第47話 みんないろいろアイスクリーム

文字数 1,659文字

 三人はその後、学校近くのアイスクリーム専門店へ行った。
 メロン先輩がアイスをおごってあげるということで、

「私までおごってもらえるなんて。先輩、ありがとうございます」
「真雪ちゃんだけってわけにもいかないでしょ? 遠慮しなくていいよ。好きなの頼んで」
「じゃあ、チョコレートミントとストロベリーチーズケーキのダブルと、バニラ、マスクメロン、ラムレーズンのトリプルポップで」
「明夏ちゃん、少しは遠慮すればいいのに……」
「真雪ちゃんは? 決まった?」
「あ、はい。私は……バナナアンドストロベリーのワッフルコーンで」
「おっけー。じゃあ、私は……」

 メロン先輩はどれにするか少し迷っていた。
 真雪はその様子をじっと見ていた。

 やっぱりメロンを注文するのかな。
 メロン先輩がメロン。
 メロンパンナちゃんのメロメロパンチ……。

「じゃあ、大納言あずきのキングサイズをシングルで」

 意外と渋いところを注文してる!
 ……いや、これは私たちが子供なだけで、普通の選択なのかも。
 でも、メロン先輩がメロンじゃなくて、ちょっと残念……。

「真雪……さっきからなに一人でぶつぶつ言ってるの?」
「……明夏ちゃん、あずきっておいしい?」
「え? そりゃおいしいと思うけど」
「じゃあ、メロンパンは?」
「それもおいしい」
「やっぱりか~。ふむふむ」

 真雪は一人で納得してうなずいている。
 その様子を、明夏は不気味に感じながら見つめていた。

 三人はお店の近くにある児童公園でアイスを食べることにした。
 真雪と明夏はベンチに座って食べていたが、メロン先輩はブランコに乗って、楽しそうにはしゃいでいた。

「あははっ。ブランコ乗ったの久しぶりぃ」

 かなり大きく漕いでいたので、周りにいた小学生たちから羨望のまなざしで見られている。
 大人っぽくもあり子供っぽくもあるメロン先輩。

 そういえば私、メロン先輩の本当の名前も知らないや。
 それに、どうしてオンエア部とは関係ないのに、ここまで一緒になって部室を探してくれるんだろう。

 正体不明なメロン先輩。
 真雪は今更ながら、どんな人なのか気になっていた。

「真雪ちゃんと明夏ちゃんもこっち来なよー。誰が一番遠くまで靴飛ばせるかやってみようよ」

 メロン先輩がブランコから呼んでいる。

「明夏ちゃん、どうする?」
「……私はパス。アイスがちょっと多すぎて、動き回るとお腹が痛くならないか心配で……」
「欲張っていっぱい頼むからだよ……。じゃあ私は行ってくるね」

 真雪はメロン先輩のいるブランコまで走っていった。

「お、真雪ちゃんやる気だねぇ。じゃあ、さっそく私から靴を飛ばしてみるとしますか」
「ちょ、ちょっと待ってください。私、靴飛ばしは苦手で」
「あー、そっか。じゃあ、何する? いっぱい漕いでそこから漕がないで、どっちのブランコがより長く揺れ残っているかの勝負とか?」
「ちょっとわかりにくいです……。私、先輩とお話がしたいと思って」
「私と話を? 真雪ちゃん物好きだね。いいよ。お話しよっか」

 メロン先輩はブランコを漕ぐのをやめて真雪の方を見た。
 周りにいたギャラリーの小学生たちは、メロン先輩が漕ぐのをやめてしまったので、つまらなくなってそれぞれの遊びに戻っていった。

 真雪はメロン先輩の隣のブランコに座る。

「あの、前から思っていたんですけど」

 真雪はメロン先輩の方を見ず、前を向いたまま言った。

「先輩って、どうして私たちに協力してくれるんですか?」

 さっきからずっと思っていたことを聞いてみた。
 メロン先輩は顔色一つ変えずに、

「ん? だって、面白そうじゃん。廃部になりかけている部活を、どうにかして立て直そうとしている。そんな子が近くにいたら、協力だってしたくなるでしょ」
「そんなものなのかな。明夏ちゃんだったら、絶対にやらないと思う」
「人によるんじゃない? 明夏ちゃんはどっちかといえば、自分の好きなことにまっすぐな感じかな」
「そ、そうですね。私もそう思います……」

 話が途切れてしまい、それからしばらくの間、どちらも黙り込んでしまった。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

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