第46話 理想の恋人と出会える教室
文字数 1,430文字
三人は最後の一つである教室の前にやってきた。
「最後の一つは『理想の恋人と出会える場所』と言われる教室。そこは夢の世界につながっていて、自分の理想とする異性が現れるという話があるらしいよ」
「えーっ……メロン先輩。それはいくら真雪でも信じない……」
明夏がちらっと真雪の方を見た。
真雪は赤面して、体をくねるように動かしている。
「えへぇ。明夏ちゃん、どうしたの? 私の顔をじっと見たりしてぇ」
「いや、別に……」
真雪があまりにも嬉しそうなので、明夏は何も言わなかった。
「でもね、この教室は一人ずつしか入れないようになってるの。……ということで、まずは誰が行く?」
「はいっ!」
迷うことなく、真雪がびしっと垂直に手を挙げた。
「お、真雪ちゃんやる気あるねえ。じゃあ、最初に行ってみるかい? ヒッヒッヒ」
「はい! お願いします!」
「真雪、あんた……」
明夏には、メロン先輩が童話に出てくる悪い魔女に見えてきた。
メロン先輩は教室の鍵を開けて、真雪に扉の前の場所を譲る。
「いい? 真雪ちゃん。『私の理想の男の子、出てきて~!』って大声で言いながら開けるんだよ。そうしないと、夢の世界には通じないから」
「はいっ!」
はっきりとしたいい返事が返ってきた。
「じゃ。先に行ってくるよ、明夏ちゃん。私、素敵な恋人をゲットしてくる」
「いってらっしゃい。相手がどんな人だったか、結果を楽しみにしてるよ……」
真雪が扉に手を置く。
そして、
「私の理想の男の子、出てきて~!」
廊下の隅まで響きそうな大きな声を出して、真雪は扉を開けた。
教室の中に入っていった真雪は、目をぱちくりさせる。
「……あれ? ここって、普通の教室……」
周囲を見回してみるが、人は誰もいない。
掃除用具入れやカーテンの裏など、教室内を隅々まで探してみたが、やはり理想の男の子はどこにもいなかった。
真雪は不思議に思って、廊下に戻ってきた。
「……あの~、先輩。誰もいなかったんですけど」
「そっか~。じゃあ真雪ちゃんには理想の恋人は現れないってことかな」
「そんな馬鹿な!」
「真雪……。あんた、人から騙されないように注意した方がいいよ……」
結局、さっきの話はメロン先輩のじょうだんということがわかり、真雪はさすがにふてくされてしまった。
「……メロン先輩、どうしましょう。真雪ってば、『もう帰る』って言い出してますけど」
「あちゃ~、ちょっとやりすぎちゃったね。ごめん、真雪ちゃん。あとでアイスおごるから許して」
「アイス……?」
真雪はメロン先輩の方をちらっと見る。
メロン先輩は手を合わせて謝っている。
「ま、まあ。……そこまで謝られたら、許してあげないわけにはいかないです」
「本当? さっすが真雪ちゃん。話がわかる」
「先輩、真雪はアイスにつられただけだと思うけど」
明夏が真雪に聞かれないように、ひそひそ声で言った。
「あ、やっぱり? ま、でもそこが真雪ちゃんのいいところよね」
「……」
三つの教室をまわってみたが、結局、隠れ部室になりそうな場所は見つからなかった。
時間が遅くなってきたので、今日はもう帰ることにした。
「部室探し、なかなか難しいね。今度はもっと良さそうな場所を見つけておくよ」
「いやー、でも今日は楽しかったな。またアーケードゲームのある教室にも行ってみたい!」
「メロン先輩……今度はふざけないで、ちゃんとした場所にしてくださいね……」
明夏は満足した様子だったが、真雪はまだちょっと不機嫌そうだった。
「最後の一つは『理想の恋人と出会える場所』と言われる教室。そこは夢の世界につながっていて、自分の理想とする異性が現れるという話があるらしいよ」
「えーっ……メロン先輩。それはいくら真雪でも信じない……」
明夏がちらっと真雪の方を見た。
真雪は赤面して、体をくねるように動かしている。
「えへぇ。明夏ちゃん、どうしたの? 私の顔をじっと見たりしてぇ」
「いや、別に……」
真雪があまりにも嬉しそうなので、明夏は何も言わなかった。
「でもね、この教室は一人ずつしか入れないようになってるの。……ということで、まずは誰が行く?」
「はいっ!」
迷うことなく、真雪がびしっと垂直に手を挙げた。
「お、真雪ちゃんやる気あるねえ。じゃあ、最初に行ってみるかい? ヒッヒッヒ」
「はい! お願いします!」
「真雪、あんた……」
明夏には、メロン先輩が童話に出てくる悪い魔女に見えてきた。
メロン先輩は教室の鍵を開けて、真雪に扉の前の場所を譲る。
「いい? 真雪ちゃん。『私の理想の男の子、出てきて~!』って大声で言いながら開けるんだよ。そうしないと、夢の世界には通じないから」
「はいっ!」
はっきりとしたいい返事が返ってきた。
「じゃ。先に行ってくるよ、明夏ちゃん。私、素敵な恋人をゲットしてくる」
「いってらっしゃい。相手がどんな人だったか、結果を楽しみにしてるよ……」
真雪が扉に手を置く。
そして、
「私の理想の男の子、出てきて~!」
廊下の隅まで響きそうな大きな声を出して、真雪は扉を開けた。
教室の中に入っていった真雪は、目をぱちくりさせる。
「……あれ? ここって、普通の教室……」
周囲を見回してみるが、人は誰もいない。
掃除用具入れやカーテンの裏など、教室内を隅々まで探してみたが、やはり理想の男の子はどこにもいなかった。
真雪は不思議に思って、廊下に戻ってきた。
「……あの~、先輩。誰もいなかったんですけど」
「そっか~。じゃあ真雪ちゃんには理想の恋人は現れないってことかな」
「そんな馬鹿な!」
「真雪……。あんた、人から騙されないように注意した方がいいよ……」
結局、さっきの話はメロン先輩のじょうだんということがわかり、真雪はさすがにふてくされてしまった。
「……メロン先輩、どうしましょう。真雪ってば、『もう帰る』って言い出してますけど」
「あちゃ~、ちょっとやりすぎちゃったね。ごめん、真雪ちゃん。あとでアイスおごるから許して」
「アイス……?」
真雪はメロン先輩の方をちらっと見る。
メロン先輩は手を合わせて謝っている。
「ま、まあ。……そこまで謝られたら、許してあげないわけにはいかないです」
「本当? さっすが真雪ちゃん。話がわかる」
「先輩、真雪はアイスにつられただけだと思うけど」
明夏が真雪に聞かれないように、ひそひそ声で言った。
「あ、やっぱり? ま、でもそこが真雪ちゃんのいいところよね」
「……」
三つの教室をまわってみたが、結局、隠れ部室になりそうな場所は見つからなかった。
時間が遅くなってきたので、今日はもう帰ることにした。
「部室探し、なかなか難しいね。今度はもっと良さそうな場所を見つけておくよ」
「いやー、でも今日は楽しかったな。またアーケードゲームのある教室にも行ってみたい!」
「メロン先輩……今度はふざけないで、ちゃんとした場所にしてくださいね……」
明夏は満足した様子だったが、真雪はまだちょっと不機嫌そうだった。