第54話 二年後 Two Years Later

文字数 867文字

 二年間が過ぎた。二十五歳のニーチェは、ますます不健康な外見になっていった。服も、白衣以外は着ない。汚らしく見えないのは、クリスティアーネが、甲斐甲斐しくニーチェの世話を続けているからだ。第一研究所の実務だけではない。今では、歯磨きから服の着替えまで、全ての面倒を見てくれている。
 さらにクリスティアーネは、GRC内の情報を収集する手助けもしてくれた。PCのバックドアを使い、所属する錬金術師たちの能力とFDを調査する。研究の結果、FDが利用できる人間の種類には、血や性格が大きく影響していると分かったからだ。
 また、第一研究所所長補佐の地位を利用し、ニーチェに、たくさんの錬金術師たちと直接会う機会も作った。研究所交流会という名目だ。他の場所に行く時間がもったいないニーチェのために、体調が悪いからという理由で、各所の錬金術師たちを、第一研究所に呼び寄せる。これにより、ニーチェは、実際に気になる錬金術師たちと会うこともできた。
 毒を作っている相手を見つけることはできなかったが、人を研究することにより、ニーチェの研究は加速していった。結局、全ての創造は、人によっておこなわれる。人に興味がなければ、錬金術は成長しない。ニーチェには、その考えが抜けていた。
 さらに、次元が違うKOKの錬金術を間近で見たニーチェには、GRCの錬金術師には見えない研究の先が見えている。結果、ニーチェの錬金術の腕前は、名門フラテルニタティスの名を冠するにふさわしいほど上達した。
 ゲーテもまた、この二年で昇進を繰り返していた。今は、研究所統括所長だけではない。ついに、GRCに五人しかいない、副団長補佐の座にも就いていた。団長、副団長につぐ、三番目に高い位だ。こんなに早く出世している団員は、他にいない。
 カミーラの解毒期限は迫っている。成果には先が見えない。ニーチェの心は、不安で崩れそうになる日もあった。心臓に刺さるトゲで身悶える日もあった。だが、友が自分と同じように努力し続けているという話を聞くたび、心の中に突き進む勇気が湧いてくるのであった。
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