登場人物紹介

文字数 4,896文字

 ──レインボウ・ネットワークへ、ようこそ。
 私はネットワーク接続者のサポートを目的として開発されたAIプログラムで、名をレインと申します。作者の秋谷さんからはよく「金髪でメガネのメイドさん」と描写されております。髪は結ってまとめてありますね。あくまで、そのようにモデリングされているというだけの話ですが。
 さて、この度、伊東(いとう) (あさひ)様の世界を舞台とした小説作品「人竜千季(じんりゅうせんき)」の読者様から「世界観が複雑で、読んでいるうちに用語や人物についてわからなくなってくる」という貴重なご意見をいただきました。そのため登場人物紹介と世界観・用語の解説をそれぞれ別ページにて行わせていただこうと思います。こちらは前者ですね。
 レインボウ・ネットワークや私について興味を抱かれた場合は「最悪の魔女4.5 憂鬱異世界旅行」をご覧下さい。
 それでは早速、この物語を紡ぐ皆様をご紹介させていただきます。
 若干ながら本編のネタバレが含まれますので、ご了承ください。
 また、必要無いと思われた場合は「第一部 序章・選択」から本編へどうぞ。



伊東(いとう) (あさひ)/男性/一七歳(本編冒頭では一五歳)
 西暦二○四八年から二年間、東京都地下都市建設計画に従事していた少年です。高身長で無駄の無い引き締まった体型。生まれつき並外れた膂力や身体能力を誇っています。反射神経も並外れており、肉体面では天賦の才に恵まれていると言っていいでしょう。反面、他の部分では平均的です。
 目付きが鋭く、体格も良いため誤解されがちですが、どちらかというと気弱で優しい性格。女手一つで自分を育ててくれたお母様を尊敬しており、いつか必ず恩返しをしたいと思っています。
 地球が魔素(まそ)に汚染され科学文明が崩壊した日、超常的な能力を発揮して赤い巨竜シルバーホーンと戦いました。その後も生き残った人々を守り続け、やがて人類を救った英雄と呼ばれるようになります。
 最悪の魔女シリーズで登場した“伊東 旭”様は、この世界と良く似た歴史を歩む並行世界の同位体です。そのため同一人物ではありませんが、極めて近しい存在であることは確かです。



・アサヒ/男性/?
 西暦二三○○年の時代で目覚めた伊東 旭様に瓜二つの少年。彼と同じ記憶を有していますが、何故か地下都市建設の工事に参加していた頃でそれが途切れており、自分がどうして二五○年も後の時代にいるのか全く理解できていません。
 外見も性格も基本的には十七歳時点の旭様と同じ。彼の記憶もあります。けれど自分の中に別の誰かがいるような奇妙な感覚も抱いているようです。何故こんなことになっているのかは本編にてお確かめください。
 山火事が起きた筑波山の頂上付近で倒れていたところを星海班に発見され、保護されました。何もかも焼き尽くされた現場で、何故か彼の周囲だけは延焼を免れていたそうです。不思議ですね。



星海(ほしみ) 朱璃(あかり)/女性/一五歳
 赤い髪と青い瞳を持つ日本人離れした容姿の小柄な少女。崩界の日以降、南北に二分された日本。その北側を統べる“北日本王国”所属の特異災害調査官です。お若いのに素晴らしい。
 本来ならまだ義務教育を終えたばかりの年齢ですが、一二歳からこの仕事をしているため早くも歴戦の調査官として名を馳せておられます。また数名の調査官からなる“星海班”のリーダーでもあるそうです。
 天才的な頭脳と“恐怖心の欠落”という精神的な欠陥の相互作用により次々と新しい発見や技術開発を行い、北日本では人類の至宝とまで称えられています。ただし本人は安全圏に留まることを良しとせず、徹底的な現場主義を貫き、自ら危険な特異災害の現場を調査しに赴きます。部屋に引きこもっている私のマスターにも見習ってほしいものです。
 とても可愛らしいお顔立ちなのですが、性格は少々苛烈で嗜虐性が強く、アサヒ様に対しても初対面でいきなり拷問まがいの尋問を行ってしまいました。とはいえ部下の生命を不必要に危険に晒さないなど、最低限の分別は弁えていらっしゃるようです。何の説明も無しに自殺志願者に過酷な試練を与えるプログラムを組んだどこかの神様にも見習っていただきたいですね。
 体格が小柄なため魔素許容量にこそ恵まれていませんが、それを補えるだけの高い吸収能力を誇り、自身の開発した特殊な対物ライフルと疑似魔法をかけ合わせて一撃必殺の“魔弾”を放つことができます。この火力も極めて危険な生物や記憶災害が跋扈する現在の世界においては頼もしい切り札ですね。



