第17話 パソコン(2) PC
文字数 1,110文字
総務室の扉は、クリスティアーネの持っている黒いカードで開いた。電気を点ける。たくさんのPCが並んでいる中から、一つの席に座る。PCを立ち上げ、検索機能を使用する。
「カミーラカミーラ。あっ、あった。えっと……、一週間前ね。バルサーモ家に引き渡したと書いてあるわん」
ニーチェも覗き込んだ。確かにモニターには、そう書いてある。日付も、ゲーテが彼らにホムンクルスを渡した日と同じだ。
「それ以降のことは書いてないか?」
「それ以降? ないわねぇ。これで解決してるわよん」
「そうか」ニーチェは、髪をかき上げて考えた。
情報を隠している。間違いない。ニーチェは、カミーラの行方に対して、不安で仕方がなくなった。もしかしたら、この情報は本当で、自分たちとは別のルートで、本物のカミーラを、彼らに横流ししたのかもしれない。これは、自分の目で、カミーラの安全を確認しなければいけない。
クリスティアーネは、心配そうな顔をして、歯切れ悪く、別の可能性についても話してくれた。
「バックドアを使えば、本部や幹部用のデータに侵入できるわん。そしたら、何か新しい情報が分かるかもしれない」
団員としての権限を越えた行為だ。クリスティアーネは、ニーチェの切なそうな顔に、我慢ができなかった。規則違反に手を染めようとしている。だが、ニーチェは、カミーラのことしか考えていない。クリスティアーネの気持ちなど、考えてすらいない。ただ、親切だなとは感じていた。
「何か方法があるのか? 頼む。何としても知りたい」
クリスティアーネは、決心した目つきでうなづき、ニーチェのために、二十分ほどかけて、プログラムを打ち込んだ。
「これで入れるはず、と。ほら。入れたわ。後は、カミーラの記録ねん」クリスティアーネは、急いでページをスクロールしていく。
「あ。あった。これかしらん?」クリスティアーネは、カミーラの記事を白黒反転して、分かりやすくしてニーチェに見せた。
『被験体K。バルサーモ家に依頼達成を知らせた後、第二研究所へと移送。アルカディアン研究として使用する』
文字を読んだ瞬間、ニーチェは、例えようの無い気持ち悪さに襲われた。アンドレーエの目をまともに見た時と同じ感覚だ。何度読み返しても、間違いない。逃す、ではない。実験動物として使用する、と書いてある。
感情が思考を超えた。ニーチェは、何も考えられなかった。身体中がボーッとした熱気に襲われながらも、無有病者のように第一研究所の外に出て、停まっている車に乗った。カミーラ。カミーラ。頭の中は、カミーラ一色だ。
ニーチェが運転する車は、暗闇の森の中で、細いライトを光らせ、真っ直ぐに、本部へと夜を裂いていった。
「カミーラカミーラ。あっ、あった。えっと……、一週間前ね。バルサーモ家に引き渡したと書いてあるわん」
ニーチェも覗き込んだ。確かにモニターには、そう書いてある。日付も、ゲーテが彼らにホムンクルスを渡した日と同じだ。
「それ以降のことは書いてないか?」
「それ以降? ないわねぇ。これで解決してるわよん」
「そうか」ニーチェは、髪をかき上げて考えた。
情報を隠している。間違いない。ニーチェは、カミーラの行方に対して、不安で仕方がなくなった。もしかしたら、この情報は本当で、自分たちとは別のルートで、本物のカミーラを、彼らに横流ししたのかもしれない。これは、自分の目で、カミーラの安全を確認しなければいけない。
クリスティアーネは、心配そうな顔をして、歯切れ悪く、別の可能性についても話してくれた。
「バックドアを使えば、本部や幹部用のデータに侵入できるわん。そしたら、何か新しい情報が分かるかもしれない」
団員としての権限を越えた行為だ。クリスティアーネは、ニーチェの切なそうな顔に、我慢ができなかった。規則違反に手を染めようとしている。だが、ニーチェは、カミーラのことしか考えていない。クリスティアーネの気持ちなど、考えてすらいない。ただ、親切だなとは感じていた。
「何か方法があるのか? 頼む。何としても知りたい」
クリスティアーネは、決心した目つきでうなづき、ニーチェのために、二十分ほどかけて、プログラムを打ち込んだ。
「これで入れるはず、と。ほら。入れたわ。後は、カミーラの記録ねん」クリスティアーネは、急いでページをスクロールしていく。
「あ。あった。これかしらん?」クリスティアーネは、カミーラの記事を白黒反転して、分かりやすくしてニーチェに見せた。
『被験体K。バルサーモ家に依頼達成を知らせた後、第二研究所へと移送。アルカディアン研究として使用する』
文字を読んだ瞬間、ニーチェは、例えようの無い気持ち悪さに襲われた。アンドレーエの目をまともに見た時と同じ感覚だ。何度読み返しても、間違いない。逃す、ではない。実験動物として使用する、と書いてある。
感情が思考を超えた。ニーチェは、何も考えられなかった。身体中がボーッとした熱気に襲われながらも、無有病者のように第一研究所の外に出て、停まっている車に乗った。カミーラ。カミーラ。頭の中は、カミーラ一色だ。
ニーチェが運転する車は、暗闇の森の中で、細いライトを光らせ、真っ直ぐに、本部へと夜を裂いていった。