第14話 みんなでオンエア部へ
文字数 2,252文字
不思議な夢をみた、その日の放課後。
真雪はこれからオンエア部に行こうと決心した。
いろいろ迷ったけど、やっぱりオンエア部に入る!
真雪は帰る準備をしながら、一人でうんうんとうなずいていた。
と、そこへ、
「真雪~。一緒に帰ろ」
明夏がやってきた。
さっきまで黒板に自分で作ったオリジナル怪獣の落書きをしていたが、飽きてきたらしい。
「明夏ちゃん、ちょうどよかったよ。今日は一緒にオンエア部について来てほしいんだけど、いいかな」
「私? ついていくくらいなら別にいいけど」
「ううん。一緒にオンエア部に入部してほしいの。昨日、未来の私から教えてもらったんだよ。私と明夏ちゃんが一緒にオンエア部に入ったら、私たちは楽しい学園生活を送れるって」
「おおっと、なんだか神のお告げ的な話だ……。そっか、やっぱり真雪はオンエア部か~」
明夏はしばらく考えて、
「うん、入部してもいいよ。特に部活のことを決めてなかったから、どの部活でもよかったし」
「本当に? 思い切ってかなりの無茶なお願いを言ったつもりだったんだけど」
「いつも消極的な真雪がこんなにやる気になってるんだもん。こんなことめったにないから、他の部に一人で入るよりも面白そうだし」
「明夏ちゃん……ありがとう」
真雪は明夏の友情にちょっぴり感動した。
明夏の手を握って、感謝のまなざして見つめる。
「ま、本命だったレトロゲーム部のゲーム機を壊して怒られたから、入部しづらくなっただけなんだけどね」
「……私の感動を返して」
真雪と明夏はオンエア部に行く準備を始めた。
「そういえば、日菜を連れて行かなくていいの? ものすごくオンエア部に入りたがってたじゃない」
「そうだった……日菜ちゃんのこと忘れてた」
「もう帰ったのかな。教室にはいないみたいだけど」
明夏が人がまばらになった教室内を見渡して言った。
「日菜ちゃん、いちばんオンエア部に入りたがっていたのに」
真雪が話をしていると、後ろの扉から日菜が泣きそうな顔で教室に入ってきた。
「うう~、今日こそはオンエア部に行こうと思っていたのに、今日も無理なのかじょ~」
「日菜ちゃん、どうしたの」
「ゆきちゃん! 聞いてほしいのですおよよ。じつは(略)というわけなのですよ」
「前振りなしでいきなり(略)じゃ何のことだかわからないから」
「それもそうだお。じつはですね、この間の美術の課題を出してなかったから、早く出しなさいって先生に怒られたのですよ。えっへん」
「課題って、そんなのあったっけ」
側で見ていた明夏が会話に加わってきた。
「植物の絵を描く課題なのす」
「あー、あの課題ね。真雪の絵が魔界の針葉樹に見えたやつ」
「明夏ちゃん、私の絵をそんなふうに見てたんだ……」
「ま、とりあえず早く終わらせて、さっさとオンエア部に行くわよ。せっかくなよなよ真雪がやる気になってるんだから」
「ほへ? ゆきちゃん、オンエア部に行く気になったのですか?」
「う、うん。いろいろあってね」
「そりゃあたいへんどす。日菜もこの課題を早く終わらせて、一緒にオンエア部に行きたいにゃり」
日菜は二人に見守られながら、急いで課題の絵を描いた。
なんとか先生に合格をもらって、三人は一緒にオンエア部の部室までやってきた。
「二回目だけど、なんだか緊張するよね」
「わ、私ははじめてなんだからもっと緊張してるよ」
「ふふふ、二人とも初々しいですな。日菜なんてもう三回目なのですよ。それでも、慣れないものですなあ」
オンエア部の部室の前で、三人は固まっていた。
「どうする? 誰が言うの」
「ここは真雪に言ってほしいな。今日いちばん気合い入ってるから」
