第61話 やっぱり話せない!
文字数 1,469文字
真雪と明夏が先生にしかられている間、樹々は廊下で二人を待っていた。
職員室から出てくる二人を、逆に出迎える形となった。
「おかえりなさい。災難だったわね……」
「うう~、先輩の担任の先生って厳しいですね。ずっと怒られて頭がくらくらするよ」
「私もうだめかも……。あ、真雪と先輩の幻が見える~……」
「うちの担任は生活指導の先生だからね。生活態度には特に厳しいわよ。……ところで、私を待っててくれてたみたいけど、何か用事でもあったの?」
樹々は改めて二人に聞いた。
「そうだった。先輩に話があったのでした。……あの、先輩の勉強部屋で、一緒に勉強しませんか? 勉強でわからないところがあって、先輩に教えてほしいんです」
「勉強って、期末試験の勉強のこと? いいわよ」
明夏の質問に、樹々はあっさりと返事をした。
樹々にとっては、特に問題はないようだ。
「やった! 明夏ちゃん、部室で勉強ができるよ!」
真雪は明夏の手を取って、ぶんぶん振って喜んでいる。
「……言っておくけど、試験が終わるまで部活動はできないわよ? ちゃんと勉強して赤点はとらないようにしないと、部活どころじゃなくなるんだから」
「安心してください。中間テストではぎりぎりだったけど赤点はありませんでした! 真雪は1科目赤点があったけど」
「それでも、全科目の総合点では私の方が勝ってたんだからね」
「勝ってたって、たったの1点じゃん」
「1点でも勝ちなの!」
「……あなたたち、本当に仲がいいわね」
樹々はあきれた感じで言った。
と、そこへ、生徒会長が、樹々たちの横を通り過ぎていった。
樹々は今日の昼休み、生徒会室で言われたことを思い出す。
オンエア部は、放送部と合併することが決定しました。
「……」
「先輩? どうかしたんですか?」
「……ああ、なんでもないわ。さ、行きましょう。ちょうどあなたたちに話さないといけないこともあったから」
とりあえず、今は言わないでおこう。
話せる雰囲気になったら、そのときに言えばいい。
樹々はオンエア部がなくなることが、なかなか言い出せないでいた。
三人は樹々先輩の勉強部屋に行った。
それから数時間、みっちりと試験勉強をして、勉強がだめだった真雪も、先輩に教えてもらって少しはわかるようになってきた。
時間も遅くなったので、真雪と明夏が帰ろうとしたときには、辺りは暗くなりかけていた。
「先輩、今日はありがとうございました」
真雪が明るい声で言った。
ここは樹々の家の玄関先。
二人が帰るのを、樹々が玄関前まで見送りに来てくれていた。
「いや~、やっぱ先輩の勉強部屋はいいですね。勉強がすごくはかどるはかどる~。今度の期末では真雪に負ける気がしないよ」
「あら、私の教え方がよかったのかしら?」
「すごくわかりやすかったです。やっぱ先輩、頭いいんだな~って。ほら真雪、めずらしそうに家のインターホン見てないで帰るよ」
「うん。それじゃあ先輩、さようなら」
「先輩さよなら。今日はありがとうです」
「さようなら。帰り道、気をつけてね」
真雪と明夏は帰っていった。
一人になったあと、樹々は家の門に寄りかかり、ふっとため息を付いて空を見上げた。
「……結局、言えなかったな……」
勉強中、二人の楽しそうな表情を見ていると、オンエア部が放送部に吸収されることは言えなかった。
簡単に、言えるわけないじゃない。
私だって、ものすごくショックだったのに。
余計な心配はかけたくないし、せめて試験が終わってから。
それからみんなに言おう。
樹々はしばらく、その場に残って空を見上げていた。
職員室から出てくる二人を、逆に出迎える形となった。
「おかえりなさい。災難だったわね……」
「うう~、先輩の担任の先生って厳しいですね。ずっと怒られて頭がくらくらするよ」
「私もうだめかも……。あ、真雪と先輩の幻が見える~……」
「うちの担任は生活指導の先生だからね。生活態度には特に厳しいわよ。……ところで、私を待っててくれてたみたいけど、何か用事でもあったの?」
樹々は改めて二人に聞いた。
「そうだった。先輩に話があったのでした。……あの、先輩の勉強部屋で、一緒に勉強しませんか? 勉強でわからないところがあって、先輩に教えてほしいんです」
「勉強って、期末試験の勉強のこと? いいわよ」
明夏の質問に、樹々はあっさりと返事をした。
樹々にとっては、特に問題はないようだ。
「やった! 明夏ちゃん、部室で勉強ができるよ!」
真雪は明夏の手を取って、ぶんぶん振って喜んでいる。
「……言っておくけど、試験が終わるまで部活動はできないわよ? ちゃんと勉強して赤点はとらないようにしないと、部活どころじゃなくなるんだから」
「安心してください。中間テストではぎりぎりだったけど赤点はありませんでした! 真雪は1科目赤点があったけど」
「それでも、全科目の総合点では私の方が勝ってたんだからね」
「勝ってたって、たったの1点じゃん」
「1点でも勝ちなの!」
「……あなたたち、本当に仲がいいわね」
樹々はあきれた感じで言った。
と、そこへ、生徒会長が、樹々たちの横を通り過ぎていった。
樹々は今日の昼休み、生徒会室で言われたことを思い出す。
オンエア部は、放送部と合併することが決定しました。
「……」
「先輩? どうかしたんですか?」
「……ああ、なんでもないわ。さ、行きましょう。ちょうどあなたたちに話さないといけないこともあったから」
とりあえず、今は言わないでおこう。
話せる雰囲気になったら、そのときに言えばいい。
樹々はオンエア部がなくなることが、なかなか言い出せないでいた。
三人は樹々先輩の勉強部屋に行った。
それから数時間、みっちりと試験勉強をして、勉強がだめだった真雪も、先輩に教えてもらって少しはわかるようになってきた。
時間も遅くなったので、真雪と明夏が帰ろうとしたときには、辺りは暗くなりかけていた。
「先輩、今日はありがとうございました」
真雪が明るい声で言った。
ここは樹々の家の玄関先。
二人が帰るのを、樹々が玄関前まで見送りに来てくれていた。
「いや~、やっぱ先輩の勉強部屋はいいですね。勉強がすごくはかどるはかどる~。今度の期末では真雪に負ける気がしないよ」
「あら、私の教え方がよかったのかしら?」
「すごくわかりやすかったです。やっぱ先輩、頭いいんだな~って。ほら真雪、めずらしそうに家のインターホン見てないで帰るよ」
「うん。それじゃあ先輩、さようなら」
「先輩さよなら。今日はありがとうです」
「さようなら。帰り道、気をつけてね」
真雪と明夏は帰っていった。
一人になったあと、樹々は家の門に寄りかかり、ふっとため息を付いて空を見上げた。
「……結局、言えなかったな……」
勉強中、二人の楽しそうな表情を見ていると、オンエア部が放送部に吸収されることは言えなかった。
簡単に、言えるわけないじゃない。
私だって、ものすごくショックだったのに。
余計な心配はかけたくないし、せめて試験が終わってから。
それからみんなに言おう。
樹々はしばらく、その場に残って空を見上げていた。