第68話 児童向け作品は案外侮れない。むしろすごい。そして好き(青)
文字数 2,656文字
昨年のクリスマスシーズン。プレゼント探しで書店を歩いていた私は、棚に面陳されていたとある小説の表紙を見てビビビッときまして、その本を購入しました
角川つばさ文庫「ふたごチャレンジ!」
ま〜た講談社のサイトで他社の作品紹介してる
やることが多い……! は講談社作品のネタらしいですから、全くご縁がないわけじゃないですよ!
最近、某所で話題になってた作品を読んだら「コミックDAYS」の作品だったってこともありましたよ。ブラウザでノベルデイズ投稿作品編集中に視界の片隅にちょいちょい入るやつ。「あ、こういう作品読むサイトなんだ!」って後で気付いて感慨深かったです
なんだか言い訳っぽい流れだけど、作者が「あ、コミックDAYSだ!」ってちょっと感動したのは事実らしい
本作が気になった理由は2点。
ひとつめは私が「双子」という存在が好きで好きでたまらないというごくシンプルな動機です
代表作で「何組もの双子が延々と死に別れる悲劇」なんか書いておいて、好き……?
当事者であるコウ君達にとっては首を傾げたくもなるでしょうが、あおくささんは好きなものほどお話の中で辛い目に遭わせたくなる性癖みたいで……
このエッセイの中でも散々既出だけど、何度聞いてもオレ達にとっちゃ迷惑なヘキ
創作の中で発散して現実ではそういうヘキを持ち出さないように気をつけるそうですので、私達は我慢しましょう!
※本当に我慢できてるかについては一身上の都合により明かせません。
もうひとつの目的は、この作品が「第9回角川つばさ文庫小説賞」金賞受賞作品だからということ。
私は参加しませんでしたが、某投稿サイトで開催された児童向け小説レーベルのコンテストで、選評でこんなことが書かれていました
児童向けレーベルの公募なのに、「子供が一番楽しめる」を意識しないで高校生が主役の青春小説を応募する人が多い印象を受けました。
応募する前に、このレーベルで出版されている作品か受賞作品を読んでから書いてみてください
この公募は翌年開催の際には、「小学生か中学生が主人公の話」というのが「応募条件」に明記されました。
こういった経緯を傍観していて、私は
「児童向け小説を大人が書く」って、想像以上に難しいのかもしれないと思いました
確かに、言われてみれば……「小さなお子さん(幼児期ではなく学童期)が読んで理解できる」、だけではなく、さらに「楽しい! と思える」を考えるって、大人になってからだと難しいのかも
子供の頃ってよく言うし、思うもんな。
「大人はわかっちゃくれねぇんだ!」とか
機会があったら児童向け作品を読んでみようと思っていたのと、実をいうと私の現実我が子も「男女の双子」なので、買って帰れば自分だけじゃなく3人で楽しめるかもな〜と思って購入を決めました
現実我が子も双子なのに、オレ達(双子)が延々と死に別れる話なんか書いて大丈夫か?
今更カミングアウトしますが、2012年で「GRASSBLUEシリーズ書くの諦めよ」って決めた裏の理由がもうひとつあって。そういうことです
現実双子ちゃんが生まれたのが2013年ですから、つまり2012年にはすでにお腹にいたわけで
母親がそんな話を10年以上前から考えて、しかも書くなんて、現実双子に知られたらどん引きするかな〜と思って。ちょうど「こんな複雑な構成の群像劇、私の能力じゃ書けねぇわ!」って筆を折ろうとしていた時期だったし、諦めることに
ひどいことするなぁとは思うけど、現実と物語は違うんだし。自分が挫折した理由にお子さんを使うのは良くないかもしれない
それは本当にその通り。
おまけに、やっぱり書くって決めたのも、子供が背中を押してくれたからですね
本エッセイ19話参照
(……いつのまにか背中……してた……)
本エッセイ19話でお話されていた件ですね。
それにしても、創作上の双子という存在が大好きだというあおくささんが、現実に双子ちゃんのお母さんになれるなんて、奇跡的な幸運に恵まれましたね~
ちなみに、物心ついた直後かその前くらいから、サンリオのキキララ(リトルツインスターズ)というキャラクターが大好きでした
自我が芽生えるか芽生えないかって頃から好きだったって、筋金入りっていうか。もはや運命みたいだ
随分と脱線してしまいましたが、「ふたごチャレンジ!」を読んだ感想。
もうね。さすが受賞作品という圧倒的な「格の違い」を最初の1ページから感じさせられたというか。
冒頭で「主人公の双子の子供達」が何に悩んでいてこれからどんな話を始めようとしているのか。今、どんなに幼い心を痛めながら日々を過ごしているのか。
ほんの数行の描写でビシビシ〜ッとそれが伝わってきて泣きそうでした!
大げさなこと言ってない? と思われるかもしれませんが、あおくささん、大人になってからは創作物に触れた際に「涙もろく」なったそうで
自分の琴線に触れる描写がくるととかく気やすく、うるうる〜っとしちゃってるらしい
娘っちと一緒にプリキュア映画を観に行った時、いっちばん最初のオープニング曲の「迫力が、家で見るのと違う大音響」ってだけで心臓震えて感動してぼろぼろ泣いてて、娘っちをビビらせてたっけな
児童向けレーベルの作品は、子供が読んで最も楽しめる、理解できる。そのために書く物語です。
しかし、今を生きる子供達に真摯に訴えかける「テーマ性」がしっかりしています。
私はそういう作品が好きですが、前のページで書いたように、そういう方向性を否定しようとする動きもあるわけで
もしかしたら、児童向けの作品の技法こそが、あおくささんの理想の物語になるのかもしれないですね
私も、本作を読んで「ああ、そうだったんだ」と、気付きを得ました。
もちろん、読書傾向の好みはあるでしょうけど。児童向け作品は小説に限らず、大人も感動させられる想いがこもっていて、決して子供だましではないのだと。
……だからこそ、私にはおいそれと書けないし、児童向けレーベルの公募に出すことはないでしょうね
子供も読んで楽しめる、は「物語」だけじゃなく「文章の書き方も」だから。「大人だからこれくらいの難しい文章で書いても理解できるだろう」っていう、読者も作者も大人同士だからこその甘えが許されない。
児童向け小説は一見、「子供っぽい文章」に見えるかもしれないけど、「子供も理解できて大人も読めば感動出来る範囲」で書こうとすると、とんでもなく難しいのかもしれないな
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