世界観・用語解説
文字数 4,360文字
それでは、こちらへどうぞ。
・南日本
北日本王国と長年敵対関係にある、もう一つの日本。天皇陛下がいらっしゃるため自分達こそが正当な日本国だと主張しており、国名も「日本」と名乗っておいでです。南日本というのは北日本王国が使う呼称ですね。
北の英雄・
人口は南日本全体で一〇万人ほど。生き残っている地下都市は大阪と京都の二つだけです。この二府には複数の地下都市が存在していましたが、やはりそれぞれ一つしか残っていません。術士隊という強力な防衛力を有しながら、国全体として見ると北日本よりかなり追い込まれた状況にあると言えるでしょう。
ただ、食糧事情はさほど悪くなく、特に防人である術士隊には毎日ご馳走が用意されるそうです。
現在も天皇陛下を頂点に戴く国ではあるのですが、実質的な主権は“国会”が握っています。彼等は民からは“何もせず威張り散らす無能”と見なされており、反面、術士隊を率いて人々を守る月華様は大多数から支持を得ています。しかし、その月華様は“国会”を必要以上に諫めず、ある程度の警戒心を持って接しておられるようです。
・霊術
崩界の日以降に月華様が南日本の人々の中から素養ある方々を選び出し伝授した技術。本来は“魔法”と呼ばれていましたが、元から日本の歴史の裏側で連綿と受け継がれていた近似の技法と似通っている部分が多かったため、このように名を改められました。西洋魔法とも異なる部分があり、彼女がどこでこの技術を学んだのかは未だ謎に包まれています。
基本的には人間よりも上位の存在、すなわち神霊の類に語りかけ、その力を借りる技術。霊力はその対価として支払われます。ですが、月華様のように極めて強い霊力を持つ場合には、霊力そのものを放出して攻防に用いることも可能です。彼女は霊力障壁と、霊力を糸状にして操る術を最も得意としています。
この霊力とは、言い換えれば精神力。魂を源とする力で、基本的には全ての人間が有しています。ただし出力、つまり霊力を外部に放出するための“門”の大きさや、汲み出せる量の限界値には個人差があり、ある程度の総合力を認められなければ術士にはなれません。また、多くの人間はその“門”が閉じた状態にあり、これを開く、すなわち“開門”することで後天的に才能が目覚める場合もございます。基本的に門の大きさは変えられないものなのですが、例外として第二次性徴が始まる前の段階であれば、過酷な状況に身を置くことで拡張することも可能です。けっして高い確率で成功するわけではないのですが。
それと、先程申し上げた月華様のお得意とする術“霊力障壁”は、自他の違いに対する認識を霊術によって物質にまで干渉できるよう強化したものなので、術者の認識次第では特定の対象だけを透過させたり、逆に遮断したりすることができます。また、維持や強化に霊力を用いる特性上、範囲を狭めるほど強度が上がるという点においては、疑似魔法の魔素障壁と同じだと言えるでしょう。
風花様は風、烈花様は火というように個々により相性の良い神霊が決まっており、時には複数の属性に適性を持つことも。その点において朱璃様は、月華様に曰く“万能”だとか。
・非合法な食品
北日本では基本的に食糧は配給制です。とはいえ、それだけではやはり民心に不満が溜まる一方。
そこでお国は、彼等が食品廃棄物などからこっそり作っている非合法な食品の取引を黙認しています。もちろん、健康を害するものであったり、あまりにもあからさまな商売をされていた場合は別ですよ。
第三部本編にはアサヒ様達がぷにぷにとした食感の甘いお菓子を食べる場面があります。こちらは食品廃棄物から抽出したでんぷんと果糖を組み合わせたもので、葛餅やゆべしのようなものをご想像ください。
また、マーカス様や
……福島など、王都から遠く離れた土地では、多少羽目を外してしまわれるようですが。
・地脈とプレート境界線
地下には地脈と呼ばれるエネルギーラインが存在しており、その多くは大陸プレート同士の境界線付近に集まっています。
また、地脈沿いには地下水脈も通っていることが多く、実質的に魔素の通り道でもあるのです。
そして、地中でも石英などに圧力がかかることにより電力が発生してしまうことがあり、ここに魔素が触れた場合、やはり記憶災害が発生します。地震が頻発する地域では、自然災害と記憶災害によるものとが入り混じっているのかもしれません。
また、井戸のように地上から地下深くの水脈に繋がっている場所では、このような地下に端を発する記憶災害が地上に出現してしまうことも多く、大陸のプレート境界線上では記憶災害との遭遇率が高くなることも判明しております。
・白い大蛇
