第64話 いつもとは違う明夏

文字数 1,217文字

「いやぁぁ、ちこくだぁぁ」

 真雪はめずらしく昨日、遅くまで勉強していた。
 そのおかげで朝起きることができずに、目が覚めたときはもうすぐ学校が始まる時間だった。

 学校に着いた頃には、すでに朝のホームルームが終わって、みんな1時間目の準備をしていた。
 真雪は息を切らして、何とか自分の席にたどり着く。

「……」

 肩で息をして、しばらく机にうつ伏せ状態で動かなかった。

 こういう時ってぜったいに明夏ちゃんが、遅刻したって言ってからかいに来るんだから。
 もし来ても、しばらく無視しておこう。

「……」

 真雪はずっとうつ伏せで、明夏が来るのを待っていた。
 しかし、

 ちゃららら~。

 1時間目が始まる音楽が流れてきた。

 ……。

 …………。

 ………………あれ?

 予想と違う現状を疑問に思った真雪は、ゆっくりと顔を上げた。

 もしかして、明夏ちゃんまだ学校に来てないのかな?

 明夏の席の方を見ると、明夏はちゃんと席に座って授業が始まるのを待っていた。

「???」

 どうしたんだろ。
 明夏ちゃん、いつもと違う感じがする。

 真雪は不思議に思いながら、最初の授業である古文の教科書とノートを机の上に出した。


 ちゃららら~。

 1時間目が終わった。
 朝のことが気になった真雪は、すぐに明夏のところに行った。

「おはよ、明夏ちゃん」
「あ、真雪。おはよ」

 素っ気ない返事。
 真雪にあまり関心がないように見えた。

 やっぱり。
 いつもの明夏ちゃんとはずいぶんと様子が違う。

 真雪は横から明夏のことをじっと見つめた。

「じーっ……」
「……」
「じーっ……」
「……ちょっと真雪、どうしたのよ。だまって人のことを見て」
「明夏ちゃんがいつもと違って変な感じに見えるから。何かあったの?」

 真雪の言葉に、明夏は一瞬だけびくっとなったが、

「ううん、なんでもない。あ~、今日も暑いよね~」

 明夏は、あきらかに変なごまかしかたをした。

 ……怪しい。
 明夏ちゃんは何か隠してる。

 真雪は明夏の目の前にまわった。
 そこで、じっと明夏の目を見つめる。

「……ぷっ! 真雪、いきなり正面に来て変顔しないでよ」
「これは普通の顔です! ……もう。明夏ちゃん本当に今日は変だよ? 何か隠してるでしょ」
「む~。だって、これを聞いたら真雪ってば絶対に落ち込むから」
「落ち込まないよ。いま私、絶好調なんだから。えへっ」

 真雪はそういいつつ、ピースサイン。
 その後、そんなことをやってる自分がちょっと恥ずかしくなった。

「じゃあ」
「うんうん」
「……やっぱやめた」
「ずこっ」

 真雪は自分で言いつつずっこけた。

「明夏ちゃ~ん、お~し~え~て~よ~」
「あ~、体揺すらないで~」

 明夏はなかなか話そうとしない。
 結局、真雪は明夏の体をゆするのをやめた。

「明夏ちゃんのけち」

 真雪は諦めて席に戻っていった。
 明夏は黙ってその後ろ姿を見つめる。

「真雪、ごめん。私の口からはとても言えない……」

 明夏は、真雪の落ち込む顔が見たくなかった。
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登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

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