第76話 空き教室の掃除
文字数 1,740文字
その日の真雪はついてなかった。
「はぁ、どうしてこうなるのか……」
放課後みんなが下校していく中、真雪は掃除道具を持って空き教室へ向かっていた。
今日はクラスのくじで、普段掃除をしない空き教室の掃除をする人を決めた。
空き教室はたくさんあるが、一年生のそれぞれのクラスから一人ずつ、一つの教室を掃除することになっていた。
そのくじのたった一つのはずれを、真雪が見事に当ててしまった。
クラス内では、真雪はじゃんけん王に勝って運を使い果たしたとか、逆に一つを当てるとは運がいいとか、さんざんの言われようだった。
そういえば、じゃんけん王に勝ってからあんまりいいことがないな。
私、本当に運がなくなってるのかもしれない……。
そう思うこともたまにある。
「ここかぁ。教室からかなり遠い教室だなぁ……」
真雪がやってきたのは、四階のいちばん隅にある空き教室。
先生からもらった鍵で扉を開けて、中に入る。
するとそれは、どこかで見たような景色だった。
「あれ? この教室は確か以前にも」
真雪は教室内をよーく見回してみる。
運動会や文化祭で使われるであろう小道具が置かれていて、古いマイクやカメラなどが積まれて置かれていた。
「ここってもしかして、オンエア部の新しい部室を探していたときに来た教室……」
真雪がマイクを使って、アイドルの真似をやったのがこの教室だった。
思い出して、ちょっと恥ずかしくなる。
「ここを掃除するのかぁ。一人だと時間がかかりそう」
まずは教室全部のカーテンと窓を全開に開けた。
道具類が置かれている場所は後回しにして、真雪はできるところからほうきで掃き始める。
サッサッサッ。
道具のある所から何もないところに埃を集めていき、一カ所に集めたところで、ちりとりですくっていく。
そのあと、ぞうきんでから拭きまで終わらせた。
「ふぅ、これで床掃除は終わったよ。次は……黒板かな」
黒板に書かれた落書きを丁寧に消していく。
それから、ぞうきんをぬらしてきて、窓ガラスをきれいにした。
気がつけば一時間は経過していた。
「終わった……。もういいよね。これ以上は無理かも……」
一人で終わらせた満足感に浸って、真雪は教壇のところに座った。
最初に入ってきた時に比べて、段違いできれいになっていた。
「……」
目をつむって思い出す。
数ヶ月前、オンエア部の部室を探していたころのこと。
あのときは大変だったけど、楽しかったなぁ。
アイドルの真似をしてたのを明夏ちゃんに見られたのは恥ずかしかったけど。
あ、そういえばここには妖精さんがいたんだっけ。
まだいるのかな、あの妖精さん。
真雪は道具がたくさん置いてある、教室の後ろのほうに移動した。
「たしかこっちのほうから声がしてきたんだよね。妖精さーん、いますか?」
「……」
返事はない。
何度か呼びかけてみたが、結果は同じだった。
「やっぱりいないのかなぁ。……あ、もしかして、どこかに妖精界につながる扉があるのかも?」
真雪が道具を漁って、妖精界につながる扉を探し始める。
だが、それらしきものはまったく見当たらなかった。
「……なーんてね。いつもここに妖精さんがいるわけがないよね。あのときは妖精さんがたまたまここにいて、ラッキーだったんだよ」
妖精の存在自体は否定しないらしい。
さっき漁った道具を戻そうとしたとき、
「……あれ? なんだろう。たくさんある」
いちばん奥に、ビデオテープらしきものがたくさん並んで置かれていた。
気になった真雪は、道具をはねのけて、ビデオテープのところまでやってきた。
埃をはらって、それを一つ、手に取ってみる。
「背表紙になにか書いてある。なになに……」
それを見て、真雪はドキッとした。
「……オンエア部……活動記録……?」
他のテープも確認してみた。
同じように、オンエア部、活動記録と書かれたテープがたくさんあった。
以前、この教室は昔のオンエア部が使っていたという話を聞いた。
だとしたら、このテープはそのときの活動記録かもしれない。
「昔のオンエア部……。昔は放送室を使ってなかったって聞いたけど、どうやって活動してたんだろう?」
