登場人物紹介

文字数 6,667文字

 お久しぶりです、レインボウ・ネットワーク接続者専用のサポートAIメイド・レインでございます。
 ここへいらしたということは、第一部を完走していただけたということでしょうか? ありがとうございます。
 それでは、皆様にはご不要かもしれませんが、第一部と同様に「わかりにくい、覚えられない」といったお声をいただく可能性もございますので、今回もまた第一部終了時点までに本編で出た情報を盛り込んだ登場人物紹介と世界観・用語の解説を行って参りたいと思います。こちら人物紹介では第二部から登場の新たなお歴々に関してもご紹介させていただきます。また、若干ながら第三部のネタバレも含みますので、あらかじめご了承ください。
 すぐに本編の続きを、という方は「第二部 序章・鳥籠」までお進みください。



・アサヒ/男性/生後三ヶ月
 精神年齢的には一七歳なのですが、ご存知の通り伊東 旭様の模倣体として誕生してからはまだ三ヶ月弱しか経過しておりませんので、年齢は上記のように設定させていただきました。
 本編でも早い段階で朱璃様により突き止められてしまっていましたが、魔素が伊東 旭様の一七歳時点の肉体と能力を再現した存在です。何故か旧時代が終焉を迎えた“崩界の日”以前までの記憶しか持っておらず、そのため英雄として戦い続けたオリジナルの戦闘経験も引き継いでおりません。これにはれっきとした理由があるのですが、もちろんここでは秘密といたします。
 戦闘経験こそ無いものの、伊東 旭様から受け継いだ“渦巻くもの”という名の由来である絶大な魔素吸収能力。さらには吸い込んだ魔素によって瞬時に人知を超えたパワーを発揮できる肉体の特異性。そして体内の高密度魔素結晶体をゲート化して無尽蔵に魔素を放出できるなど、スペックそのものはやりたい放題の仕様となっております。ある程度の経験を積んでご自分の能力を理解し上手に活用できるようになったなら、かつて私が見た≪七色≫(セプテット)相当の伊東 旭様とも互角の戦いができるかもしれません。そうなれば神様の仲間入りですね。
 伊東 旭様を再現する際、赤い巨竜シルバーホーンの体内の高密度魔素結晶体“竜の心臓”を核として用いたためか、赤い巨竜ことシルバーホーン様の人格とも同居している状態です。これはサルベージを行ったオリジナルの旭様と南日本の桜花様達にとっても誤算でした。
 ただ、福島で戦った彼は凶暴で好戦的でしたが、アサヒ様の中に宿っている方の彼はずっと理性的なようで、今は人類に対し敵意を抱いていません。もう一方の自分を“紛い物”と呼んでおり、その背後に存在している謎の敵“白い大蛇”を強く敵視しているようです。もしかすると、おとなしくしているのは人間との共闘を望んでいるからかもしれません。
 人の姿をしているとはいえ“記憶災害(ドラゴン)”であることには変わりませんから王都・秋田へ連れて行くことはまず不可能だろうなどと言われていましたが、結局許可は下りたようです。不思議ですね。
 さらに、どういうわけか朱璃様との婚約が本人の意志を無視して一方的に成立してしまいました。これからどうなるのでしょう? 続きが気になる方は第二部へどうぞ。今回の登場人物紹介はまだ続きますが。



星海(ほしみ) 朱璃(あかり)/女性/一五歳
 一二歳の時から特異災害対策局で働いている稀有な才能の持ち主です。第一部の終盤では北日本王国の第一王位継承者・王太女であることも明らかになりましたね。
 性格は苛烈。必要とあらばアサヒ様の肩を撃ち抜くことくらい全く躊躇いたしません。でも、不思議とお互いに少しずつ歩み寄って打ち解けていっているようにも見えますね。
 だからなのか、突然アサヒ様の婚約者として名乗りを上げ、唇まで奪ってしまいました。このような展開は私としても久しぶりのことなので先が楽しみです。普段は自殺志願者の方をサポートすることが多いため、あまり心の浮き立つような場面には出会えませんから。
 秋谷さんからの情報によると、第二部では第一部より活躍する場面が多いとのこと。また、今回は彼女の家族にまつわる問題がストーリーの主軸となっているようです。
 はたして本当にアサヒ様と結婚されるのでしょうか? 私もそろそろ続きに進みたくなってきましたが、登場人物紹介はまだまだ続きます。