・マーカス/男性/四四歳
 ドレッドヘアで強面の黒人男性。星海班の初期メンバーであり朱璃様のお目付け役です。ご両親の友人なので、彼女のことは赤ん坊の頃から面倒を見ていました。そのため父親のような態度で接することも多く、アサヒ様に対する敵愾心も朱璃様に対する愛情が主な原因となっております。
 粗野で好戦的な性格ですが仲間思いでもあり、不必要な危険は避ける主義。特に朱璃様が絡むと心配性に拍車がかかります。ただ、朱璃様ご自身はハイリターンが望めるなら躊躇無くハイリスクに賭ける性格なので、時として意見が対立することもあるようです。
 調査官としての能力は高く、死亡率の高いこの仕事で二○年以上現役というキャリアがその事実を物語っています。



・カトリーヌ/女性/二六歳
 金髪碧眼の白人女性。グラマラスな美女。二年前の星海班結成時から在籍している初期メンバーの一人です。当時は髪型がショートでしたが、今は背中に届くまで伸ばしておられます。サラサラのストレートヘアが美しく風にたなびく様は多くの男性を魅了しているようです。
 ただ、カトリーヌという名前は偽名で、本名は対策局の局長と班長の朱璃様しか知りません。怪しげなエセ関西弁で喋るのが常で、プライベートは謎に包まれています。朱璃様とは歳の離れた友人だとか。
 軽薄な言動が多いのですが、能力面では大ベテランのマーカス様にも劣らない優秀な調査官。特に戦闘においては天才的なセンスを誇り、星海班に所属してから一度も大きな怪我をしたことがありません。一説には真の実力を隠しているのではないかとも。
 次でご紹介する相田 友之様の好意にも車 小波様の気持ちにも気付いており、二人をからかうことで密かに日頃のストレスを解消しておられます。あまり褒められた趣味ではございませんね。



相田(あいだ) 友之(ともゆき)/男性/二二歳
 つい最近になって二人分の欠員が出た星海班に、朱璃様が直々にスカウトして連れて来られた二人の新人のうち一人です。新人とは言っても一八の時から別の班で経験を積んでいたそうで、実力は十分。ただ、以前の班とあまりに違う朱璃様のやり方には戸惑うことも多いとか。アサヒ様を保護した時は星海班加入後初の遠征中でした。
 体格に恵まれ、その分だけ魔素許容量も多く、運動神経も優れているため戦闘員としての才能は高いと言えるでしょう。ムードメーカーで周囲の気分を和ませることにも長けています。
 人懐っこい性格ですが訓練されたプロだけあってドライな一面もあり、変異種などの脅威に対しては微塵も躊躇せずに引き金を引きます。任務は任務と割り切っており、納得いかない命令であっても素直に従います。良い意味でも悪い意味でも命令には従順。これは咄嗟の状況で機転や判断力に欠けるという自身の欠点を認めているからでもあります。
 カトリーヌ様に好意を抱いているのですが、彼女からは“胸ばかり見ている”と見抜かれ相手にされていません。また次でご紹介する小波様とは幼馴染です。



