第48話 ダビデ王の騎士団(1) KOK

文字数 1,343文字

 古城の前に、GRCの馬車が到着する。いよいよだ。ニーチェたちは、ゲーテ捕獲作戦に移った。
 最初に、前回と同じく、カミーラが古城の外に出る。一度姿を見せなければ、相手は幻術にかからないからだ。そして、幻術で、敵を古城のあちこちにバラけさせる。その後、インカムで、敵の位置をジョンに教えてもらいながら、背後からニーチェが、一人ずつ、FDS『ダスティ・ネイル』でミイラ化させる。最後に残ったゲーテを睡眠ガスで眠らせれば、この作戦は終了だ。 PSと武器を奪い、牢屋に入れた後で、血液を採る。
 これで、もし、ゲーテの血が、カミーラの毒と適合しないとしても、ゲーテはGRCの幹部だ。毒について、何か知っているに違いない。いざとなれば、GRCに対しての人質にすることもできる。
 御者はすぐに隠れた。ゲーテを含めた七人の錬金術師は、百メートルほど離れた場所から、カミーラをじっと見つめている。ニーチェは、尖塔の上にある部屋の窓の影から、カミーラの様子を伺った。インカムで、仲間に指示をするためだ。
 ニーチェは以前、クリスティアーネに、バックドアで、GRCの裏情報を見せてもらっていた。その時に、GRCの全錬金術師を記憶した。毒を生成しそうな錬金術師を調べるためだ。だが、今回の討伐隊には、ゲーテ以外、誰一人として、知っている錬金術師が見当たらない。全員が赤マントではなく、見たことのない青マントを羽織っている。
 スーツを着ているフクロウマスクの青マントが、マントの中から、一羽のフクロウを取り出した。ホー。ホー。森と古城に、フクロウの鳴き声が響き渡る。
 と、同時に、カミーラが、驚いた顔をしている。
 仮面を被った黒髪の青年が、カミーラに向かって走り出した。腰には、小さな鳥籠をぶら下げている。ゴツい白人や、筋肉の塊のような黒人も、彼の後に続く。
 少し遅れて、フクロウマスクの男と、銀仮面を被った金髪の白人。ゲーテ。最後に、お団子ツインヘアーの中国風少女が歩き出す。誰も、カミーラの幻術にかかっていないようだ。
「私のFが使えない!」地下の研究室にいるジョンの声が、ニーチェのインカムに入る。
「カミーラ。逃げながら幻術をかけるんだ。ジョンはホムンクルスを出してくれ!」
「かからないの」カミーラは、確かに幻術をかけようとしている。だが、何かによって妨害をされているようだ。
 ニーチェは、最終手段に出た。FDS『ニーベルングの指環』を使用する。この指輪は、無敵の英雄になって、世界の全てを支配できるという最強のFだ。代わりに、発動条件として、愛を失うという巨大な制約がついている。
 愛を失うだか何か知らないが、今、カミーラを失えば、愛だけ残ってもどうしようもない。彼女の危機ならば、使用するしかない。ニーチェは天才なので、判断において即決する。
「渦巻け。力よ。ラインの川底より、我に無敵の力を貸さん」オーラを注ぐ。
 だが、FDS『ニーベルングの指環』は、発動しなかった。ニーチェが、愛を失うという行為に怯えたわけではない。おそらく、この空間の全てのFが使用できなくなっているのだ。ニーチェは、お気に入りのFDF『マジシャンズコイン』で、空中に花を咲かせようとした。だが、いつものように出来ないことで確信した。
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