・シルバーホーン/男性/???
 アサヒ様の体内で同居している、もう一つの人格。赤い巨竜。人類最大の天敵などとも呼ばれています。全身を赤い鱗で覆われており、その下の皮膚も赤銅色。ただし鼻先からそびえ立つ鋭角で太い角だけは銀色なので、そのワンポイントを由来に“シルバーホーン”と名付けられました。南日本では“紅銀”と呼ぶそうです。金魚の名前みたいで少し可愛らしいですね。
 背中には大きな翼があるのですが、これはあくまで補助的なもので、実のところ“魔法”を使って飛んでいます。知能は人間並かそれ以上に高く、鱗は戦艦大和の主砲でも貫通できないほど強靭。体内で生成される特殊な燃料と魔法を組み合わせて強力な火球を吐き出すことができる他、角からは“記憶災害”を発生させずに魔素を消滅させてしまうほどの超高電圧の雷撃を放つこともできます。この攻撃は電圧を調整することも可能なようです。また、この手の生物の定番として長い尾を使った打撃も得意としています。
 ふふ、思い出します。私、実のところこの方とは過去に数回遭遇しているのです。自殺志願者か有色者にしか私は認識できませんから、向こうは全く覚えていないでしょうが。
 これまではずっと人類と敵対する側でしたが、今回は初めて味方として戦ってくれるようです。永く囚われた続けた呪いを解かれ、ようやく自由を取り戻した彼の選択の結果についても、どうなるのか気になります。



・マーカス/男性/四四歳
 アサヒ様に色々な意味で敵愾心を抱くドレッドヘアの黒人男性。多少は気を許してくれたかと思えば、また敵意を剥き出しにして睨みつけてきたりするので、どうやら情緒が不安定なようです。どうしてでしょうね?
 もちろん朱璃様の婚約には反対の立場。とはいえ、女王陛下がお許しになったことなので声高に異を唱えることもできず悶々としておられます。
 第一部では二体の竜との戦いで渋い活躍を見せておられましたが、今回の精神状態で同じように見せ場を作ることができるのでしょうか? 要注目です。



・カトリーヌ/女性/二六歳
 終盤で意外な正体が明らかとなりました。え? 意外ではありませんでしたか? クルクマ様という前例が……なるほど、言われてみればそうですね。
 では全く意外なことはない正体を明らかにしたカトリーヌ様の今回のご活躍にご期待ください。彼女の場合、第一部より遥かに多く見せ場が増えているそうです。



相田(あいだ) 友之(ともゆき)/男性/二二歳
 こちらも第一部同様、星海班のムードメーカーとしての活躍が期待されています。
 秋谷さん曰く「申し訳ないけれど今回はそれだけです。カトリーヌとの恋の進展もありません。というか相手にされていません」だそうです。
 身近に別の良縁が隠れていることを、早く察してくれるといいですね。
 また、第二部では意外な才能の持ち主であることが明らかになります。



(くるま) 小波(こなみ)/女性/二一歳
 友之様の幼馴染で才能が無いことにコンプレックスを抱いておられる女性の特異災害調査官。星海班は班長の朱璃様のため班員の女性比率を増やしていることから半々の人数になっていますが、本来、特異災害調査官や兵士は男社会。女性の身で試験に合格したこと自体が優秀な才能の持ち主だという証なのですが、なかなか自覚は持てずにいるようですね。
 第一部中盤の戦闘で重傷を負い、そのまま戦線を離脱。それからしばらく秋田の病院で入院していたのですが、第二部では復帰いたします。なんらかの心境の変化が起きたのか、これまで頑なに変えようとしなかった髪型を若干変えてみたとのこと。アサヒ様と朱璃様の婚約の報せが良い方向に働いてくれたのでしょうか? 私も応援していますので頑張ってください。



