第67話 放送部のインタビュー
文字数 2,223文字
期末テストの最終日。
最後の科目も終了し、長かったテスト期間が無事に終わった。
お昼で帰りのホームルームも終わり、午後からは完全に自由な時間が学生には与えられる。
真雪たちのクラスも例外ではなく、テスト期間にはぴりぴりした空気も一変し、遊園地に遊びに行ったときのようなテンション高めの雰囲気になっていた。
「ねえねえ真雪。この後どうする? やっぱ買い食いとか行っときますか? あ、校内じゃんけん王への挑戦も再開されるらしいよ?」
明夏はうきうき気分で言った。
一方の真雪は、
「あ、明夏ちゃん……何だか私、疲れたよ……。まさか山を張って勉強していたところが、ことごとく外れていたなんて……」
「真雪。テストだめだったのね……」
全体としてはみんなテンション高くなるが、真雪のようにテストの手応え次第で、テンションが下がることもあるらしい。
「真雪暗い! もうそんなことは忘れてぱーっといこう! 私たちはテストの束縛から解放されて自由になったんだから!」
「……そだね」
「ねえねえどこ行く? カラオケ? それともゲーセン?」
「私、お金ないよ……今月ピンチ……」
「じゃあどうしよっか……って、真雪!? そんなに落ち込んじゃだめだよ! テスト後の自由よ、フリーダム!」
真雪の発する暗いオーラを、明夏は手でかき回して消そうとする。
だが、真雪から次々と発せられる暗いオーラに、まったく追いつけなかった。
「しょうがないなぁ。……それじゃあさ、じゃんけん王に挑戦してみようよ。我が校最強のじゃんけん王でいまだに負けなし、異世界からの転生してきた最強の男に挑戦するイベントがあるらしいよ」
「……うん、それだったら私にもできそう……」
「さ、じゃんけん王が待つ学食(仮)に行くわよ。こういうのは勢いが大切なんだから。れっつごー」
真雪は明夏に連れられて、新しくできた学食(仮)までやってきた。
今日は学食が休みにもかかわらず、そこには長い行列ができていた。
「今日の学食はいつになくすごいね……。カメラを持った新聞部とかも取材に来てるよ」
「テスト後すぐのイベントだからね。いままで我慢してた分、みんなはじけたいんだよ」
「私、やっぱりいいや……。テストよくできなかったし」
「いまさら何言ってるのよ。じゃんけんするだけよ? こんな時こそ、この独特の雰囲気を楽しまないと」
列はすでに学食(仮)の外まで続いている。
真雪と明夏は、その列の一番後ろに並んだ。
学食(仮)の中からは、歓声やら悲鳴やらがたくさん聞こえてくる。
しばらくの間、真雪にとって退屈な時間が続いた。
「じゃんけんするだけにしては、すごく時間かかってるよね。列もなかなか進まないし」
「じゃんけんの演出がすごいらしいのよ。最近じゃんけん王の取り巻きができて、そいつらがいろいろとやってるみたいだけど」
「ふ~ん」
じゃんけん王があまりにも強いので、校内の一大イベントになってきたのだろう。
じゃんけん王に勝てる挑戦者は現れるのか?!
という、大げさとも思えるキャッチコピーまでついていた。
学食(仮)からは、悔しそうな顔をして出てくる者や、涙を流して出てくる者もいた。
挑戦者の中には、校則には寛容な、乗りのいい先生たちまで混じっている。
真雪と明夏がいよいよ学食(仮)の中に入れそうになったとき、後ろからやってきた人に声をかけられた。
「あ、真雪と明夏。あなたたちも挑戦するんだ」
それは、同じクラスで放送部の文香だった。
文香はマイクを持っていて、一緒に来ていた人たちが、スピーカーや録音機みたいなものを持っている。
「おっす文香。試験明け早々、何やってるの?」
明夏が聞くと、
「このじゃんけん大会が終わったら、じゃんけん王にインタビューするのよ。いつの間にかこの大会も有名になっちゃったからね。放送部としてもほうってはおけなくなったというわけ」
「へえ。放送部ってそんなことまでするんだ」
「そうよ。……それに、こんなこともね」
文香の後ろにいた人たちが、一斉に機材を使う準備を始める。
それから、文香がしゃべり始めた。
「それでは、挑戦者の方にインタビューしてみましょう。じゃんけん王に挑戦する、意気込みをどうぞ!」
「……私?」
機材を持った人は、録音中と書いたスケッチブックを出していた。
文香は黙って、明夏にマイクを向けている。
「えっとその~……勝ちますっ!」
「素晴らしい気合いですね。ありがとうございましたー」
文香はアナウンサーのような受け答えをする。
そして今度は、真雪の方にやってきた。
「では、お隣の方」
「へ? 私!?」
いきなりマイクを向けられた真雪は、気が動転してしまう。
あたふたしていると、
「真雪! あの練習を思い出して! 緊張しない話し方!」
明夏が真雪に言った。
「練習……あ、そっか」
真雪は今までやってきたことを思い出した。
息を大きく吸って、呼吸を整える。
「はい。じゃんけん王は強いと思いますが、私は勝ちたいです!」
さっきまでの態度がうそのように、はきはきとした声で言った。
「……真雪すごいね。答え方がはっきりしてていい感じ。いつもの真雪じゃないみたい」
文香は驚いた表情をしていた。
「文香さーん。学食(仮)に行くよー」
「あ、はーい。……真雪、明夏。放送部も楽しいよ? いつでもいいから来てみてよ。私、あなたたちを待ってるから」
