第27話 真雪、最後のオンエア

文字数 1,620文字

 チャラララ~♪

 軽快なチャイムとともにお昼休みになった。
 真雪は持ってきたお弁当を机の上に乗せて、ガガガガッと椅子を鳴らしながら勢いよく立ち上がった。

 今日は私の最後のオンエアになるかもしれないんだ。
 今までみたいないいかげんなことをするんじゃなくて、日菜ちゃんみたいに自分の好きなこと出し切っていこう!

 真雪は今日のために、オンエア内容を何度もチェックしてきた。
 時間配分や作っておいた台本、そして今日の隠しネタなど、準備は万全に出来上がっていた。

 ふんっと鼻息をならして、気合いを入れる。
 堂々とした様子で、真雪は教室を出ていった。

 閉鎖が近づいている学食は、まるで縁日のような混雑ぶりになっていた。
 あまりの人の多さに、最初はびっくりしてしりごみしてしまったが、真雪は意を決してその中に飛び込んでいく。

「通してください、ちょっと通してください。部活動なんです~」

 真雪の声も周りの声にかき消され、真雪は人混みの中でそのまま身動きがとれなくなった。

 どうしよう。
 このままじゃオンエアできないよ。

 人混みは学食の中に引きずり込まれるように移動していく。
 真雪もその流れに沿って、部室ではなく学食の中に流されていった。


 ピンポンパンポーン。

 校内放送が流れてきた。
 それはオンエア部ではない、放送部のものだった。

「生徒のみなさんにお知らせです。学食が大変混雑しています。学食は、学年別に時間を決めての使用をお願いします。3年生は○○時○○分から○○時○○分まで。2年生は~~」

 人の声でうるさい学食でも、放送部の放送は十分に聞こえてきた。
 それからしばらくして、人混みは少しずつなくなっていき、真雪はようやく動けるようになった。

「……ふぅ、助かった……放送部すごいよね。……っと、こんなことをしてる場合じゃなかったよ。部室部室」

 真雪はいそいで第二放送室(部室)へ向かう。
 部室にはいると、そこには先客がいた。

「あ、真雪。遅かったじゃない」
「ゆきちゃん、ちぃーっすにょ」

「明夏ちゃんと日菜ちゃん!? どうしてここに」
「学食に行こうと思ったら学年別に時間交代になったから、それまで待ってるの。一年生は最後だって。わざわざ教室まで帰るのはちょっとね」
「めいちゃんはめんどくさがりなのですよ、オホホホホ」
「日菜も人のこと言えないじゃない」
「なんだかなぁ……」
「ちょうどいい機会だから、今日は真雪さんのオンエアを生で聴かせてもらうわよ。オホホホホ」
「せ、先輩まで。しかも日菜ちゃんのオホホホホを真似してる……」

 部室の隅っこで食事をしている樹々先輩がいた。

「みんなが見てる前でオンエアするの、ちょっと恥ずかしいな……」
「ふっふっふ~。お手並み拝見といったところですな、真雪はん」
「ううっ、そんなこと言わないでよぉ」

 日菜に言われて、ますます緊張してきた。
 真雪は持ってきた台本を取り出して、最終チェックに入る。

 誰も聴いてないと思って、自分のやってみたいことを台本に書いてきたけど。
 ……どうしよう、変に思われたら。
 だんだんと自信がなくなってきた。

 真雪は黙々と準備をしている。
 でも、その手は小刻みに震えていた。

「……真雪?」

 明夏はその様子に気づき、真雪のそばに寄った。
 それから耳元で、小声でささやく。

「トイレなら先に行ってきた方がいいよ? 始まったらしばらくこの場を離れられないから」
「いや、そうじゃなくて……。それに、小声で言うようなことじゃないから」

 しばらくして、真雪がオンエアをする準備が整った。
 マイクの前に座って、ひとつ大きな深呼吸をする。

「それじゃあ、今からオンエアします」

 部室内が静かになった。
 オンエア中は、静かにしないと声がマイクに入ってしまうからだ。

 しばらくの沈黙のあと、真雪が機械の電源を入れた。
 ポッという音とともに、機材のオンエアランプが点灯する。

 オンエア開始です!

 真雪がみんなに手で合図を出した。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

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