第56話 真雪の練習オンエア
文字数 1,384文字
どうしよう。
ついに私の番になっちゃったよ。
真雪はすっと立ち上がった。
カチコチになった手足を動かしながら、特設放送席の方に歩いていく。
その様子を見て、日菜と樹々は前よりも心配になってきた。
「先輩。ゆきちゃんがもう緊張してるみたいどすえ」
「真雪さんにとっては、今は慣れることが必要ね。日菜さんも応援してあげてね」
「そうっすか! ゆきちゃんふぁいとー!」
長い長い時間をかけて、ようやく特設放送席に座った真雪。
すでに緊張で周りの声が聞こえなくなっていた。
どうしよう。
みんな見てる。
私が見られてる。
やだ、とても恥ずかしい。
「……先輩。ゆきちゃんが、固まってしまったのですたい」
「しっ、黙って。何か言おうとしているわ」
樹々が日菜が喋ろうとするのを止めた。
真雪は相変わらず固まっていたが、しばらくすると、口元がぴくっと動いた。
「………………あ」
真雪が何か言いかけている。
「………………の」
手を震わせながら、上にあげていく。
「………………ね」
ぷしゅー。
風船の空気が抜けたように、真雪の体から力が抜けていく。
真雪はそのままテーブルの上に突っ伏してしまった。
「ああっ、先輩! ゆきちゃんが変な感じにしぼんでいったっすよ!」
「真雪さん、しっかりして!」
二人が真雪の元へ駆け込む。
うつ伏せになった真雪は、ぴくりとも動かなかった。
「ふっ、ふふっ? ……わたし、まゆき! ゆめはすてきなまどうし!」
「先輩! ゆきちゃんがなんか変になってるにょ!」
「困ったわね……」
真雪は混乱していた。
仕方ない、といった感じで、樹々は真雪の後ろに立った。
そして、
どっ!
樹々は真雪の背後から、肩の辺りを45度の角度からチョップした。
真雪は一瞬びくっとなって、動かなくなった。
しばらくして、
「……はっ! 今まで私はなにを……」
起きあがってきた真雪は、なぜか正気に戻っていた。
「すごいですのん! 先輩、何をやったにょろ?」
「テレビとかが映らなくなったら、たたいたら直ることがあるでしょ? あれと同じよ」
「私はテレビですか……」
真雪はそれで元に戻ったことが、ちょっとショックだった。
「さ、続けましょう。真雪さん、緊張しなくなるには練習あるのみです」
「はい……」
それから、真雪は何度も練習してみた。
だが、やはり見られて恥ずかしいという気持ちが強い。
なかなか上手にはならないので、真雪はだんだん気持ちが落ち込んできた。
「あぁ~、私ってオンエアに向いてないのかなぁ……」
「真雪さん、大丈夫よ。最初に比べたら少しずつ上達してるから。経験を積めば、緊張しないでできるようになるわ」
「先輩……」
樹々が真雪を励ました。
真雪は少しだけ気持ちが軽くなり、やる気も出てきた。
「これからしばらくの間、放課後にここで練習しましょう?」
「……ということはここが部室になった感じですかにゅ!? 部長の勉強部屋が部室とは、これまた意外な場所だすね」
「そうね。部室もなくなっちゃったし、ここを部室がわりにしましょうか。公開生オンエアができるようになるまで、みんなで張り切っていくわよ」
「おおー!」
「はーい」
これで、長かった部室探しもようやく終わりを迎えた。
次の目標、公開オンエアへと歩き始めたオンエア部。
真雪も、公開オンエアができるようになりたいと、前向きに思うようになってきた。
ついに私の番になっちゃったよ。
真雪はすっと立ち上がった。
カチコチになった手足を動かしながら、特設放送席の方に歩いていく。
その様子を見て、日菜と樹々は前よりも心配になってきた。
「先輩。ゆきちゃんがもう緊張してるみたいどすえ」
「真雪さんにとっては、今は慣れることが必要ね。日菜さんも応援してあげてね」
「そうっすか! ゆきちゃんふぁいとー!」
長い長い時間をかけて、ようやく特設放送席に座った真雪。
すでに緊張で周りの声が聞こえなくなっていた。
どうしよう。
みんな見てる。
私が見られてる。
やだ、とても恥ずかしい。
「……先輩。ゆきちゃんが、固まってしまったのですたい」
「しっ、黙って。何か言おうとしているわ」
樹々が日菜が喋ろうとするのを止めた。
真雪は相変わらず固まっていたが、しばらくすると、口元がぴくっと動いた。
「………………あ」
真雪が何か言いかけている。
「………………の」
手を震わせながら、上にあげていく。
「………………ね」
ぷしゅー。
風船の空気が抜けたように、真雪の体から力が抜けていく。
真雪はそのままテーブルの上に突っ伏してしまった。
「ああっ、先輩! ゆきちゃんが変な感じにしぼんでいったっすよ!」
「真雪さん、しっかりして!」
二人が真雪の元へ駆け込む。
うつ伏せになった真雪は、ぴくりとも動かなかった。
「ふっ、ふふっ? ……わたし、まゆき! ゆめはすてきなまどうし!」
「先輩! ゆきちゃんがなんか変になってるにょ!」
「困ったわね……」
真雪は混乱していた。
仕方ない、といった感じで、樹々は真雪の後ろに立った。
そして、
どっ!
樹々は真雪の背後から、肩の辺りを45度の角度からチョップした。
真雪は一瞬びくっとなって、動かなくなった。
しばらくして、
「……はっ! 今まで私はなにを……」
起きあがってきた真雪は、なぜか正気に戻っていた。
「すごいですのん! 先輩、何をやったにょろ?」
「テレビとかが映らなくなったら、たたいたら直ることがあるでしょ? あれと同じよ」
「私はテレビですか……」
真雪はそれで元に戻ったことが、ちょっとショックだった。
「さ、続けましょう。真雪さん、緊張しなくなるには練習あるのみです」
「はい……」
それから、真雪は何度も練習してみた。
だが、やはり見られて恥ずかしいという気持ちが強い。
なかなか上手にはならないので、真雪はだんだん気持ちが落ち込んできた。
「あぁ~、私ってオンエアに向いてないのかなぁ……」
「真雪さん、大丈夫よ。最初に比べたら少しずつ上達してるから。経験を積めば、緊張しないでできるようになるわ」
「先輩……」
樹々が真雪を励ました。
真雪は少しだけ気持ちが軽くなり、やる気も出てきた。
「これからしばらくの間、放課後にここで練習しましょう?」
「……ということはここが部室になった感じですかにゅ!? 部長の勉強部屋が部室とは、これまた意外な場所だすね」
「そうね。部室もなくなっちゃったし、ここを部室がわりにしましょうか。公開生オンエアができるようになるまで、みんなで張り切っていくわよ」
「おおー!」
「はーい」
これで、長かった部室探しもようやく終わりを迎えた。
次の目標、公開オンエアへと歩き始めたオンエア部。
真雪も、公開オンエアができるようになりたいと、前向きに思うようになってきた。