第77話 異常接近 Near‐miss
文字数 1,463文字
「突然?」
ジョンは、『監視社会の地図』を持っている。一キロ手前からは、誰が来ているかも分かる。突然、近寄られるはずがない。
「ううう」
ジョンは一瞬、老人特有の突発性うめき声を出した。
「KOKだ。間違いない」
KOK。ならば、突然現れたということも納得できる。もしかしたら、突然攻撃できる能力を持っているかもしれない。油断はできない。ニーチェは、すぐに聖剣『ノートゥング』を発動させた。
Fを発動させるには、オーラを消費する。FDならば尚更だ。消費量を抑えるため、普通は必要な時にしか発動させない。だが、ニーチェは、『ニーベルングの指環』の効果で、劇的に自分が強化されている。オーラの量に、制限などない。
ニーチェは、応戦準備を整えた。
「KOKのどなたがいらっしゃったか、お分かりですか?」
ジョンはうなづいた。
「分かる。ヤマナカから教えてもらった奴らだ。仮面をつけたアジア人と、サングラスのゴツいロシア人……。確か……。そうだ。インポスターのカトゥーと、スカラーのミハエルだ。間違いない。彼らは前回、カミーラを屠った一団にいた。強敵だぞ」
カトゥーか。ニーチェが狙っている相手の一人だ。ここで倒せれば、ヤマナカに恩を返すことができる。
ニーチェは迷った。確かに、今の自分の実力には自信がある。相手には、ヤマナカの『オウルキャンセル』も無い。負ける可能性が見つからない。だが、もしそれでも負けてしまったら、全ての計画は崩れてしまう。
自分は、衆目の前で、ゲーテに殺されなければならないのだ。
ニーチェは、勝敗の可能性を考えた。
前回のKOKは、六人一組でやって来た。ということは、古城に討伐をしにくるとしたら、その時も、六人前後に違いない。だが、今はたった二人。おそらく、緊急でやって来たのだろう。ということは、準備が不十分かもしれない。自ら罠にハマりに来たようなものかもしれない。千載一遇の好機かもしれない。しかし、逆に、それが罠だったら……。
迷う。ジョンに位置を探ってもらいながら、なおも考える。
だが、KOKの二人がどこに向かっているかが分かった瞬間、ニーチェの行動は決定された。カトゥーとミハエルの目的は、ニーチェたちの馬車だった。馬車を壊されたり、荷台を漁られては困る。馬車は、作戦の要の一つだ。この後の計画に支障が出る。
ちょうどいい。ならば、殺る時は今! ニーチェとジョンは、急いで、自分たちの馬車へと向かった。注意して進むカトゥーたちとは違い、現状を理解している分、一足早く、馬車へとたどりつく。
馬車は無事だった。KOKと戦う覚悟もできている。銃を握りしめたジョンが、ニーチェに合図を送る。角を曲がったところには、すでに、カトゥーとミハエルが潜んでいるという。
だが、KOKの二人は姿を見せない。建物の影から出てこない。ニーチェの姿を見せて、ニーチェも視認しなければ、『エリクシール・ポワゾン』の幻覚は発動しない。
まだか。まだだろうか。
「消えた」ジョンがつぶやいた。
KOKの二人は、何やら話し合った後、ニーチェの知らない錬金術を使用して、本部から消え去っていったようだ。
「完全に、この一キロ圏内にはいなくなったようだ」 ジョンがFDで確認したが、KOKの行き先は分からない。
一体なんだったのだろうか。ニーチェは、計画にケチをつけられたような気がした。だが、『ニーベルングの指環』の効果は、自分を神だと思わせてくれる。
「まぁ、いいでしょう」
問題はなかった。ニーチェはゆっくりと、馬車の鎧に足をかけた。
ジョンは、『監視社会の地図』を持っている。一キロ手前からは、誰が来ているかも分かる。突然、近寄られるはずがない。
「ううう」
ジョンは一瞬、老人特有の突発性うめき声を出した。
「KOKだ。間違いない」
KOK。ならば、突然現れたということも納得できる。もしかしたら、突然攻撃できる能力を持っているかもしれない。油断はできない。ニーチェは、すぐに聖剣『ノートゥング』を発動させた。
Fを発動させるには、オーラを消費する。FDならば尚更だ。消費量を抑えるため、普通は必要な時にしか発動させない。だが、ニーチェは、『ニーベルングの指環』の効果で、劇的に自分が強化されている。オーラの量に、制限などない。
ニーチェは、応戦準備を整えた。
「KOKのどなたがいらっしゃったか、お分かりですか?」
ジョンはうなづいた。
「分かる。ヤマナカから教えてもらった奴らだ。仮面をつけたアジア人と、サングラスのゴツいロシア人……。確か……。そうだ。インポスターのカトゥーと、スカラーのミハエルだ。間違いない。彼らは前回、カミーラを屠った一団にいた。強敵だぞ」
カトゥーか。ニーチェが狙っている相手の一人だ。ここで倒せれば、ヤマナカに恩を返すことができる。
ニーチェは迷った。確かに、今の自分の実力には自信がある。相手には、ヤマナカの『オウルキャンセル』も無い。負ける可能性が見つからない。だが、もしそれでも負けてしまったら、全ての計画は崩れてしまう。
自分は、衆目の前で、ゲーテに殺されなければならないのだ。
ニーチェは、勝敗の可能性を考えた。
前回のKOKは、六人一組でやって来た。ということは、古城に討伐をしにくるとしたら、その時も、六人前後に違いない。だが、今はたった二人。おそらく、緊急でやって来たのだろう。ということは、準備が不十分かもしれない。自ら罠にハマりに来たようなものかもしれない。千載一遇の好機かもしれない。しかし、逆に、それが罠だったら……。
迷う。ジョンに位置を探ってもらいながら、なおも考える。
だが、KOKの二人がどこに向かっているかが分かった瞬間、ニーチェの行動は決定された。カトゥーとミハエルの目的は、ニーチェたちの馬車だった。馬車を壊されたり、荷台を漁られては困る。馬車は、作戦の要の一つだ。この後の計画に支障が出る。
ちょうどいい。ならば、殺る時は今! ニーチェとジョンは、急いで、自分たちの馬車へと向かった。注意して進むカトゥーたちとは違い、現状を理解している分、一足早く、馬車へとたどりつく。
馬車は無事だった。KOKと戦う覚悟もできている。銃を握りしめたジョンが、ニーチェに合図を送る。角を曲がったところには、すでに、カトゥーとミハエルが潜んでいるという。
だが、KOKの二人は姿を見せない。建物の影から出てこない。ニーチェの姿を見せて、ニーチェも視認しなければ、『エリクシール・ポワゾン』の幻覚は発動しない。
まだか。まだだろうか。
「消えた」ジョンがつぶやいた。
KOKの二人は、何やら話し合った後、ニーチェの知らない錬金術を使用して、本部から消え去っていったようだ。
「完全に、この一キロ圏内にはいなくなったようだ」 ジョンがFDで確認したが、KOKの行き先は分からない。
一体なんだったのだろうか。ニーチェは、計画にケチをつけられたような気がした。だが、『ニーベルングの指環』の効果は、自分を神だと思わせてくれる。
「まぁ、いいでしょう」
問題はなかった。ニーチェはゆっくりと、馬車の鎧に足をかけた。