岩倉(いわくら) 義実(よしみ)/男性/三八歳
 その大きな体から“ウォール”とアダ名され、さらに無口なことが災いし、あまり目立った活躍をしていないように見えてしまう岩倉様。
 でも実は第一部の時から要所要所で渋いお仕事をなさっています。今回もいぶし銀の活躍が期待されるとのことです。
 とても私のマスターより年下だとは思えません。



神木(かみき) 緋意子(ひいこ)/女性/三六歳
 第一部終盤、突然登場して朱璃様の実母であることを速やかにカミングアウトなされた女性。容姿は朱璃様をそのまま大きくしたようなお方です。
 どういうわけか実の娘への愛情を否定なさっておいでです。複雑な家庭の事情があるのでしょうか? それとも彼女自身の内面が複雑なのでしょうか? 朱璃様は母親についてどう思っているのでしょう?
 今回その謎が解き明かされるかは、秘密です。



・女王陛下/女性/六三歳
 北日本王国を統べるお方です。残念ながら第二部でも名前は明かされません。必要性を感じないからと秋谷さんが書くのを忘れてしまったためです。もしも知りたいという方がいらしたら、第三部公開までお待ちください。
 突然、孫娘である朱璃様と祖先の模倣体であるアサヒ様の婚約を発表し、その場で許可も与えてしまいました。何を考えておられるのでしょうね。やはりお顔立ちは朱璃様と似ているのですが、お髪はすでに白くなっておられます。
 なお、第一部から第二部の間に誕生日を迎えられたので年齢の表記が一歳上がっています。



◆ここからは第二部より新しく登場される方々です。




大谷(おおたに) 大河(たいが)/女性/二〇歳
 アサヒ様の監視役として王室護衛隊から選ばれた方です。護衛隊は精兵揃いのエリート集団。その中でも期待の若手として認識されています。
 鋭い眼差しに、やや茶色がかった髪。童顔とクセッ毛であることが悩みなのですが、あまり短く切りすぎると赤ちゃんみたいだと言われてしまうため、少し長めにしてあります。
 アサヒ様に対しては、少しばかり猜疑的な感情を抱いているとのこと。ただし実直な方なので、誤解さえ解けたなら強い味方になってくれるはずです。
 余談ですが、初期設定では作中一の残念な頭脳を持つ豪放磊落な人物になる予定でした。しかしエリート集団の一員がそんな感じでは才能によって進路が強制的に決められてしまう北日本のシステムに矛盾していると判断されたため、大胆に設定を変更した結果、逆に一番真面目な性格に。なのに秋谷さんの中には旧大谷様のイメージがまだ残っているため、時々混乱するそうです。



小畑(おばた) 小鳥(ことり)/女性/二九歳
 可愛らしいお名前で清楚な雰囲気を纏う艶やかな黒髪が特徴的な女性。秋田でも一・二を争う美女だと言われているそうです。職業は侍女。つまりメイドですね。私としては親近感が湧きます。
 アサヒ様のお世話係として、秋田に来て以来、お側に仕えておられます。とても優秀で職務に忠実な方だと評判。アサヒ様は内心お姉さんのように慕っているようです。
 なお、彼女と大谷さんが帰った後、アサヒ様を監視する仕事は王室護衛隊の“中山(なかやま) 中央(なかお)”さんが担当しています。



星海(ほしみ) 開明(かいめい)/男性/一六歳
 朱璃様のはとこにあたる人物で現在王位継承権を放棄した神木様を除くと四人しか残っていない王族のお一人です。男性なのですが容姿は非常に女性的で、赤い髪に青い瞳という珍しい特徴までも一致しているせいか、よく朱璃様に間違われてしまうようです。
 性格は飄々として掴みどころが無く、王位に対する興味もゼロ。勉学が得意だったので高校に進みましたが、将来何をするかもまだ決めかねているようです。そのため周囲からは放蕩息子と見なされています。
 ただし頭脳は朱璃様に負けず劣らず明晰だと言われており、ご学友などは時々困りごとを相談しているようです。
 朱璃様のことは気に入っておられるようで、見かけると必ず絡んで来ます。アサヒ様にも好意的です。しかしお父様との関係は良好とは言えず、また朱璃様の母親である神木様に対しても辛辣な態度を取りがちです。
 三年前に”お母様を亡くしており、それからいっそうやる気が無くなったと言われています。