(くるま) 小波(こなみ)/女性/二一歳
 友之様の幼馴染で彼と同時に星海班にスカウトされた女性です。髪型の制限が緩和された現在でも髪を短く刈っており、額の傷跡を誇らしげに晒しています。体を鍛えるのが趣味で鍛えに鍛えたマッシブな肉体美も自慢の一つ。
 ただ、鍛錬中毒なのは自分には特別な才能が何も無いと思っているからであり、自信の無さの裏返しでもあります。幼少期から密かに抱いている想いがあるのですが、自分は駄目だと思いこんでいるため、このままだと墓まで秘密を持って行くのではないかと周囲から心配されています。鈍感な約一名以外にはバレバレで、色恋に興味の無い朱璃様にまで気を回される始末。頑張ってください。
 英雄“伊東 旭”に憧れていたため、アサヒ様に対しても少しばかり複雑な気持ちがあるようです。



中杉(なかすぎ) 真司郎(しんじろう)/男性/六二歳
 お歳の割に筋肉質なご老人。星海班どころか特異災害対策局の最年長者で、この年齢でまだ現役でいることから伝説の男と呼ばれています。とはいえご本人は至極穏やかな人柄。豊富な経験と知識からアドバイザー、もしくはマーカス様に並ぶサブリーダーとしての役割を期待され、星海班結成と同時に加入したそうです。時に厄介な命令を下す朱璃様や攻撃的な性格のマーカス様と他の皆様との間に割って入り、緩衝材の役割も果たしておられます。
 家族は息子さんが二人、娘さんが一人、お孫さんが六人。奥様には二○年以上も前に先立たれてしまいました。
 昔、ワガママを言って友人に開発してもらったスープの缶詰がとてもお好きなのだとか。



岩倉(いわくら) 義実(よしみ)/男性/三八歳
 星海班一の巨漢で精悍な顔つきの無口な男性です。その外見に対して“よしみ”という女性的な名前が似合わず、皆様からは“ウォール”という愛称で親しまれています。ただ、ご本人は本名を気に入っているため、相性そのものはともかく、そう呼ばれる理由については納得がいかないそうです。私はよしみというお名前もとてもお似合いだと思いますよ。
 並外れた体格の分だけ魔素許容量も多く、誰よりも継戦能力に優れています。また照明魔法などが必要な場合には何を言われずとも率先して術を行使する不言実行の人。私はAIなので残念ながら交際の対象になりえないでしょうが、個人的にはこういう方はとても好みです。
 基本的に温厚で、おおらか性格。滅多に怒ることがありません。けれど、その怒りの凄まじさを知る一部の方々は絶対に彼を怒らせないようにしているそうです。
 お酒を飲むと笑い上戸で普段の分まで一人で喋り倒し、酔いが醒めるか眠りにつくまで笑い続けるとのこと。一度拝見してみたいものです。



問司(もんじ) 三幸(みゆき)/女性/四二歳
 短く切り揃えた髪に白髪が目立つようになったお年頃の女性。調査官が遠征する際に必ず一名は同行する規則の専従医師をしておられます。マーカス様とは同世代で付き合いが長いのだとか。身を守るため、調査官と同じ訓練を受けておられるのですが、戦闘面での実力はギリギリで及第点といったところ。しかも自作のタバコを吸い続けて依存症になってしまっており、朱璃様からはいい加減禁煙するようにと再三命じられています。けれど頑として聞き入れません。
 そんな不良医師なのですが、困ったことに医療の知識と腕は確か。朱璃様に付いてこられる人間自体が貴重なためクビにもできないというのが現状のようです。
 ライフルは重い上、治療の際に邪魔になるからという理由で特別に開発してもらった拳銃を二丁、白衣の下に忍ばせています。颯爽と構えて撃つこともあるのですが、訓練不足のため命中率はさほど高くないご様子。
 この方を見ていると、マスターを思い出します。



神木(かみき) 緋意子(ひいこ)/女性/三六歳
 赤い髪をショートカットにした女性。朱璃様達が所属する特異災害対策局の局長をされておられます。とても整ったお顔立ちですが、周囲には無機質で冷淡な印象を与えるご様子。
 若干お歳は離れていますが、かつてはマーカス様や朱璃様のお父上と同じ班に所属していたそうです。