真雪は、そのテープにどんな映像が残されているのか、すごく気になった。
「はぁ、どうしてこうなるのか……」
放課後みんなが下校していく中、真雪は掃除道具を持って空き教室へ向かっていた。
今日はクラスのくじで、普段掃除をしない空き教室の掃除をする人を決めた。
空き教室はたくさんあるが、一年生のそれぞれのクラスから一人ずつ、一つの教室を掃除することになっていた。
そのくじのたった一つのはずれを、真雪が見事に当ててしまった。
クラス内では、真雪はじゃんけん王に勝って運を使い果たしたとか、逆に一つを当てるとは運がいいとか、さんざんの言われようだった。
そういえば、じゃんけん王に勝ってからあんまりいいことがないな。
私、本当に運がなくなってるのかもしれない……。
そう思うこともたまにある。
「ここかぁ。教室からかなり遠い教室だなぁ……」
真雪がやってきたのは、四階のいちばん隅にある空き教室。
先生からもらった鍵で扉を開けて、中に入る。
するとそれは、どこかで見たような景色だった。
「あれ? この教室は確か以前にも」
真雪は教室内をよーく見回してみる。
運動会や文化祭で使われるであろう小道具が置かれていて、古いマイクやカメラなどが積まれて置かれていた。
「ここってもしかして、オンエア部の新しい部室を探していたときに来た教室……」
真雪がマイクを使って、アイドルの真似をやったのがこの教室だった。
思い出して、ちょっと恥ずかしくなる。
「ここを掃除するのかぁ。一人だと時間がかかりそう」
まずは教室全部のカーテンと窓を全開に開けた。
道具類が置かれている場所は後回しにして、真雪はできるところからほうきで掃き始める。
サッサッサッ。
道具のある所から何もないところに埃を集めていき、一カ所に集めたところで、ちりとりですくっていく。
そのあと、ぞうきんでから拭きまで終わらせた。
「ふぅ、これで床掃除は終わったよ。次は……黒板かな」
黒板に書かれた落書きを丁寧に消していく。
それから、ぞうきんをぬらしてきて、窓ガラスをきれいにした。
気がつけば一時間は経過していた。
「終わった……。もういいよね。これ以上は無理かも……」
一人で終わらせた満足感に浸って、真雪は教壇のところに座った。
最初に入ってきた時に比べて、段違いできれいになっていた。
「……」
目をつむって思い出す。
数ヶ月前、オンエア部の部室を探していたころのこと。
あのときは大変だったけど、楽しかったなぁ。
アイドルの真似をしてたのを明夏ちゃんに見られたのは恥ずかしかったけど。
あ、そういえばここには妖精さんがいたんだっけ。
まだいるのかな、あの妖精さん。
真雪は道具がたくさん置いてある、教室の後ろのほうに移動した。
「たしかこっちのほうから声がしてきたんだよね。妖精さーん、いますか?」
「……」
返事はない。
何度か呼びかけてみたが、結果は同じだった。
「やっぱりいないのかなぁ。……あ、もしかして、どこかに妖精界につながる扉があるのかも?」
真雪が道具を漁って、妖精界につながる扉を探し始める。
だが、それらしきものはまったく見当たらなかった。
「……なーんてね。いつもここに妖精さんがいるわけがないよね。あのときは妖精さんがたまたまここにいて、ラッキーだったんだよ」
妖精の存在自体は否定しないらしい。
さっき漁った道具を戻そうとしたとき、
「……あれ? なんだろう。たくさんある」
いちばん奥に、ビデオテープらしきものがたくさん並んで置かれていた。
気になった真雪は、道具をはねのけて、ビデオテープのところまでやってきた。
埃をはらって、それを一つ、手に取ってみる。
「背表紙になにか書いてある。なになに……」
それを見て、真雪はドキッとした。
「……オンエア部……活動記録……?」
他のテープも確認してみた。
同じように、オンエア部、活動記録と書かれたテープがたくさんあった。
以前、この教室は昔のオンエア部が使っていたという話を聞いた。
だとしたら、このテープはそのときの活動記録かもしれない。
「昔のオンエア部……。昔は放送室を使ってなかったって聞いたけど、どうやって活動してたんだろう?」
真雪は、そのテープにどんな映像が残されているのか、すごく気になった。