星海(ほしみ) 剣照(けんしょう)/男性/四七歳
 現陛下の甥にあたる方で、開明様のお父上です。極めて優秀な武人であり、過去の都市防衛戦において数々の武勲を立て、多くの兵士達から慕われているカリスマ軍人。その人気から陸軍と海軍の双方を統べる元帥にも選ばれ、実力至上主義の北日本において八年間その座を守り続けています。
 精悍な顔つきで、右の頬には大きな刀傷があり、髪は半分ほど白くなっています。齢を重ねた今でも個人としての武力でなら北日本最強の実力者と呼ばれており、特に剣術に優れているとのこと。
 ご子息との関係は上手くいっておらず、それが最も大きな悩みの種。また、叔母の女王陛下に対しても何かと思うところがあるようです。
 朱璃様に対しては優秀な頭脳に大いに期待をかけておられます。


・人斬り燕/???/???
 第二部最大の強敵です。まるで旧時代の神職のような服装で無貌の仮面を被り、正体不明の辻斬りとして三年前にも北日本国内で凶行を重ね、多くの犠牲を生み出し人々を震撼させました。今回の狙いはどうやら朱璃様のようです。
 人外の力を持つアサヒ様すら翻弄する恐るべき力の持ち主。果たして北日本の皆様はこの強敵をどのようにして撃退するのでしょうか?



星海(ほしみ) 光理(ひかり)/女性/二五歳
 とある場面で登場される女性。オリジナルの“伊東 旭”様のご息女で北日本王国の二代目国王だった方です。外見はお母様に、内面はお父上に似ていました。お父上が北日本王国から姿を消してしまった後、若くして次の王となり、残された人々をしっかりとまとめ上げて記憶災害に対する様々な対策案を打ち出しました。ご両親の代で記憶災害の仕組みについておおむね解明されていたことも大きかったのですが、それを差し引いても初代王に次ぐ偉大な功績を残した王だと語り継がれています。
 なお、姓が旭様と異なっているのはお父上に頼らず自分の足で歩んでいく決意を示すため、あえて変えたからです。この当時すでに他界されていたお母様が天体観測の好きな方だったので、星見と星の海をかけて「星海(ほしみ)」にしたと言われています。
 また、お父上ほどではないにせよかなり強力な魔素吸収能力を有しており、身体能力の面でも当時の王国におけるトップでした。彼女が剣の達人に弟子入りして学んだ剣術は人間ではなく怪物と戦うための様々なアレンジを加えた上で現在も王国の人々に受け継がれており、現女王陛下も若かりし頃から優れた剣士として名を馳せていたようです。
 余談ですが、彼女が王だった時代にこの世界では“空白の一時間”と呼ばれる奇妙な事件が起きました。何故か全ての人間が同時に意識を失い、次に目を覚ました時には一時間が経過していたのです。北日本だけでなく南日本でも同様の事態が起きていたことが確認されており、嘘か真か偶然地上にいた方の「空が割れて黒い何かが流れ込んできた。その黒いものが頭上を全て覆い尽くした後、目が覚めたら一時間経っていた」という証言も記録されています。



伊東(いとう) (あさひ)/男性/四七歳
 やはりとある場面で登場するアサヒ様のオリジナルにして北日本王国の初代王。人類を救った英雄でもあるお方です。自分の力の使い方をいまだによくわかっていないアサヒ様とは違い、この当時の彼は歴戦の勇士。単に魔素を吸収・放出するだけでなく、他にも様々な利用法を見つけ出していたと言います。この世界の文献に残されている記録を参照した限りでは≪四色≫(カルテット)相当でしょう。有色者にもならずにこの領域にまで至れるのは流石と言うほかありません。
 しかし、そんな彼でも単独では成し遂げられないと考えるほど困難な何かに挑み、そして敗北しました。その時に南日本の人々に協力を求めたことが第一部でのアサヒ様のサルベージ、そして第二部で起きる事件と、第三部での新たな展開に繋がるようです。
 どうなるのでしょうか? AIメイドにとっても非常に気になるところです。