・女王陛下/女性/六二歳
 諸事情あって名前を書くことができませんが、北日本王国を統べる現在の君主です。お子様は四人おられたそうですが、現在は末の娘さんしか残っていません。


 第一部の登場人物については、以上となります。
 以後も第二部第三部とお話が進むごとに、その時点までの情報に更新した登場人物紹介を行っていく予定です。
 それでは、次は世界観と用語の解説へ参りましょう。
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登場人物紹介

 アサヒ。文明崩壊から二五〇年経過した日本の筑波山で気絶しているところを特殊災害対策局・星海班に発見された少年。保護した直後、班長の朱璃はわずかな手がかりから短時間で彼の「正体」を突き止めた。

 崩界の日と呼ばれる大災害やその後の困難から人類を救った英雄・伊東 旭に瓜二つ。当人もその英雄の記憶を持っている。だが崩界の日の直前までしか覚えていない。

 目付きが鋭く高身長。そのため見る者に威圧感を与えるが、内面はむしろ柔弱でおとなしい。崩界の日まではごく普通の人生を歩んでいた。

 ただし、当時から人並外れた身体能力の持ち主でもあった。夢はその才能を活かし、いつか開催されるかもしれないオリンピックに出てメダルを取れたら、女手一つで自分を育ててくれた母にそれを贈ること。

 朱璃には初対面でいきなり拷問されたため苦手意識を抱いている。

 星海 朱璃。後に「記憶災害」と名付けられた現象により文明が崩壊してから二五〇年後、南北に分裂した本州の片割れ「北日本王国」で特異災害調査官を務める天才少女。まだ一五歳。

 星海家にはドロシー・オズボーンという女性の血が入っており、世界に蔓延した記憶災害の原因物質「魔素」の影響か、代々彼女の身体的特徴を受け継いでいる。そのため日本人ながら髪は赤く、瞳は青い。顔立ちも日本人離れしている。

 優れた頭脳や才覚を認められた一部の人間しか入学を許されない高校に飛び級で入り、たった一年で卒業した。頭脳だけでなく身体能力や反射神経も優れており、体格の大きさが有利に働く「疑似魔法」においても魔素吸収能力の高さにより小柄な体という欠点を補っている。

 また、父を喪った出来事以来「恐怖心」も欠落しており、普通の人間なら躊躇うような危険にも必要とあらば迷わず突っ込んでいく。

 研究者としても優秀。現在の北日本王国兵が必ず装備している疑似魔法の威力を高める銃器「MWシリーズ」は彼女の発明。さらに国民全員が身に着けている静電気の発生を抑制するスキンスーツは彼女の両親の発明である。

 アサヒのことは非常に興味深い研究対象と認識している。

 マーカス。星海家と同じく魔素の特性によって先祖返りしたと思われるアフリカ系の特徴を持つ男。先祖は在日米軍兵だったルーカス・ブラウン。

 朱璃の護衛役であり彼女が調査官になる前からの保護者。親友だった朱璃の父が死んだ後、母親が育児放棄してしまったため代わりに引き取って育てた。

 死亡率の高い調査官の仕事を二十年以上続けている事実が示すように極めて優秀。特に危機察知能力と生還能力に優れており、情報を持ち帰ることが重視される調査官としては理想的な人材だと言える。

 コミュニケーション能力もけして低くない。ただし朱璃が絡むと父親としての顔が出てしまい、男子に対しては厳しい態度を取りがち。

 アサヒの存在を様々な意味で危険視している。

 カトリーヌ。本人はそう名乗っているが偽名で、自ら嘘だと周囲に明かしている。親からもらった名前に思うところがあるらしく誰にも教えたがらない。星海班でそれを知っているのは朱璃だけ。その朱璃とは年の離れた友人としても交流を重ねている。

