第13話 真雪へのメッセージ
文字数 1,782文字
「今日のゲストは星空中央高校のオンエア部の方です」
「よろしくお願いします」
このゲストって誰だろう。この間、部室の前で会った人かな。
真雪はスピーカーの前を陣取り、興味津々でラジオの放送を聴いていた。
「お名前はなんて言うんですか?」
「真雪です。真の字に、空から降ってくる雪で真雪」
「真雪さんですか。いい名前ですね。ではさっそくですが」
真雪って私と同じ名前だ。しかも字も同じ。
それにこの人、私と声も似てる。
「学食で好きな食べ物は?」
「カレーライス!」
「即答かよ!」
これも私と同じ。
なんだろう。このやりとり、以前にどこかであったような気がする。
「そうですか。オンエア部ってめずらしい部活だけど、どうして入ろうと思ったのですか?」
「初めて行った学食で放送されていたのをたまたま聴いたんです。それでいいなあって思って。だからオンエア部に入って私もこんな素敵な放送をしてみたいと思いました!」
「それは運命的ですね。すばらしいです」
この真雪って子、私と全く同じだ。
でも、こんなことってあるのかな。
偶然にしてはあまりにもできすぎているような。
真雪が不思議に思ってると、
「……冗談だよー。真雪、びっくりした? この放送、ちゃんと聴いてる?」
スピーカーから真雪に向かって話しかけてくる声が聞こえてきた。
「この声は……明夏ちゃん!? どうして放送局なんかにいるの?」
「放送局じゃないよ。私、未来の時間から真雪だけに向かって放送してるんだよ」
「未来からって、よくわかんないんだけど」
「まあ、わからないのも当然だよね。今の私は3年生の私。真雪と一緒にオンエア部に入って、ずっとオンエア部を盛り上げてきたんだよ」
「明夏ちゃんと私が?」
真雪はまだ不思議な感覚で、スピーカーから出る明夏の声を聴いていた。
「1年生の時の私、久しぶり。私は3年生になったあなただよ」
もう一つの声が聞こえた。
さっきの放送で真雪と言っていた、自分と声の似ている子だった。
いきなり3年生の自分と言われたらちょっと違和感あるが、録音した自分の声にそっくりの声だったので、人にはこういうふうに聞こえているのだろう。
「3年生になった……私?」
「そうだよ。私はいま、すっごく楽しい学校生活を送っているから」
「本当に?」
「うん、とっても。あなたが部活動がしたいって思ってる気持ちは間違いじゃない。だからその気持ちを大切にして。そうすればきっと、高校生活は充実した青春を送ることができるよ」
「私の気持ちを大切に……」
正直な話、部活動はどれにしようとずいぶん悩んでいた。
もしかしたら、中学の時と同じように何も決められないまま帰宅部になってしまうかもしれないと思っていた。
でも、3年生の真雪の言葉を聞いて、考えすぎていた気持ちが少し楽になったような気がした。
「オンエア部はもうすぐ廃部になるって聞いたけど」
真雪は気がかりだったことを聞いてみた。
「大丈夫。あなたなら乗り越えられるよ。現に私が3年生になった今でも、オンエア部はまだ残ってるよ」
「そうそう。真雪ったらあのときものすごいことをやって、ぷぷ、思い出したら少し笑いが出てきた」
「明夏ちゃんひどーい。せっかくかっこよく決まってると思ってたのに。……あ、1年生の時の私、聞いてる?」
「うん。聞いてるけど」
「絶対に楽しい部活になるから、入るならオンエア部に――――」
……。
……。
ザー。
急に放送がとぎれた。
今のは何だったんだろう。
未来の私からの放送?
