第34話 学校の宿直室

文字数 1,448文字

 宿直室の場所がわからなかった真雪は、メロン先輩についてきてもらうことになった。
 場所は一階にある職員室の近くだった。

「ここがレトロゲーム部のあるところか。ぜんぜんわからないわけだよ……」

 ドアにある白いボードには宿直室と書かれている。
 それ以外のことは何も書いてないので、誰もここにレトロゲーム部があるとは思わないだろう。

「この学校にはあまり知られていない部活動がたくさんあるからねえ。オンエア部だってそうでしょ?」
「ま、まあ。そうなんですが……」

 オンエア部の部室も、いまでは扉に第二放送室としか書かれていない。
 知らない人が見ても、オンエア部の部室とは思わないだろう。

「じゃあ、入ってみようか。あ、真雪ちゃん、ノックする?」
「私こういうのは緊張してちょっと……」
「もう、遠慮しなくていいのに。わかった、私がやったげるよ」

 メロン先輩はドアをノックして扉を開けた。

「こんちはー。レトロゲーム部さんいますかー?」

 しばらくすると、中から牛乳瓶の底のようなメガネをかけた男子生徒が出てきた。

「ひょ。女子が二人? こんなむさくるしいところに、いったい何か用っすか?」
「この子の友だちが来てるんじゃないかって思って。名前は……」
「明夏ちゃんです! よくレトロゲーム部に遊びに来てるって言ってたけど」
「ほほぉ。明夏二等兵っすね。彼女ならもう帰ったっすよ。なんでも、つまらない用事があるとか言って」
「そ、そうですか……。ありがとうございます」
「ちょっと待ってっす!」

 真雪が扉を閉めようとすると、男子生徒が扉に自分の足を挟んで止めた。

「明夏二等兵のフレンドたち。もし時間があるなら、一緒にゲームで遊んでいかないっすか? みんなでわいわい遊べるパーティゲームとかもあるっすよ?」
「え……でも。私、明夏ちゃんを捜してる途中なので遊べないんです」
「そこを何とか! 明夏二等兵が途中で帰ってしまったから、一人でつまらなくなっちゃったんすよ」
「ごめん、私たち先を急ぐから。今度また遊びに来るから、そのときはよろしく」

 メロン先輩が真雪をフォローしてくれた。

「……そうすか。それは残念っすね。仕方がないから、一人で硬派な激ムズアクションゲームの続きでもやっておくっす……」

 寂しそうな表情で、男子生徒は宿直室の中に戻っていった。

「かわいそうなことしちゃったかな……」
「ま、今度明夏ちゃんと一緒に遊びに来れば、彼も喜ぶでしょ」

 明夏が用事で帰ってしまったとわかったので、二人も家に帰ることにした。
 靴に履き替えて、校門から出る寸前、メロン先輩が真雪に言った。

「ねえ、真雪ちゃん。さっきからずっと思ってたんだけど、明夏ちゃんに電話してみれば居場所がわかるんじゃない?」
「電話……あーーーっ!」

 メロン先輩の言葉で、真雪はようやく気がついた。
 そして、大急ぎで携帯を取り出す。

「そ、そうだよ! 電話すればわかるじゃない! メロン先輩、すごい名推理です!」
「真雪ちゃん、本当に今まで気がつかなかったの?」

 さっそく真雪は、明夏に電話をしてみた。

 プルルル……。
 カチャ。

「電波が届かない、もしくは電源が入っていないのでつながりません」

 ピッ。

「どうだった?」
「明夏ちゃんの携帯、電源が切れてるみたいです。三回に一回はこうなります」
「そうなんだ。明夏ちゃんって謎が多いみたいだね……」

 結局、今日は明夏と会うことはできなかった。
 でも、明夏を捜していたおかげでメロン先輩と出会うことができたので、とってもいい日だったと思った。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

真雪(まゆき)


主人公。

ちょっと人見知りする高校一年生。

明夏(めいか)


真雪の親友。

活発でレトロゲームが好き。

日菜(ひな)


真雪のクラスメイト。

ちょっと変な性格で語尾が変。特技は自己流の落語。

樹々(じゅじゅ)


オンエア部の部長。

いつも冷静でクールな先輩。

メロン先輩


真雪に親切にしてくれる謎が多い先輩。

自由気ままな人。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み