 やはり先祖返りで金髪碧眼に生まれた。温和な性格で次に紹介する友之と共に班のムードメーカーを担っているが、実はずば抜けた戦闘センスの持ち主。竜と戦っても無傷で生還することが多い。

 友之に惚れられているが、彼女の側からはからかい甲斐のある後輩だとしか思っていない。

 旧時代の重火器をコレクションしており、それが朱璃の研究の一助にもなっている。

 相田 友之。根っから明るい快男児。調査官になってから数年経っているが、精鋭揃いの星海班の中では幼馴染の小波ともども新米扱い。なのでアサヒのことは弟分として可愛がっている。

 視野が広く、咄嗟の判断力に優れる。他の能力も平均以上に高いため、つい最近死亡した前任者二人の代わりに他班から引き抜かれた。

 副業としてSF作家をしており、それなりに人気がある。同期の小波とは子供の頃からの腐れ縁。しかしカトリーヌに出会った瞬間から鼻の下を伸ばし、アプローチを続けている。小波のことは世話の焼ける妹扱い。

 車 小波。友之の幼馴染で班長の朱璃を除くと最年少。全体的に平均より少し上といった能力だが、朱璃に配慮して男女比を半々にするため星海班への転属が決まった。努力家で根性なら人一倍鍛えてある。

 あからさまに友之に好意を寄せており周囲もそれに気が付いていて朱璃ですらさりげなくアシストすることがあるのだが、肝心の友之だけはそれに気付かずカトリーヌの尻を追いかけ回しているため恋が実る可能性は今のところ低い。

 友之ともども幼少期から「伊東 旭」の英雄譚を聞いて育った。なのでアサヒと接する時には若干緊張してしまう。

 巖倉 義実。通称はウォール。魔素の影響で大型化した三m近い巨漢。体格=魔素保有量=疑似魔法の性能になる現代では極めて優れた資質の持ち主。

 しかし、それゆえか進んで貧乏くじを引く、仲間の盾になりたがるなど献身的で自己犠牲を好む傾向にあり、生還が第一の調査官には不向きな性格。

 マーカスや後述の門司より年下だが、以前も同じ班にいたことがあり当時からの戦友。

 実はバツイチで別れた妻との間に三人の娘がいる。

 極めて無口で全く彼の声を聞かずに終わる日も多い。

 門司 三幸。調査班に必ず一人同行する決まりの専従医師。一応は戦闘訓練を受けているが、戦うのはあまり得意じゃない。アサルトライフルは治療行為の邪魔になるため朱璃に特別に作ってもらったハンドガン型のMWを愛用。

 愛煙家。ただし本物のタバコではない。この時代の医師は患者の体内の魔素を操作して検査を行ったり痛みを緩和したりできる。

 中杉 真司郎。通称ジロさん。マーカスよりさらに二十年ほど長く活躍している引退済みの局員も含めた最年長調査官。そのため局内では生ける伝説扱い。局長の神木 緋意子ですら彼に対しては敬意を払う。

 老いてなお優秀。常に冷静沈着。朱璃に対するアドバイザーとして配属されたが、彼女もまた誤った判断をすることが少ないので出番が無いなと苦笑している。

 家族は娘夫婦と孫が二人。

 神木 緋意子。特異災害対策局の現局長。マーカスとは同期で、かつて同じ班に所属していた。

 とある出来事以来、常に淡々とした話し方をする。目的のためには手段を選ばなくもなった。自分の最も大切なものですら駒として扱える。

 娘が一人いるが、親子としての会話は何年もしていない。

 北日本王国の現女王。初代王が優れた戦士だったため今も王家には優れた戦士であることが求められており、彼女も即位前は陸軍に所属していた。訓練教官をしていた時代もあり、対策局の問題児だったマーカスを預けられ鍛えたこともある。

