第72話 宴(1) Banquet
文字数 1,526文字
幻影のニーチェに斬りかかった錬金術師は、すぐに、他の錬金術師によって足首を斬られた。男は振り返りざま、仲間に斬り返す。
大会議室の中では、同士討ちが始まった。場所は、一箇所だけではない。次々に、近くの者同士での殺し合いが始まる。『エリクシール・ポワゾン』により、お互いがニーチェに見えているのだ。
『ニーベルングの指環』は、四日間かけて持ち主の力を増大させるFDSだ。愛を捨てるというハードルの高い発動条件をクリアできれば、四日目が終わると無敵になることができる。発動したての今は、無敵とまではいかないが、普段のニーチェの十倍以上のオーラ量が溢れ出している。
普段、『エリクシール・ポワゾン』を使用しても、ここまでの人数に、同時に、大規模な幻影を見させることは難しい。だが、『ニーベルングの指環』を発動させた今なら、話は別だ。たくさんのFDの同時使用も、過剰使用も、効果の増大も、全てが可能になっている。
ニーチェは、幻影の『ノートゥング』を振り翳して指示をしているアンドレーエの首筋に、『ダスティネイル』を突き刺した。この男が、全ての元凶だ。だが、ニーチェには、もはや、愛がない。同様に、復讐心も無くなっている。行動に、価値など求めない。ただ、行動をするだけだ。
アンドレーエのミイラは、そのまま、壇上に置かれた机の上に突っ伏して置かれた。
ニーチェは、大会議室を見回した。各地で同士討ちが起きている。もちろん、戦略的撤退をとろうとしている、弱くて賢い者たちもいた。だが、逃げている相手を仕留めることは簡単だ。後ろから『ダスティネイル』を突き刺す。それだけだ。
アンドレーエの血で薔薇を咲かせたニーチェは、すでに、『ノートゥング』を使用することもできる。周囲三メートル以内の絶対回避能力により、流れ弾のような攻撃が当たる偶然もない。大会議室の入口周りには、次々と、弱者のミイラが転がっていった。
激しい争いと阿鼻叫喚は、大会議室の外には聞こえない。ニーチェは、赤い薔薇を次々と自分の体に咲かせながら、落ちている彼らのFDを、骨董屋の親父のように、目を細めながら拾っていった。
まだ、同士討ちは続いている。彼らは口々に、「同士討ちは止めろ!」「これは幻覚だ!」「目を覚ませ!」と叫び合っている。だが、攻撃される幻覚を見させると、必ず、どちらかが攻撃を仕返している。どちらも仕返さない賢い参加者には、後ろから『ダスティネイル』を指していく。その度に、ニーチェの体に、大輪の薔薇が咲いていった。
三十分後、大会議室の中には、大量のミイラが転がっていた。
「んんー。これではいけませんねぇ。せっかく、お友達を招待するのです。この部屋は、綺麗に片付いていなければ」ニーチェは、すでに、壊れていた。
「彼はここ。彼は確か、ここでしたね」ミイラを拾い上げては、次々と、元々座っていた席に置き直す。
ジョンは、持ってきていた大きなトランクを広げた。中には、大量の銃火器が入っている。それらを全て取り出し、幹部から手に入れたFを、カバンに仕舞い込む。貴重なFもあるが、今は、使用する必要がない。
こうして、ニーチェとジョンは、お互い、趣味のようにして、戦いの終わった戦場の後片付けを終えた。大会議室は静かになった。ニーチェには、復讐心などとうにない。だが、なぜか笑いが止まらない。
「オポ、オポ、オーッポッポッポッポ」自分の口から、聞いたことのない高笑いが聞こえてくる。
だが、作戦はまだ、終わっていない。次は、本部の制圧だ。ゲーテが帰ってくるまで、残りは大体、後、二時間。それまでに全てを終わらせなければならない。
ニーチェは、結界を解除し、大会議室の把手に手をかけた。
大会議室の中では、同士討ちが始まった。場所は、一箇所だけではない。次々に、近くの者同士での殺し合いが始まる。『エリクシール・ポワゾン』により、お互いがニーチェに見えているのだ。
『ニーベルングの指環』は、四日間かけて持ち主の力を増大させるFDSだ。愛を捨てるというハードルの高い発動条件をクリアできれば、四日目が終わると無敵になることができる。発動したての今は、無敵とまではいかないが、普段のニーチェの十倍以上のオーラ量が溢れ出している。
普段、『エリクシール・ポワゾン』を使用しても、ここまでの人数に、同時に、大規模な幻影を見させることは難しい。だが、『ニーベルングの指環』を発動させた今なら、話は別だ。たくさんのFDの同時使用も、過剰使用も、効果の増大も、全てが可能になっている。
ニーチェは、幻影の『ノートゥング』を振り翳して指示をしているアンドレーエの首筋に、『ダスティネイル』を突き刺した。この男が、全ての元凶だ。だが、ニーチェには、もはや、愛がない。同様に、復讐心も無くなっている。行動に、価値など求めない。ただ、行動をするだけだ。
アンドレーエのミイラは、そのまま、壇上に置かれた机の上に突っ伏して置かれた。
ニーチェは、大会議室を見回した。各地で同士討ちが起きている。もちろん、戦略的撤退をとろうとしている、弱くて賢い者たちもいた。だが、逃げている相手を仕留めることは簡単だ。後ろから『ダスティネイル』を突き刺す。それだけだ。
アンドレーエの血で薔薇を咲かせたニーチェは、すでに、『ノートゥング』を使用することもできる。周囲三メートル以内の絶対回避能力により、流れ弾のような攻撃が当たる偶然もない。大会議室の入口周りには、次々と、弱者のミイラが転がっていった。
激しい争いと阿鼻叫喚は、大会議室の外には聞こえない。ニーチェは、赤い薔薇を次々と自分の体に咲かせながら、落ちている彼らのFDを、骨董屋の親父のように、目を細めながら拾っていった。
まだ、同士討ちは続いている。彼らは口々に、「同士討ちは止めろ!」「これは幻覚だ!」「目を覚ませ!」と叫び合っている。だが、攻撃される幻覚を見させると、必ず、どちらかが攻撃を仕返している。どちらも仕返さない賢い参加者には、後ろから『ダスティネイル』を指していく。その度に、ニーチェの体に、大輪の薔薇が咲いていった。
三十分後、大会議室の中には、大量のミイラが転がっていた。
「んんー。これではいけませんねぇ。せっかく、お友達を招待するのです。この部屋は、綺麗に片付いていなければ」ニーチェは、すでに、壊れていた。
「彼はここ。彼は確か、ここでしたね」ミイラを拾い上げては、次々と、元々座っていた席に置き直す。
ジョンは、持ってきていた大きなトランクを広げた。中には、大量の銃火器が入っている。それらを全て取り出し、幹部から手に入れたFを、カバンに仕舞い込む。貴重なFもあるが、今は、使用する必要がない。
こうして、ニーチェとジョンは、お互い、趣味のようにして、戦いの終わった戦場の後片付けを終えた。大会議室は静かになった。ニーチェには、復讐心などとうにない。だが、なぜか笑いが止まらない。
「オポ、オポ、オーッポッポッポッポ」自分の口から、聞いたことのない高笑いが聞こえてくる。
だが、作戦はまだ、終わっていない。次は、本部の制圧だ。ゲーテが帰ってくるまで、残りは大体、後、二時間。それまでに全てを終わらせなければならない。
ニーチェは、結界を解除し、大会議室の把手に手をかけた。