福島での戦いの際、最後に姿を現し、アサヒ様を取り込もうとした存在。その正体は記憶災害ではなく“自我を持った魔素”とでも呼ぶべき存在。記憶災害と似てはいますが、魔素そのものであり、記憶災害を縛る維持限界というルールが適用されません。
彼女は地下水脈などを通じて遠隔地に思念を飛ばし、魔素により強い影響を受けた生物、すなわち変異種や生物型記憶災害を操ることができます。ただし、高度な知性を持つ生物ほど操作が難しく、人間は一人を支配下に置くにも数分の時を要するため嫌っているようです。
彼女のこの思念波は日光や塩と相性が悪いようで、昼間は有効射程が大幅に短くなります。また海に棲む生物に対しても影響を及ぼしにくいようです。
自身も極めて高い知性を有しており、かの赤い巨竜シルバーホーン様でさえ格上と認めるほどの強力な個体。しかも現在は本来の姿より弱体化した状態で、完全復活を果たした暁には誰にも倒せなくなるとまで評されています。
・
長年南日本の人々を苦しめて来た強大な敵。こちらも、魔素が発生原因の一つでありながら記憶災害というカテゴリーには分類されず、月華様は“怪異”もしくは“無数の死者の集合体”と語られました。その姿は海そのものとでも呼ぶべきもので、大阪には巨大津波という形で月に一度、必ず襲来しています。
年々力を増しており、もはや月華様の御力でも抗しきれず、次の攻撃では確実に壊滅的な被害を受けることが予測されています。
長年この怪物と戦い続けた結果、関西一円の地上部分はすでに“何も無い”状態になってしまっているそうです。
・DA一〇二とMW五〇四
前者は第二部終盤において、ついに実用化に到ったパワーアシストスーツの正式名称。チャペルでの戦闘時にはまだ取り付けられていなかった装甲が追加され、現在は西洋の騎士の全身甲冑めいた外見になりました。
必然、重量も増したのですが、魔素と結合した液体を操作して伸縮させる水圧式シリンダーが組み込まれており、そのおかげで生身の状態を大きく上回る膂力を引き出すことができます。
また、アサヒ様の戦闘スタイルを参考にして取り付けられた各部の噴射機から圧縮された魔素を放出することで瞬間的な加速と圧縮魔素を相手に叩きつける攻撃も可能としており、装着者はこれを身に着けただけで術士以上のパワーとスピードを獲得することになります。
後者、MW五〇四はこのパワーアシストスーツ装着者専用に新たに設計された兵器で、ソ連が開発したNSVという重機関銃がベースになっています。反動が強く普通は地面などに固定して使用するものなのですが、アシストスーツのパワーがあれば手持ちの火器として使用可能。発射される銃弾は朱璃様が愛用されている対物ライフルのそれと同等の一二.七mm弾。それが高速で連射されるわけですので、圧倒的な攻撃力を誇っています。
加えて、DA一〇二の動力源になっている人工高密度魔素結晶から潤沢な魔素の供給が得られることから、装着者自身には負荷をかけず、生身での使用時の数倍の威力の疑似魔法も発生させることが可能です。
なおMWがマジック・ワンドの略であるように、DAはドラゴン・アーマーの略という非常にシンプルなネーミング。朱璃様はこのような単純明快な名付け方を好まれるようですね。
・ゲート
第一部の解説でも触れましたが、高密度魔素結晶体“竜の心臓”は異なる宇宙へ繋がるゲートの役割も果たします。ただし、ごく一部の例外を除き、ゲート化するのは電力に接触して記憶災害を発生させている最中に限られ、そうなる前の状態は“閉じて”いると表現されます。
DA一〇二の動力源は、この“閉じた”状態の結晶です。人工的に魔素を圧縮して造られたもので、その過程において“記憶”を抜き出されているためなんの情報も保存していない無垢な結晶。そのため暴発事故を起こす危険性が大幅に軽減されています。
ただ、ゲート化していないためアサヒ様の体内の“心臓”のように無限に魔素を放出するということはございません。DA一〇二の連続稼働時間は全力で戦闘を行った場合、二〇分程度だと言われており、何かしらアクションを行う度にこの結晶を構成する魔素を削っています。結晶が無くなってしまったら、ただの重い甲冑となり、ほとんど身動きがとれません。人工結晶を封じた別のカートリッジに交換することで再度行動可能となります。
一度ゲート化してしまった“心臓”は維持限界のルールによって一〇分後には自然消滅します。ただ、このゲートからは異世界の生物の記憶や、時に生物そのものが流れ込んで来ることもあるようです。
第三部における追加設定は以上となりますが、もし、本編を読んで疑問に思われたことなどがあれば、コメント、もしくはTwitterでご質問ください。それぞれに回答させていただいた後、こちらにも追記して参ります。