 さあ、それでは第二部の登場人物紹介は以上となります。次は世界観・用語の解説に移行いたしましょう。
 そんなことより本編をという方は、どうぞお先にお進みください。私はサポートAIとしての使命を全うしてから参りますので。
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登場人物紹介

 アサヒ。文明崩壊から二五〇年経過した日本の筑波山で気絶しているところを特殊災害対策局・星海班に発見された少年。保護した直後、班長の朱璃はわずかな手がかりから短時間で彼の「正体」を突き止めた。

 崩界の日と呼ばれる大災害やその後の困難から人類を救った英雄・伊東 旭に瓜二つ。当人もその英雄の記憶を持っている。だが崩界の日の直前までしか覚えていない。

 目付きが鋭く高身長。そのため見る者に威圧感を与えるが、内面はむしろ柔弱でおとなしい。崩界の日まではごく普通の人生を歩んでいた。

 ただし、当時から人並外れた身体能力の持ち主でもあった。夢はその才能を活かし、いつか開催されるかもしれないオリンピックに出てメダルを取れたら、女手一つで自分を育ててくれた母にそれを贈ること。

 朱璃には初対面でいきなり拷問されたため苦手意識を抱いている。

 星海 朱璃。後に「記憶災害」と名付けられた現象により文明が崩壊してから二五〇年後、南北に分裂した本州の片割れ「北日本王国」で特異災害調査官を務める天才少女。まだ一五歳。

 星海家にはドロシー・オズボーンという女性の血が入っており、世界に蔓延した記憶災害の原因物質「魔素」の影響か、代々彼女の身体的特徴を受け継いでいる。そのため日本人ながら髪は赤く、瞳は青い。顔立ちも日本人離れしている。

 優れた頭脳や才覚を認められた一部の人間しか入学を許されない高校に飛び級で入り、たった一年で卒業した。頭脳だけでなく身体能力や反射神経も優れており、体格の大きさが有利に働く「疑似魔法」においても魔素吸収能力の高さにより小柄な体という欠点を補っている。

 また、父を喪った出来事以来「恐怖心」も欠落しており、普通の人間なら躊躇うような危険にも必要とあらば迷わず突っ込んでいく。

 研究者としても優秀。現在の北日本王国兵が必ず装備している疑似魔法の威力を高める銃器「MWシリーズ」は彼女の発明。さらに国民全員が身に着けている静電気の発生を抑制するスキンスーツは彼女の両親の発明である。

 アサヒのことは非常に興味深い研究対象と認識している。

 マーカス。星海家と同じく魔素の特性によって先祖返りしたと思われるアフリカ系の特徴を持つ男。先祖は在日米軍兵だったルーカス・ブラウン。

 朱璃の護衛役であり彼女が調査官になる前からの保護者。親友だった朱璃の父が死んだ後、母親が育児放棄してしまったため代わりに引き取って育てた。

 死亡率の高い調査官の仕事を二十年以上続けている事実が示すように極めて優秀。特に危機察知能力と生還能力に優れており、情報を持ち帰ることが重視される調査官としては理想的な人材だと言える。

 コミュニケーション能力もけして低くない。ただし朱璃が絡むと父親としての顔が出てしまい、男子に対しては厳しい態度を取りがち。

 アサヒの存在を様々な意味で危険視している。

 カトリーヌ。本人はそう名乗っているが偽名で、自ら嘘だと周囲に明かしている。親からもらった名前に思うところがあるらしく誰にも教えたがらない。星海班でそれを知っているのは朱璃だけ。その朱璃とは年の離れた友人としても交流を重ねている。

