第6話 真雪にとっての部活動
文字数 1,547文字
二人はあまりの驚きから、通路の端まですっ飛んでいった。
「?」
声をかけた女子生徒は、二人の驚きように首をかしげた。
三つ編みおさげで、物静かな雰囲気の女子生徒。
制服のリボンの色から、上級生だということがわかる。
「あ、あの、私たちは……」
「怪しい者じゃないよ? 日菜は以前もここに来たことがあるでやんす」
「以前ここに?」
女子生徒は日菜のことをじーっと見る。
「うふっ。そんなに見つめられるとてれるっす」
日菜は軟体動物のように、体をくねくねさせた。
「あなたは確かこの間の変な……じゃなくて、入部希望だった一年生。ということは、もしかしてあなたも入部希望?」
女子生徒の視線が、真雪に向けられた。
真雪は極度に緊張して、その場で気を付けの姿勢になってしまう。
「はっ、はいっ! 私、今日初めて学食でカレーライスを食べながらオンエア部の放送を聴いて、すごくいいなあと思いました。だから今度はカツカレーを頼んでみようかなと思って」
「ゆきちゃん、緊張しすぎて変な文章になってるだにょろ! もっとリラックスしてみて」
「そ、そうだよね。日菜ちゃんみたいになっちゃった」
真雪はさりげなく日菜が変な口調であることを言いきった。
いったん深呼吸して、
「私、オンエア部に興味があるんです! もしよろしければ見学させていただけませんか」
「あ、日菜もだよ? こりずにまた来ちゃったてへぺろ」
「やっぱりそうだったのね。でもどうしよう」
女子生徒は困ったような表情を浮かべた。
「うちは部員が少ないから本当はすごくうれしいんだけど……ごめんなさい。オンエア部にはもう、新しい部員は入れないことになってるの」
「えっ、それって……」
どういうことですか?
真雪は思わず聞き返そうとしたが、途中で言えなくなった。
だが、女子生徒は真雪の言いたかったことを理解して、ちゃんと答えてくれた。
「オンエア部はもうすぐ廃部になっちゃうんだよ。だからもう部員を増やすとか、新しいことはやらないことにしているの」
「廃部……」
「部の活動は一学期が終わるまで。夏休みになったらこの建物を取り壊して、新しい建物になる工事が始まるから。そのときにオンエア部の部室もなくなってしまうことになってるの」
「そうだったんですか……」
初めて興味を持てた部活動、オンエア部の廃部。
真雪はショックで、それ以降の女子生徒の話は、上の空になって聞いていなかった。
帰り道。
真雪は一人で、通学路の途中にある、河川敷の歩道を歩いていた。
一学期が終わるまでということは、あと二ヶ月くらいしかない。
その日になれば、あの学食でオンエア部の放送を聴くことも、カレーライスを食べることもできなくなってしまう。
……。
…………。
しかたがないのかな。
もうオンエア部がなくなるのは決まってることなんだもん。
今日、お昼の放送を聴いて、おしゃれでいいなあと思った。
オンエア部がなくなるのはショックだったけど、自分が入部できなかったことについてはそれほどショックではなかった。
オンエア部に少し興味を持っただけで、本当はそこまで入部したいと思っていなかったのかもしれない。
「ふぅ。私も高校で、ついに部活デビューができると思ったんだけどなぁ」
気が付いたら、思わず独り言を言っていた。
ふとスカートのポケットに手を入れると、さっきオンエア部の女子生徒からもらったあめ玉が入っていた。
さっき女子生徒が持っていた買い物袋に入っていたもので、真雪たちが帰る前に手渡してくれたものだった。
真雪は包みをほどいて、あめ玉を口にほうばった。
「えへ、おいしい」
どこかの運動部の人たちが、走って真雪の横を通り過ぎていく。
その姿は、真雪にとってどこか遠い世界での出来事のように感じていた。
「?」
声をかけた女子生徒は、二人の驚きように首をかしげた。
三つ編みおさげで、物静かな雰囲気の女子生徒。
制服のリボンの色から、上級生だということがわかる。
「あ、あの、私たちは……」
「怪しい者じゃないよ? 日菜は以前もここに来たことがあるでやんす」
「以前ここに?」
女子生徒は日菜のことをじーっと見る。
「うふっ。そんなに見つめられるとてれるっす」
日菜は軟体動物のように、体をくねくねさせた。
「あなたは確かこの間の変な……じゃなくて、入部希望だった一年生。ということは、もしかしてあなたも入部希望?」
女子生徒の視線が、真雪に向けられた。
真雪は極度に緊張して、その場で気を付けの姿勢になってしまう。
「はっ、はいっ! 私、今日初めて学食でカレーライスを食べながらオンエア部の放送を聴いて、すごくいいなあと思いました。だから今度はカツカレーを頼んでみようかなと思って」
「ゆきちゃん、緊張しすぎて変な文章になってるだにょろ! もっとリラックスしてみて」
「そ、そうだよね。日菜ちゃんみたいになっちゃった」
真雪はさりげなく日菜が変な口調であることを言いきった。
いったん深呼吸して、
「私、オンエア部に興味があるんです! もしよろしければ見学させていただけませんか」
「あ、日菜もだよ? こりずにまた来ちゃったてへぺろ」
「やっぱりそうだったのね。でもどうしよう」
女子生徒は困ったような表情を浮かべた。
「うちは部員が少ないから本当はすごくうれしいんだけど……ごめんなさい。オンエア部にはもう、新しい部員は入れないことになってるの」
「えっ、それって……」
どういうことですか?
真雪は思わず聞き返そうとしたが、途中で言えなくなった。
だが、女子生徒は真雪の言いたかったことを理解して、ちゃんと答えてくれた。
「オンエア部はもうすぐ廃部になっちゃうんだよ。だからもう部員を増やすとか、新しいことはやらないことにしているの」
「廃部……」
「部の活動は一学期が終わるまで。夏休みになったらこの建物を取り壊して、新しい建物になる工事が始まるから。そのときにオンエア部の部室もなくなってしまうことになってるの」
「そうだったんですか……」
初めて興味を持てた部活動、オンエア部の廃部。
真雪はショックで、それ以降の女子生徒の話は、上の空になって聞いていなかった。
帰り道。
真雪は一人で、通学路の途中にある、河川敷の歩道を歩いていた。
一学期が終わるまでということは、あと二ヶ月くらいしかない。
その日になれば、あの学食でオンエア部の放送を聴くことも、カレーライスを食べることもできなくなってしまう。
……。
…………。
しかたがないのかな。
もうオンエア部がなくなるのは決まってることなんだもん。
今日、お昼の放送を聴いて、おしゃれでいいなあと思った。
オンエア部がなくなるのはショックだったけど、自分が入部できなかったことについてはそれほどショックではなかった。
オンエア部に少し興味を持っただけで、本当はそこまで入部したいと思っていなかったのかもしれない。
「ふぅ。私も高校で、ついに部活デビューができると思ったんだけどなぁ」
気が付いたら、思わず独り言を言っていた。
ふとスカートのポケットに手を入れると、さっきオンエア部の女子生徒からもらったあめ玉が入っていた。
さっき女子生徒が持っていた買い物袋に入っていたもので、真雪たちが帰る前に手渡してくれたものだった。
真雪は包みをほどいて、あめ玉を口にほうばった。
「えへ、おいしい」
どこかの運動部の人たちが、走って真雪の横を通り過ぎていく。
その姿は、真雪にとってどこか遠い世界での出来事のように感じていた。