
そう、お菓子とか持ち寄ってお話するの。
お茶会みたいな感じで憧れる~。
あ、今日は夕方から再放送の部活動青春ドラマがあったんだっけ。
磯崎さん、部活選びで悩んでたみたいだけど、いったいどうなっちゃうんだろう。
前の話は、磯崎さんがけん玉部の部長さんから、けん玉勝負を挑まれたところで終わったんだよ。
……うーん、続きが気になる。
何気なくテレビをつけると、たまたまやっていたドラマ。
それ以来、真雪はこのドラマをよく見るようになった。
自分と同じような境遇の主人公が、どういう方向に進んで行くのかがすごく気になっていたのかもしれない。
しばらくして、
「おいっす、恥ずかしいところを見られてしまいましたなぁ。おほほ」
日菜のほうから、真雪の前に来て言った。
先生はもう職員室に戻ったらしい。
「日菜ちゃん。鞄、間違えて私のを持っていってたよ?」
「ごめんなちゃい。じつはわざとです。日菜と一緒にオンエア部に来てほしかったのです」
「でも私、どの部活に入部するか迷ってて……」
そう言って、真雪は日菜から鞄を受け取る。
「ごめんね。私、今日は帰る。ちょっと見たいテレビがあるんだ」
「あ、ちょっとまってっす」
「止めないで。今日の夕方からある再放送のドラマ『磯崎さんの部活動』は絶対に見たいの!」
「そっちは行き止まりだにょ」
「ぶはっ!」
前をよく見ていなかった真雪は、思いっきり壁におでこをぶつけた。
「いった~い。たんこぶできたかも」
「ゆきちゃん大丈夫かの? 保健室行こうなり」
保健室――。
「はい、これでおしまい。歩くときはちゃんと前を見て歩きましょうね」
「先生、これ目立ってちょっと恥ずかしいんですけど」
おでこに目立つばってんじるしのテープ。
大きめのガーゼをつけた真雪が言った。
「かわいいかわいい。プチ怪我女子高生とか流行るかもよ?」
保健の先生は、真雪のおでこを見てくすくすと笑っている。
「おおっ、ブームの先駆けを行くとはさすがは真雪氏。ファンの期待を裏切りませんなあ」
「……うれしくない」
結局この日は、二人ともオンエア部に行けなかった。
ついでに言うと、保健室での時間が長引いたせいで、真雪は「磯崎さんの部活動」の放送までに家に帰ることができなかった。