だとしたら、これってすごいことだよね。
2年後には科学技術が進んで、過去の自分にメッセージが……。
…………。
……。
「ん」
気が付いたらベッドに横たわっていた。
上半身を起こして、時計で時間を確認する。
まだ朝の6時前。
学校がある日でも、十分に間に合う時間だった。
「さっきのラジオ、何だったんだろう」
ベッドから出て、ミニコンポの電源を入れた。
さっき聴いた放送局の番号にしても、ザーッという音しか聴こえてこない。
「夢、だったのかな……」
夢にしてはリアルすぎた、不思議な出来事だった。
「……ありがとう、未来の私。私、中学の時みたいに逃げないで、ちゃんと部活をする。きっと楽しい高校生活を送ってみせるよ」
いままでずっと悩んでいたのが嘘のように、真雪の心はすごく晴れやかになっていた。
「よろしくお願いします」
このゲストって誰だろう。この間、部室の前で会った人かな。
真雪はスピーカーの前を陣取り、興味津々でラジオの放送を聴いていた。
「お名前はなんて言うんですか?」
「真雪です。真の字に、空から降ってくる雪で真雪」
「真雪さんですか。いい名前ですね。ではさっそくですが」
真雪って私と同じ名前だ。しかも字も同じ。
それにこの人、私と声も似てる。
「学食で好きな食べ物は?」
「カレーライス!」
「即答かよ!」
これも私と同じ。
なんだろう。このやりとり、以前にどこかであったような気がする。
「そうですか。オンエア部ってめずらしい部活だけど、どうして入ろうと思ったのですか?」
「初めて行った学食で放送されていたのをたまたま聴いたんです。それでいいなあって思って。だからオンエア部に入って私もこんな素敵な放送をしてみたいと思いました!」
「それは運命的ですね。すばらしいです」
この真雪って子、私と全く同じだ。
でも、こんなことってあるのかな。
偶然にしてはあまりにもできすぎているような。
真雪が不思議に思ってると、
「……冗談だよー。真雪、びっくりした? この放送、ちゃんと聴いてる?」
スピーカーから真雪に向かって話しかけてくる声が聞こえてきた。
「この声は……明夏ちゃん!? どうして放送局なんかにいるの?」
「放送局じゃないよ。私、未来の時間から真雪だけに向かって放送してるんだよ」
「未来からって、よくわかんないんだけど」
「まあ、わからないのも当然だよね。今の私は3年生の私。真雪と一緒にオンエア部に入って、ずっとオンエア部を盛り上げてきたんだよ」
「明夏ちゃんと私が?」
真雪はまだ不思議な感覚で、スピーカーから出る明夏の声を聴いていた。
「1年生の時の私、久しぶり。私は3年生になったあなただよ」
もう一つの声が聞こえた。
さっきの放送で真雪と言っていた、自分と声の似ている子だった。
いきなり3年生の自分と言われたらちょっと違和感あるが、録音した自分の声にそっくりの声だったので、人にはこういうふうに聞こえているのだろう。
「3年生になった……私?」
「そうだよ。私はいま、すっごく楽しい学校生活を送っているから」
「本当に?」
「うん、とっても。あなたが部活動がしたいって思ってる気持ちは間違いじゃない。だからその気持ちを大切にして。そうすればきっと、高校生活は充実した青春を送ることができるよ」
「私の気持ちを大切に……」
正直な話、部活動はどれにしようとずいぶん悩んでいた。
もしかしたら、中学の時と同じように何も決められないまま帰宅部になってしまうかもしれないと思っていた。
でも、3年生の真雪の言葉を聞いて、考えすぎていた気持ちが少し楽になったような気がした。
「オンエア部はもうすぐ廃部になるって聞いたけど」
真雪は気がかりだったことを聞いてみた。
「大丈夫。あなたなら乗り越えられるよ。現に私が3年生になった今でも、オンエア部はまだ残ってるよ」
「そうそう。真雪ったらあのときものすごいことをやって、ぷぷ、思い出したら少し笑いが出てきた」
「明夏ちゃんひどーい。せっかくかっこよく決まってると思ってたのに。……あ、1年生の時の私、聞いてる?」
「うん。聞いてるけど」
「絶対に楽しい部活になるから、入るならオンエア部に――――」
……。
……。
ザー。
急に放送がとぎれた。
今のは何だったんだろう。
未来の私からの放送?
だとしたら、これってすごいことだよね。
2年後には科学技術が進んで、過去の自分にメッセージが……。
…………。
……。
「ん」
気が付いたらベッドに横たわっていた。
上半身を起こして、時計で時間を確認する。
まだ朝の6時前。
学校がある日でも、十分に間に合う時間だった。
「さっきのラジオ、何だったんだろう」
ベッドから出て、ミニコンポの電源を入れた。
さっき聴いた放送局の番号にしても、ザーッという音しか聴こえてこない。
「夢、だったのかな……」
夢にしてはリアルすぎた、不思議な出来事だった。
「……ありがとう、未来の私。私、中学の時みたいに逃げないで、ちゃんと部活をする。きっと楽しい高校生活を送ってみせるよ」
いままでずっと悩んでいたのが嘘のように、真雪の心はすごく晴れやかになっていた。