第40話 3 そのまま突き進むその2
文字数 1,705文字
「だ、誰ですか? そこにいるのは」
真雪はおそるおそる声をかけてみた。
すると、大道具の物陰から、見知った人の顔が出てきた。
「ちょっと真雪~。こんなところでなにやってんのよ」
「明夏ちゃん!? どうしてここに」
そこにいたのは、放課後になって先に教室を出ていった明夏だった。
「どうしてここにって、それはこっちの台詞だよ。部室に使えそうな部屋探してたらいきなり真雪が入ってきて、アイドルやりだすんだもん。ちょっと面白かったから黙ってみてたけど」
「ひどいっ! 声かけてくれればよかったのにっ!」
真雪はちょっと頬を膨らませた。
「ごめんごめん。……で? いつもここでアイドルごっこしてるの?」
「それは……今回が初めてです……」
真雪は真っ赤になりながら言った。
「明夏ちゃんこそ、どうしてここに」
「私? さっきも言ったじゃない。新しい部室を探すためにいろいろ回ってたんだよ。で、いろんな人から話を聞いて、ようやくここにたどり着いたってわけ。噂では、この教室が以前とある部活の部室に使われていたって話だから」
「とある部活って、ここにあるいろんな荷物もその部活のものなの?」
「うーん、文化祭とか体育祭の道具の物置として使ってる場所だけど、元々はある部活が使っていた場所らしいよ」
「ある部活って?」
「……聞いて驚かないでよ? なんと、昔のオンエア部!」
「こんなところに!? ……でも、ここからだったら校内放送なんてできないんじゃ……」
マイクとかは置いてあったのだが、校内に放送するための設備や機材がなかった。
「それが不思議なのよね。私も疑問に思ってこの情報を疑ってたんだけど、どうやら本当のことらしいよ。昔、この学校の生徒だった先生がそう言ってた」
「そうだったんだ。ここが昔のオンエア部の部室……」
真雪は改めて教室内を見回した。
今ではどう見ても、荷物置きに使われた普通の空き教室のように見える。
「話を戻すけど、この教室を新しい部室にできないかなと思って。オンエア部の原点回帰みたいでかっこいいでしょ?」
「あ、それいいかも! ここならめったに人が来ないから」
「アイドルみたいな真似ができる?」
「ちっ、違うよっ! オンエア部の活動ができるって言おうと思ったの!」
真雪は思い出して、またもや顔を真っ赤にした。
「善は急げよね。……ええっと、こういう場合はどこに聞けばいいんだっけ。教室を使う許可を取るところ」
「わかんない。明夏ちゃん知らないの?」
「知らな~い。むむ~、せっかくやる気になってたのに」
そのとき、どこからともなく声が聞こえてきた。
「こういうときは生徒会、生徒会室に行けばいいんだピョロ」
明夏が教室内を見回した。
真雪以外は人の姿が見えない。
「誰?! 誰かいるの?!」
「ピョロ!? …………私は……教室の妖精?」
「なんで疑問型なのよ……」
この教室には、真雪と明夏の他にも誰かがいるみたいだ。
しばらく待ってみたが、これ以上の声はせず、姿も現さなかった。
「……ま、いいや。教室の妖精さん、教えてくれてありがとう。真雪、早く行こう」
「ふぇ? どこに?」
「妖精さんの話を聞いてなかったの? 生徒会室よ」
明夏が真雪の手を引っ張る。
だが、真雪はぼーっとして、その場を動こうとしない。
「……真雪?」
真雪の目は、どこか遠い場所を見ているようだった。
「明夏ちゃん。妖精さんって、気にならない?」
「別に~。ほら、早く行こう。もう下校時間がだいぶ近づいてるから」
「ああ、妖精さーん!」
真雪は明夏に強引に手を引かれて、教室をあとにした。
誰もいなくなった教室。
後ろにある掃除用具入れから、一人の女子生徒が出てきた。
「ふう、ついにここも見つかっちゃったか。いい隠れ家だったんだけどね」
妖精の正体は、以前、屋上で真雪と話をしたメロン先輩だった。
メロン先輩はグラウンド側の窓を開けて、掃除用具入れで服についたほこりを、ぱんぱんとはたいた。
「それにしてもあの子たち、本気でオンエア部を続けようとしてるんだ。樹々は半分諦めてた感じだったけど、これはちょっと面白くなってきたね」