文香は二人に手を振ってから、学食(仮)の中に入っていった。
最後の科目も終了し、長かったテスト期間が無事に終わった。
お昼で帰りのホームルームも終わり、午後からは完全に自由な時間が学生には与えられる。
真雪たちのクラスも例外ではなく、テスト期間にはぴりぴりした空気も一変し、遊園地に遊びに行ったときのようなテンション高めの雰囲気になっていた。
「ねえねえ真雪。この後どうする? やっぱ買い食いとか行っときますか? あ、校内じゃんけん王への挑戦も再開されるらしいよ?」
明夏はうきうき気分で言った。
一方の真雪は、
「あ、明夏ちゃん……何だか私、疲れたよ……。まさか山を張って勉強していたところが、ことごとく外れていたなんて……」
「真雪。テストだめだったのね……」
全体としてはみんなテンション高くなるが、真雪のようにテストの手応え次第で、テンションが下がることもあるらしい。
「真雪暗い! もうそんなことは忘れてぱーっといこう! 私たちはテストの束縛から解放されて自由になったんだから!」
「……そだね」
「ねえねえどこ行く? カラオケ? それともゲーセン?」
「私、お金ないよ……今月ピンチ……」
「じゃあどうしよっか……って、真雪!? そんなに落ち込んじゃだめだよ! テスト後の自由よ、フリーダム!」
真雪の発する暗いオーラを、明夏は手でかき回して消そうとする。
だが、真雪から次々と発せられる暗いオーラに、まったく追いつけなかった。
「しょうがないなぁ。……それじゃあさ、じゃんけん王に挑戦してみようよ。我が校最強のじゃんけん王でいまだに負けなし、異世界からの転生してきた最強の男に挑戦するイベントがあるらしいよ」
「……うん、それだったら私にもできそう……」
「さ、じゃんけん王が待つ学食(仮)に行くわよ。こういうのは勢いが大切なんだから。れっつごー」
真雪は明夏に連れられて、新しくできた学食(仮)までやってきた。
今日は学食が休みにもかかわらず、そこには長い行列ができていた。
「今日の学食はいつになくすごいね……。カメラを持った新聞部とかも取材に来てるよ」
「テスト後すぐのイベントだからね。いままで我慢してた分、みんなはじけたいんだよ」
「私、やっぱりいいや……。テストよくできなかったし」
「いまさら何言ってるのよ。じゃんけんするだけよ? こんな時こそ、この独特の雰囲気を楽しまないと」
列はすでに学食(仮)の外まで続いている。
真雪と明夏は、その列の一番後ろに並んだ。
学食(仮)の中からは、歓声やら悲鳴やらがたくさん聞こえてくる。
しばらくの間、真雪にとって退屈な時間が続いた。
「じゃんけんするだけにしては、すごく時間かかってるよね。列もなかなか進まないし」
「じゃんけんの演出がすごいらしいのよ。最近じゃんけん王の取り巻きができて、そいつらがいろいろとやってるみたいだけど」
「ふ~ん」
じゃんけん王があまりにも強いので、校内の一大イベントになってきたのだろう。
じゃんけん王に勝てる挑戦者は現れるのか?!
という、大げさとも思えるキャッチコピーまでついていた。
学食(仮)からは、悔しそうな顔をして出てくる者や、涙を流して出てくる者もいた。
挑戦者の中には、校則には寛容な、乗りのいい先生たちまで混じっている。
真雪と明夏がいよいよ学食(仮)の中に入れそうになったとき、後ろからやってきた人に声をかけられた。
「あ、真雪と明夏。あなたたちも挑戦するんだ」
それは、同じクラスで放送部の文香だった。
文香はマイクを持っていて、一緒に来ていた人たちが、スピーカーや録音機みたいなものを持っている。
「おっす文香。試験明け早々、何やってるの?」
明夏が聞くと、
「このじゃんけん大会が終わったら、じゃんけん王にインタビューするのよ。いつの間にかこの大会も有名になっちゃったからね。放送部としてもほうってはおけなくなったというわけ」
「へえ。放送部ってそんなことまでするんだ」
「そうよ。……それに、こんなこともね」
文香の後ろにいた人たちが、一斉に機材を使う準備を始める。
それから、文香がしゃべり始めた。
「それでは、挑戦者の方にインタビューしてみましょう。じゃんけん王に挑戦する、意気込みをどうぞ!」
「……私?」
機材を持った人は、録音中と書いたスケッチブックを出していた。
文香は黙って、明夏にマイクを向けている。
「えっとその~……勝ちますっ!」
「素晴らしい気合いですね。ありがとうございましたー」
文香はアナウンサーのような受け答えをする。
そして今度は、真雪の方にやってきた。
「では、お隣の方」
「へ? 私!?」
いきなりマイクを向けられた真雪は、気が動転してしまう。
あたふたしていると、
「真雪! あの練習を思い出して! 緊張しない話し方!」
明夏が真雪に言った。
「練習……あ、そっか」
真雪は今までやってきたことを思い出した。
息を大きく吸って、呼吸を整える。
「はい。じゃんけん王は強いと思いますが、私は勝ちたいです!」
さっきまでの態度がうそのように、はきはきとした声で言った。
「……真雪すごいね。答え方がはっきりしてていい感じ。いつもの真雪じゃないみたい」
文香は驚いた表情をしていた。
「文香さーん。学食(仮)に行くよー」
「あ、はーい。……真雪、明夏。放送部も楽しいよ? いつでもいいから来てみてよ。私、あなたたちを待ってるから」
文香は二人に手を振ってから、学食(仮)の中に入っていった。