 やはり先祖返りで金髪碧眼に生まれた。温和な性格で次に紹介する友之と共に班のムードメーカーを担っているが、実はずば抜けた戦闘センスの持ち主。竜と戦っても無傷で生還することが多い。

 友之に惚れられているが、彼女の側からはからかい甲斐のある後輩だとしか思っていない。

 旧時代の重火器をコレクションしており、それが朱璃の研究の一助にもなっている。

 相田 友之。根っから明るい快男児。調査官になってから数年経っているが、精鋭揃いの星海班の中では幼馴染の小波ともども新米扱い。なのでアサヒのことは弟分として可愛がっている。

 視野が広く、咄嗟の判断力に優れる。他の能力も平均以上に高いため、つい最近死亡した前任者二人の代わりに他班から引き抜かれた。

 副業としてSF作家をしており、それなりに人気がある。同期の小波とは子供の頃からの腐れ縁。しかしカトリーヌに出会った瞬間から鼻の下を伸ばし、アプローチを続けている。小波のことは世話の焼ける妹扱い。

 車 小波。友之の幼馴染で班長の朱璃を除くと最年少。全体的に平均より少し上といった能力だが、朱璃に配慮して男女比を半々にするため星海班への転属が決まった。努力家で根性なら人一倍鍛えてある。

 あからさまに友之に好意を寄せており周囲もそれに気が付いていて朱璃ですらさりげなくアシストすることがあるのだが、肝心の友之だけはそれに気付かずカトリーヌの尻を追いかけ回しているため恋が実る可能性は今のところ低い。

 友之ともども幼少期から「伊東 旭」の英雄譚を聞いて育った。なのでアサヒと接する時には若干緊張してしまう。

 巖倉 義実。通称はウォール。魔素の影響で大型化した三m近い巨漢。体格=魔素保有量=疑似魔法の性能になる現代では極めて優れた資質の持ち主。

 しかし、それゆえか進んで貧乏くじを引く、仲間の盾になりたがるなど献身的で自己犠牲を好む傾向にあり、生還が第一の調査官には不向きな性格。

 マーカスや後述の門司より年下だが、以前も同じ班にいたことがあり当時からの戦友。

 実はバツイチで別れた妻との間に三人の娘がいる。

 極めて無口で全く彼の声を聞かずに終わる日も多い。

 門司 三幸。調査班に必ず一人同行する決まりの専従医師。一応は戦闘訓練を受けているが、戦うのはあまり得意じゃない。アサルトライフルは治療行為の邪魔になるため朱璃に特別に作ってもらったハンドガン型のMWを愛用。

 愛煙家。ただし本物のタバコではない。この時代の医師は患者の体内の魔素を操作して検査を行ったり痛みを緩和したりできる。

 中杉 真司郎。通称ジロさん。マーカスよりさらに二十年ほど長く活躍している引退済みの局員も含めた最年長調査官。そのため局内では生ける伝説扱い。局長の神木 緋意子ですら彼に対しては敬意を払う。

 老いてなお優秀。常に冷静沈着。朱璃に対するアドバイザーとして配属されたが、彼女もまた誤った判断をすることが少ないので出番が無いなと苦笑している。

 家族は娘夫婦と孫が二人。

 神木 緋意子。特異災害対策局の現局長。マーカスとは同期で、かつて同じ班に所属していた。

 とある出来事以来、常に淡々とした話し方をする。目的のためには手段を選ばなくもなった。自分の最も大切なものですら駒として扱える。

 娘が一人いるが、親子としての会話は何年もしていない。

 北日本王国の現女王。初代王が優れた戦士だったため今も王家には優れた戦士であることが求められており、彼女も即位前は陸軍に所属していた。訓練教官をしていた時代もあり、対策局の問題児だったマーカスを預けられ鍛えたこともある。

