第31話 相談(1) Consultation

文字数 935文字

 一週間が過ぎた。今日は、カミーラと会う日ではない。ニーチェは、自分専用の研究室で実験をおこなった。
 最近、一番熱心に研究している錬金術は、血液によるFD判別法だ。FHは、ファンタジー・ホープの略だ。錬金術師でオーラさえあれば、ほとんどの人は使用することができる。一方、FD、ファンタジー・ドープは、錬金術師でも使用できる人は限られる。これは、個性によるものだという学説が一般的だった。
 だが、血液をオーラに混ぜて分析することで、使用できるFDを判別することができる。これは、ジョンから聞いた話をもとに、ニーチェが発見した。血の量が多ければ多いほど成功率が高く、効果や時間を知ることもできた。
 さらに、カミーラを研究していくにつれ、ニーチェの分析速度は大幅に上昇した。なぜなら、カミーラが吸血鬼だからだ。人の血を吸うことにかけては天賦の才がある。彼女の髪や爪を分析し、血を吸った時の効果を確かめる。確かめるたびに、発見がある。きっと報告期限までには、多くの研究成果を得られるだろう。
 ニーチェは、この実験に夢中だった。毎日、新しい展開が待っている。根を詰めて作業したかった。だが、無理に急ぐことはない。急げばやがて、カミーラに、もっと材料をくれと負担を強いることになる。ニーチェは日常に満足し、今夜も、定時になると同時に、自分の部屋へと戻ってきた。
 今は二月だ。寒いので窓は開けない。ニーチェは、体温が徐々に下がっていった。だが、暖房は嫌いだ。肌が乾く。ニーチェは、いつものように紅茶を沸かした。部屋の灯はつけない。いつものように、窓から深い森を見る。あまりの漆黒。闇が自分と一体化する。思考が増大していく。
 明日は、カミーラに会える。研究の成果が出たので、血液判別法について話したい。嬉しかったことを、彼女に伝えたい。だが、監視している研究助手は、読唇術が使用できる。バレずに伝えることはできない。いや、待てよ。これもまた、血の交換によって、知識を伝えることができるかもしれない。研究したいことは、闇のように次々と湧き出てくる。
 その時、部屋の外から、小さく扉を叩く音がした。ニーチェの思考は途切れた。おかしい。クリスティアーネは、今日は、徹夜作業の日だと言っていた。
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