メロン先輩は、とても嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
真雪はおそるおそる声をかけてみた。
すると、大道具の物陰から、見知った人の顔が出てきた。
「ちょっと真雪~。こんなところでなにやってんのよ」
「明夏ちゃん!? どうしてここに」
そこにいたのは、放課後になって先に教室を出ていった明夏だった。
「どうしてここにって、それはこっちの台詞だよ。部室に使えそうな部屋探してたらいきなり真雪が入ってきて、アイドルやりだすんだもん。ちょっと面白かったから黙ってみてたけど」
「ひどいっ! 声かけてくれればよかったのにっ!」
真雪はちょっと頬を膨らませた。
「ごめんごめん。……で? いつもここでアイドルごっこしてるの?」
「それは……今回が初めてです……」
真雪は真っ赤になりながら言った。
「明夏ちゃんこそ、どうしてここに」
「私? さっきも言ったじゃない。新しい部室を探すためにいろいろ回ってたんだよ。で、いろんな人から話を聞いて、ようやくここにたどり着いたってわけ。噂では、この教室が以前とある部活の部室に使われていたって話だから」
「とある部活って、ここにあるいろんな荷物もその部活のものなの?」
「うーん、文化祭とか体育祭の道具の物置として使ってる場所だけど、元々はある部活が使っていた場所らしいよ」
「ある部活って?」
「……聞いて驚かないでよ? なんと、昔のオンエア部!」
「こんなところに!? ……でも、ここからだったら校内放送なんてできないんじゃ……」
マイクとかは置いてあったのだが、校内に放送するための設備や機材がなかった。
「それが不思議なのよね。私も疑問に思ってこの情報を疑ってたんだけど、どうやら本当のことらしいよ。昔、この学校の生徒だった先生がそう言ってた」
「そうだったんだ。ここが昔のオンエア部の部室……」
真雪は改めて教室内を見回した。
今ではどう見ても、荷物置きに使われた普通の空き教室のように見える。
「話を戻すけど、この教室を新しい部室にできないかなと思って。オンエア部の原点回帰みたいでかっこいいでしょ?」
「あ、それいいかも! ここならめったに人が来ないから」
「アイドルみたいな真似ができる?」
「ちっ、違うよっ! オンエア部の活動ができるって言おうと思ったの!」
真雪は思い出して、またもや顔を真っ赤にした。
「善は急げよね。……ええっと、こういう場合はどこに聞けばいいんだっけ。教室を使う許可を取るところ」
「わかんない。明夏ちゃん知らないの?」
「知らな~い。むむ~、せっかくやる気になってたのに」
そのとき、どこからともなく声が聞こえてきた。
「こういうときは生徒会、生徒会室に行けばいいんだピョロ」
明夏が教室内を見回した。
真雪以外は人の姿が見えない。
「誰?! 誰かいるの?!」
「ピョロ!? …………私は……教室の妖精?」
「なんで疑問型なのよ……」
この教室には、真雪と明夏の他にも誰かがいるみたいだ。
しばらく待ってみたが、これ以上の声はせず、姿も現さなかった。
「……ま、いいや。教室の妖精さん、教えてくれてありがとう。真雪、早く行こう」
「ふぇ? どこに?」
「妖精さんの話を聞いてなかったの? 生徒会室よ」
明夏が真雪の手を引っ張る。
だが、真雪はぼーっとして、その場を動こうとしない。
「……真雪?」
真雪の目は、どこか遠い場所を見ているようだった。
「明夏ちゃん。妖精さんって、気にならない?」
「別に~。ほら、早く行こう。もう下校時間がだいぶ近づいてるから」
「ああ、妖精さーん!」
真雪は明夏に強引に手を引かれて、教室をあとにした。
誰もいなくなった教室。
後ろにある掃除用具入れから、一人の女子生徒が出てきた。
「ふう、ついにここも見つかっちゃったか。いい隠れ家だったんだけどね」
妖精の正体は、以前、屋上で真雪と話をしたメロン先輩だった。
メロン先輩はグラウンド側の窓を開けて、掃除用具入れで服についたほこりを、ぱんぱんとはたいた。
「それにしてもあの子たち、本気でオンエア部を続けようとしてるんだ。樹々は半分諦めてた感じだったけど、これはちょっと面白くなってきたね」
メロン先輩は、とても嬉しそうな笑顔を浮かべていた。