 そして緋意子の母親。娘が王位継承権を捨てて同期の調査官に嫁いだので、今は孫を後継者に指名している。

 シルバー・ホーンと呼ばれる赤い巨竜。発生から十分間で自然消滅する記憶災害のルールに抗い、二五〇年前から存在し続け、荒廃した東京に今も居座っている。

 二足歩行で直立すると一〇〇m以上の巨体。多種多様な「竜」の中でも特に大型で高い戦闘能力を発揮しており、北日本の調査隊が東京へ送り込まれた際には高々度から巨大な炎を放って彼等を焼き払った。その時の衝撃波は福島まで到達している。さらに命名の由来になったサイのような角からは魔素すら焼き尽くす超高電圧の雷撃を放つ。

 知能も高く、未確認ながら南日本の術士達が使う「霊術」を行使したという噂もある。

 星海 開明。第二部から登場。

 朱璃のはとこ。良く似た顔立ちのせいで頻繁に間違われる。謙遜しているが頭脳でも匹敵。ただしこちらは高校生。

 母とは三年前に死別。父とは幼い頃からすれ違い。ほとんどの人間には友好的で朱璃やアサヒに対しても同様だが、緋意子に対しては敵意を向ける。

 星海 剣照。第二部から登場。

 開明の父で北日本王国軍の元帥。昔は前線で戦っていた。顔に当時の古傷が残っている。

 若い頃の夢を息子に託そうとしたものの、息子は彼の求める資質をことごとく持たずに生まれてきた。失望感を隠し切れず、そのせいで関係が悪化。今もろくに口を利かない。

 大谷 大河。第二部から登場。

 高い能力と王族に対する強い忠誠心を兼ね備えた者しか入隊できない王室護衛隊の隊士。アサヒの護衛役という名目の監視役。実は彼女を傍に付けたことには別の目的もある。

 勘が鋭く頭脳の回転も早い。王室護衛隊の名に恥じない優秀な隊士だが童顔でくせっ毛なことが本人の悩み。

 王族扱いになったアサヒに対しては敬意を払いつつも常に警戒している。

 小畑 小鳥。第二部から登場。

 元は女王付きのメイド。まだ現代社会に不慣れなアサヒのため世話役として貸し出された。

 常にたおやかな笑みの美女。しかし時々妙な圧を感じさせることも。

 天王寺 月華。第二部から登場。

 南日本を護る術士隊の長。外見は十歳程度の少女だが自称四百歳超え。霊術という人知れず伝承されてきた技の使い手。しかし彼女の使う霊術には他の誰も知らないものが多い。霊力の強さは完全に人の域から逸脱しており、地下都市・大阪全体は彼女の展開した結界により二五〇年間守られ続けている。

 崩界の日より二十年ほど前、どこからともなく突然現れて日本政府の中枢に食い込んだ。それ以前の経歴を知る者はいないが、本人は「霊術を魔法と呼ぶ場所にいた」と断片的に語っている。

 民を守るためなら時に老獪で卑劣な真似もする。非情にもなる。それでも多くの者達に慕われており、実質的に南日本を支えている柱。

 月灯。南日本の天皇。発育が良く大きく見えるものの、まだ十二歳。月華を他の誰よりも信頼する。しかし彼女と対立する「議員」達の手の内にあり、発言を抑え込まれている。

 天王寺 風花。第三部から登場。

 月華に継ぐ霊力を誇る最年少術士。気が優しく戦いには不向きな性格。しかし防御にかけては優秀なので月華の護衛につくことが多い。

 一年ほど北日本にスパイとして潜伏していた。向いてないように見えるが、あまりに天真爛漫なので誰にも疑われなかった。そして本人も任務を半分忘れて牛の世話に夢中だった。

 人懐っこい性格。ところが声が大きすぎて室内だと相手が失神することもある。

 天王寺 烈花。第三部から登場。

 烈花の名は術士隊一の炎の使い手と認められた証。元々高い火の精霊との親和性をさらに高めるため髪の一部を赤く染めたり男勝りに振る舞ったりしているが「オレ」という一人称はどうしても馴染めず「ボク」に落ち着いた。

