第18話 ALERT(Snooze)

文字数 362文字

 気付けば二ヶ月以上、前橋のグループレッスンを休んでいた。

 通年リンクの無い前橋FSCは、夏季は陸トレが中心になる。

 殺風景なコンクリートの壁。
 使い込まれた用具。
 薄暗い照明。
 全てが榛名(はるな)に劣るのに、こっちの方が俺には馴染む。

 高校生が二人抜けていた。
 汐音(しおん)を知っているメンバーが、また減った。

「うち、霧崎先輩が辞めたんじゃないかって凹んでました」
「辞めないよ。……ここは、俺達の原点だから」
 言ってから、ふと思い立った。

「そういえば、芝浦(しばうら)刀麻(とうま)に会った? 俺がエストニアに行ってる間に、見学に来たっていう」
「えー、そんな人いたっけ? 渚、覚えてる?」
「知らなーい」

 首をひねる。

 ……どういうことだ? 
 皆忘れてるのか? 
 あんな強烈な男を。

 俺は不審に思ったが、揃いも揃って皆怪()(げん)な顔をするから、それ以上訊くのをやめた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

芝浦刀麻(しばうら とうま)


・榛名学院高等部一年。15歳。スケート部所属。

・北海道帯広市出身のフィギュアスケートとスピードスケートの二刀流スケーター。

・スピードスケート選手の父とフィギュアスケート選手の母のもとに生まれる。

・高校一年生の5月に榛名学院高等部に転校してくる。

・小学生の頃は野辺山合宿に参加するなど優れたフィギュア選手として頭角を表していたが、とある事件の後フィギュアをやめ、中学時はスピードスケート選手として500mの道内記録を塗り替え、全国大会二位の成績を収める。

・今作は、彼が再びフィギュアの世界に戻ってきたところから物語が始まります。

・12月8日生まれ、射手座のO型。

・身長178cm。

・得意技は四回転サルコウ、ハイドロブレーディング。苦手な技は特に無し。氷上は全て彼の領域。

霧崎洵(きりさき じゅん)


・榛名学院高等部一年。15歳。スケート部所属。

・全日本ジュニア選手権2位、世界ジュニア選手権3位と、昨シーズン破竹の勢いで頭角を表したフィギュアスケーター。

・学業優秀、スポーツ万能。そんな彼が唯一苦手とするのが“スケート”……その真相とは。

・双子の妹、汐音(しおん)はかつて史上最年少でトリプルアクセルを成功させた天才フィギュアスケート選手だった。

・出会った時から刀麻に反発し、初日にいきなり殴り合いの喧嘩をすることに。何が原因で、どんな経緯があったのか……?

・今作は刀麻と洵の愛憎を軸に物語が進みます。

・11月25日生まれ。射手座のAB型。

・身長167cm。

・得意技は三回転フリップ+三回転トウループのコンビネーションジャンプと、柔軟性を生かしたビールマンスピン。苦手な技はトリプルアクセル。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み