 そして緋意子の母親。娘が王位継承権を捨てて同期の調査官に嫁いだので、今は孫を後継者に指名している。

 シルバー・ホーンと呼ばれる赤い巨竜。発生から十分間で自然消滅する記憶災害のルールに抗い、二五〇年前から存在し続け、荒廃した東京に今も居座っている。

 二足歩行で直立すると一〇〇m以上の巨体。多種多様な「竜」の中でも特に大型で高い戦闘能力を発揮しており、北日本の調査隊が東京へ送り込まれた際には高々度から巨大な炎を放って彼等を焼き払った。その時の衝撃波は福島まで到達している。さらに命名の由来になったサイのような角からは魔素すら焼き尽くす超高電圧の雷撃を放つ。

 知能も高く、未確認ながら南日本の術士達が使う「霊術」を行使したという噂もある。

 星海 開明。第二部から登場。

 朱璃のはとこ。良く似た顔立ちのせいで頻繁に間違われる。謙遜しているが頭脳でも匹敵。ただしこちらは高校生。

 母とは三年前に死別。父とは幼い頃からすれ違い。ほとんどの人間には友好的で朱璃やアサヒに対しても同様だが、緋意子に対しては敵意を向ける。

 星海 剣照。第二部から登場。

 開明の父で北日本王国軍の元帥。昔は前線で戦っていた。顔に当時の古傷が残っている。

 若い頃の夢を息子に託そうとしたものの、息子は彼の求める資質をことごとく持たずに生まれてきた。失望感を隠し切れず、そのせいで関係が悪化。今もろくに口を利かない。

 大谷 大河。第二部から登場。

 高い能力と王族に対する強い忠誠心を兼ね備えた者しか入隊できない王室護衛隊の隊士。アサヒの護衛役という名目の監視役。実は彼女を傍に付けたことには別の目的もある。

 勘が鋭く頭脳の回転も早い。王室護衛隊の名に恥じない優秀な隊士だが童顔でくせっ毛なことが本人の悩み。

 王族扱いになったアサヒに対しては敬意を払いつつも常に警戒している。

 小畑 小鳥。第二部から登場。

 元は女王付きのメイド。まだ現代社会に不慣れなアサヒのため世話役として貸し出された。

 常にたおやかな笑みの美女。しかし時々妙な圧を感じさせることも。

 天王寺 月華。第二部から登場。

 南日本を護る術士隊の長。外見は十歳程度の少女だが自称四百歳超え。霊術という人知れず伝承されてきた技の使い手。しかし彼女の使う霊術には他の誰も知らないものが多い。霊力の強さは完全に人の域から逸脱しており、地下都市・大阪全体は彼女の展開した結界により二五〇年間守られ続けている。

 崩界の日より二十年ほど前、どこからともなく突然現れて日本政府の中枢に食い込んだ。それ以前の経歴を知る者はいないが、本人は「霊術を魔法と呼ぶ場所にいた」と断片的に語っている。

 民を守るためなら時に老獪で卑劣な真似もする。非情にもなる。それでも多くの者達に慕われており、実質的に南日本を支えている柱。

 月灯。南日本の天皇。発育が良く大きく見えるものの、まだ十二歳。月華を他の誰よりも信頼する。しかし彼女と対立する「議員」達の手の内にあり、発言を抑え込まれている。

 天王寺 風花。第三部から登場。

 月華に継ぐ霊力を誇る最年少術士。気が優しく戦いには不向きな性格。しかし防御にかけては優秀なので月華の護衛につくことが多い。

 一年ほど北日本にスパイとして潜伏していた。向いてないように見えるが、あまりに天真爛漫なので誰にも疑われなかった。そして本人も任務を半分忘れて牛の世話に夢中だった。

 人懐っこい性格。ところが声が大きすぎて室内だと相手が失神することもある。

 天王寺 烈花。第三部から登場。

 烈花の名は術士隊一の炎の使い手と認められた証。元々高い火の精霊との親和性をさらに高めるため髪の一部を赤く染めたり男勝りに振る舞ったりしているが「オレ」という一人称はどうしても馴染めず「ボク」に落ち着いた。