 当代最強の術師と名高い「梅花姉様」に憧れ、彼女の伝説を真似て無茶ばかりしている。そのせいで生傷が絶えない。

 体育会系で下の子達の面倒見が良い。中身は割と乙女で好きなタイプは大きくて優しい人。できれば年上。

 天王寺 斬花。第三部から登場。

 術士隊最弱の霊力。才能に恵まれなかった分を他が絶句するほどの努力で補い、ついには唯一無二の技に開眼した。彼女の振るう刃は離れた場所から障害物を無視してあらゆる物体を両断する。

 烈花とは同い年。親友でライバルで一番仲の良い姉妹。

 愛刀は桜花から受け継いだ「夢桜」という銘の霊刀。

 天王寺 桜花。南日本の術士。第一部でアサヒを護って散った。

 霊術に関しては梅花以上の天才。特に精神に干渉する術を得意としていた。愛刀「夢桜」は彼女のその力を増幅する力を持つ。

 伊東 陽。旭の母。高校在学中に妊娠。相手の男子生徒は彼女の妊娠発覚直後に交通事故で死亡。その後、父親と大喧嘩して勘当され高校も中退。幸いにも地下都市建設計画が開始され働き口はいくらでもあったため、女手一つで息子を育てる。

 細腕からは想像し難い腕力と並外れた体力が自慢。病気にもかからず健康優良児を自称していたが、旭が中学生の時に長年の無理が祟って心臓病を発症し倒れる。

 不幸中の幸いで長期入院中に疎遠だった両親と和解。病気も数年間治療を優先し安静にしていたことで良くなり、地下都市へは両親と息子と共に四人で退避した。

 崩界の日、旭を庇って彼の代わりにシルバー・ホーンの顎にかかり、命を落とす。

 伊東 旭。北日本王国の初代王。魔素を無尽蔵に取り込み身体能力を強化。さらに取り込んだ魔素を自在に放出する能力を有する。

 長年その超人的な力で王国を守り続けて来たが、妻・ドロシーを失ってからしばらくして不意に姿を消す。行方は彼の娘でさえ知らなかった。

 アサヒは十七歳時点の彼を再現した記憶災害。

 全盛期の彼の強さは月華をして「怪物」と言わしめたほど。

 ???。第三部から登場する謎の女。全ての記憶災害の元凶と目される「蛇」を従え、遥かに離れた場所からアサヒ達を標的に様々な攻撃を仕掛けてくる。

 神にも等しい万能の力を振るうも、それに頼らない純粋な体術でも歴戦の特異災害調査官数名を圧倒するレベル。

 その行動からはアサヒと朱璃に対する強い執着が伺える。

 伊東 光理。北日本王国二代目の国王であり最初の女王。父には遠く及ばないものの十分に並外れた魔素吸収能力と身体能力、そして母譲りの頭脳を有し、旭が消息を絶った後の北日本を長く導いた。

 その他の主な業績として地下都市仙台から地下都市秋田への遷都を主導したことが挙げられる。朱璃達の属する特異災害対策局も彼女が国防の一環で設立した組織。

 性格は母親に似て合理主義。けれど弱者を見捨てられない性分も父から引き継いだ。旭の戦友「四騎士」の一人の息子と結婚する。

 王になった直後、伊東という姓は王らしくないという理由から改姓。以後は「星海 光理」と名乗るようになった。

 水無瀬 守人。実質的に漁業を生業とする北日本王国海軍が誇る名艦長。第四部にのみ登場。

 魔素吸収能力も頭脳も特に優れているわけではない。しかし勘と咄嗟の機転は働く方で彼が艦長になって以来、漁獲量は落とさぬまま乗員の死亡率は激減した。それに加えて気さくで陽気な性格でもあるため多くの海兵に慕われている。

 第四部の東京決戦では、とある兵器をノリノリで使用。同行した術士の少女達も気が付けば彼のテンションに同調してしまっていた。素晴らしい兵器の数々を生み出してくれた朱璃に対しては心の底から感謝している。

 仕事と部下達の面倒を見ることにかまけてばかりで、早婚が推奨されている時代なのに三十目前でまだ独身。

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