「めいちゃん、それは名案だすな。日菜もゆきちゃんにやってもらいたいと思ってたのだすよ」
「わ、私?」
「ほら、早く」
「あ、うん」
真雪がオンエア部のドアをノックする。
しばらくするとドアが開いて、オンエア部の部長、樹々が出てきた。
「あら? あなたたちはこの間の……」
「あ、あのっ、あのっ」
真雪は、次の言葉が出ずに、頭の中が真っ白になった。
どうしよう。言おうとしたことが何も思い浮かばない。
このままじゃ、いままでと同じ。また失敗しちゃう。
真雪が顔を下げてしばらく黙っていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
(もう、ここまできて何やってるのよ。早く言えばいいのに)
(やっぱり、真雪は真雪だな~。昔っから優柔不断なところは変わらないよね)
(明夏ちゃん、ひどーい)
この声は昨日ラジオで聴いた、3年生になった私と明夏ちゃんの声。
他の人には聞こえていないみたい。
(いい? うまく言おうとするんじゃなくて、今の気持ちをそのまま言えばいいだけだよ)
(そうそう。難しく考えすぎだよ)
今の気持ち……。
今の私の気持ちは……。
……。
…………。
……ありがとう、未来の私と明夏ちゃん。
そうだよね、私の気持ちはもう決まってるんだよ。
部活動をやってみたい。
オンエア部に入りたい。
うつむいていた真雪が顔を上げた。
「私たち、オンエア部に入部したいです!」
隣にある学食にまで聞こえそうな、大きな声を出した。
真雪の元気のいい声に、樹々はやさしく微笑んだ。
「ようこそ、オンエア部へ。あなたたちを歓迎するわ」
真雪、明夏、日菜の三人は、お互いの顔を見合わせた。
誰からともなく、笑顔になっていく。
「やった! 私たち、これからオンエア部だ!」
いろいろあって、ようやく決まった部活動。
三人は抱き合うようにして体を寄せて、みんなで喜んでいた。
真雪はこれからオンエア部に行こうと決心した。
いろいろ迷ったけど、やっぱりオンエア部に入る!
真雪は帰る準備をしながら、一人でうんうんとうなずいていた。
と、そこへ、
「真雪~。一緒に帰ろ」
明夏がやってきた。
さっきまで黒板に自分で作ったオリジナル怪獣の落書きをしていたが、飽きてきたらしい。
「明夏ちゃん、ちょうどよかったよ。今日は一緒にオンエア部について来てほしいんだけど、いいかな」
「私? ついていくくらいなら別にいいけど」
「ううん。一緒にオンエア部に入部してほしいの。昨日、未来の私から教えてもらったんだよ。私と明夏ちゃんが一緒にオンエア部に入ったら、私たちは楽しい学園生活を送れるって」
「おおっと、なんだか神のお告げ的な話だ……。そっか、やっぱり真雪はオンエア部か~」
明夏はしばらく考えて、
「うん、入部してもいいよ。特に部活のことを決めてなかったから、どの部活でもよかったし」
「本当に? 思い切ってかなりの無茶なお願いを言ったつもりだったんだけど」
「いつも消極的な真雪がこんなにやる気になってるんだもん。こんなことめったにないから、他の部に一人で入るよりも面白そうだし」
「明夏ちゃん……ありがとう」
真雪は明夏の友情にちょっぴり感動した。
明夏の手を握って、感謝のまなざして見つめる。
「ま、本命だったレトロゲーム部のゲーム機を壊して怒られたから、入部しづらくなっただけなんだけどね」
「……私の感動を返して」
真雪と明夏はオンエア部に行く準備を始めた。
「そういえば、日菜を連れて行かなくていいの? ものすごくオンエア部に入りたがってたじゃない」
「そうだった……日菜ちゃんのこと忘れてた」
「もう帰ったのかな。教室にはいないみたいだけど」
明夏が人がまばらになった教室内を見渡して言った。