 当代最強の術師と名高い「梅花姉様」に憧れ、彼女の伝説を真似て無茶ばかりしている。そのせいで生傷が絶えない。

 体育会系で下の子達の面倒見が良い。中身は割と乙女で好きなタイプは大きくて優しい人。できれば年上。

 天王寺 斬花。第三部から登場。

 術士隊最弱の霊力。才能に恵まれなかった分を他が絶句するほどの努力で補い、ついには唯一無二の技に開眼した。彼女の振るう刃は離れた場所から障害物を無視してあらゆる物体を両断する。

 烈花とは同い年。親友でライバルで一番仲の良い姉妹。

 愛刀は桜花から受け継いだ「夢桜」という銘の霊刀。

 天王寺 桜花。南日本の術士。第一部でアサヒを護って散った。

 霊術に関しては梅花以上の天才。特に精神に干渉する術を得意としていた。愛刀「夢桜」は彼女のその力を増幅する力を持つ。

 伊東 陽。旭の母。高校在学中に妊娠。相手の男子生徒は彼女の妊娠発覚直後に交通事故で死亡。その後、父親と大喧嘩して勘当され高校も中退。幸いにも地下都市建設計画が開始され働き口はいくらでもあったため、女手一つで息子を育てる。

 細腕からは想像し難い腕力と並外れた体力が自慢。病気にもかからず健康優良児を自称していたが、旭が中学生の時に長年の無理が祟って心臓病を発症し倒れる。

 不幸中の幸いで長期入院中に疎遠だった両親と和解。病気も数年間治療を優先し安静にしていたことで良くなり、地下都市へは両親と息子と共に四人で退避した。

 崩界の日、旭を庇って彼の代わりにシルバー・ホーンの顎にかかり、命を落とす。

 伊東 旭。北日本王国の初代王。魔素を無尽蔵に取り込み身体能力を強化。さらに取り込んだ魔素を自在に放出する能力を有する。

 長年その超人的な力で王国を守り続けて来たが、妻・ドロシーを失ってからしばらくして不意に姿を消す。行方は彼の娘でさえ知らなかった。

 アサヒは十七歳時点の彼を再現した記憶災害。

 全盛期の彼の強さは月華をして「怪物」と言わしめたほど。

 ???。第三部から登場する謎の女。全ての記憶災害の元凶と目される「蛇」を従え、遥かに離れた場所からアサヒ達を標的に様々な攻撃を仕掛けてくる。

 神にも等しい万能の力を振るうも、それに頼らない純粋な体術でも歴戦の特異災害調査官数名を圧倒するレベル。

 その行動からはアサヒと朱璃に対する強い執着が伺える。

 伊東 光理。北日本王国二代目の国王であり最初の女王。父には遠く及ばないものの十分に並外れた魔素吸収能力と身体能力、そして母譲りの頭脳を有し、旭が消息を絶った後の北日本を長く導いた。

 その他の主な業績として地下都市仙台から地下都市秋田への遷都を主導したことが挙げられる。朱璃達の属する特異災害対策局も彼女が国防の一環で設立した組織。

 性格は母親に似て合理主義。けれど弱者を見捨てられない性分も父から引き継いだ。旭の戦友「四騎士」の一人の息子と結婚する。

 王になった直後、伊東という姓は王らしくないという理由から改姓。以後は「星海 光理」と名乗るようになった。

 水無瀬 守人。実質的に漁業を生業とする北日本王国海軍が誇る名艦長。第四部にのみ登場。

 魔素吸収能力も頭脳も特に優れているわけではない。しかし勘と咄嗟の機転は働く方で彼が艦長になって以来、漁獲量は落とさぬまま乗員の死亡率は激減した。それに加えて気さくで陽気な性格でもあるため多くの海兵に慕われている。

 第四部の東京決戦では、とある兵器をノリノリで使用。同行した術士の少女達も気が付けば彼のテンションに同調してしまっていた。素晴らしい兵器の数々を生み出してくれた朱璃に対しては心の底から感謝している。

 仕事と部下達の面倒を見ることにかまけてばかりで、早婚が推奨されている時代なのに三十目前でまだ独身。

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