「日菜ちゃん、いちばんオンエア部に入りたがっていたのに」
真雪が話をしていると、後ろの扉から日菜が泣きそうな顔で教室に入ってきた。
「うう~、今日こそはオンエア部に行こうと思っていたのに、今日も無理なのかじょ~」
「日菜ちゃん、どうしたの」
「ゆきちゃん! 聞いてほしいのですおよよ。じつは(略)というわけなのですよ」
「前振りなしでいきなり(略)じゃ何のことだかわからないから」
「それもそうだお。じつはですね、この間の美術の課題を出してなかったから、早く出しなさいって先生に怒られたのですよ。えっへん」
「課題って、そんなのあったっけ」
側で見ていた明夏が会話に加わってきた。
「植物の絵を描く課題なのす」
「あー、あの課題ね。真雪の絵が魔界の針葉樹に見えたやつ」
「明夏ちゃん、私の絵をそんなふうに見てたんだ……」
「ま、とりあえず早く終わらせて、さっさとオンエア部に行くわよ。せっかくなよなよ真雪がやる気になってるんだから」
「ほへ? ゆきちゃん、オンエア部に行く気になったのですか?」
「う、うん。いろいろあってね」
「そりゃあたいへんどす。日菜もこの課題を早く終わらせて、一緒にオンエア部に行きたいにゃり」
日菜は二人に見守られながら、急いで課題の絵を描いた。
なんとか先生に合格をもらって、三人は一緒にオンエア部の部室までやってきた。
「二回目だけど、なんだか緊張するよね」
「わ、私ははじめてなんだからもっと緊張してるよ」
「ふふふ、二人とも初々しいですな。日菜なんてもう三回目なのですよ。それでも、慣れないものですなあ」
オンエア部の部室の前で、三人は固まっていた。
「どうする? 誰が言うの」
「ここは真雪に言ってほしいな。今日いちばん気合い入ってるから」
「めいちゃん、それは名案だすな。日菜もゆきちゃんにやってもらいたいと思ってたのだすよ」
「わ、私?」
「ほら、早く」
「あ、うん」
真雪がオンエア部のドアをノックする。
しばらくするとドアが開いて、オンエア部の部長、樹々が出てきた。
「あら? あなたたちはこの間の……」
「あ、あのっ、あのっ」
真雪は、次の言葉が出ずに、頭の中が真っ白になった。
どうしよう。言おうとしたことが何も思い浮かばない。
このままじゃ、いままでと同じ。また失敗しちゃう。
真雪が顔を下げてしばらく黙っていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
(もう、ここまできて何やってるのよ。早く言えばいいのに)
(やっぱり、真雪は真雪だな~。昔っから優柔不断なところは変わらないよね)
(明夏ちゃん、ひどーい)
この声は昨日ラジオで聴いた、3年生になった私と明夏ちゃんの声。
他の人には聞こえていないみたい。
(いい? うまく言おうとするんじゃなくて、今の気持ちをそのまま言えばいいだけだよ)
(そうそう。難しく考えすぎだよ)
今の気持ち……。
今の私の気持ちは……。
……。
…………。
……ありがとう、未来の私と明夏ちゃん。
そうだよね、私の気持ちはもう決まってるんだよ。
部活動をやってみたい。
オンエア部に入りたい。
うつむいていた真雪が顔を上げた。
「私たち、オンエア部に入部したいです!」
隣にある学食にまで聞こえそうな、大きな声を出した。
真雪の元気のいい声に、樹々はやさしく微笑んだ。
「ようこそ、オンエア部へ。あなたたちを歓迎するわ」
真雪、明夏、日菜の三人は、お互いの顔を見合わせた。
誰からともなく、笑顔になっていく。
「やった! 私たち、これからオンエア部だ!」
いろいろあって、ようやく決まった部活動。
三人は抱き合うようにして体を寄せて、みんなで喜んでいた。