世界観・用語解説

文字数 4,360文字

 では、第三部で新たに公開された設定についてもご説明させていただきます。前回同様、第一部・第二部編でご説明した分については割愛いたします。また、若干のネタバレが含まれますので、ご注意ください。
 それでは、こちらへどうぞ。


・南日本
 北日本王国と長年敵対関係にある、もう一つの日本。天皇陛下がいらっしゃるため自分達こそが正当な日本国だと主張しており、国名も「日本」と名乗っておいでです。南日本というのは北日本王国が使う呼称ですね。
 北の英雄・伊東(いとう) (あさひ)様をも手玉に取った“魔女”こと天王寺(てんのうじ) 月華(げっか)様を筆頭に、彼女によって鍛えられた術士隊が国防の要。彼女達──正確には、少数ながら男性を含む──術士が扱う霊術は北日本で発展した疑似魔法に比べ遥かに強力で使い勝手も良く、ある程度熟達した術士なら複数人でかかることにより“竜”とも渡り合えます。
 人口は南日本全体で一〇万人ほど。生き残っている地下都市は大阪と京都の二つだけです。この二府には複数の地下都市が存在していましたが、やはりそれぞれ一つしか残っていません。術士隊という強力な防衛力を有しながら、国全体として見ると北日本よりかなり追い込まれた状況にあると言えるでしょう。
 ただ、食糧事情はさほど悪くなく、特に防人である術士隊には毎日ご馳走が用意されるそうです。
 現在も天皇陛下を頂点に戴く国ではあるのですが、実質的な主権は“国会”が握っています。彼等は民からは“何もせず威張り散らす無能”と見なされており、反面、術士隊を率いて人々を守る月華様は大多数から支持を得ています。しかし、その月華様は“国会”を必要以上に諫めず、ある程度の警戒心を持って接しておられるようです。


・霊術
 崩界の日以降に月華様が南日本の人々の中から素養ある方々を選び出し伝授した技術。本来は“魔法”と呼ばれていましたが、元から日本の歴史の裏側で連綿と受け継がれていた近似の技法と似通っている部分が多かったため、このように名を改められました。西洋魔法とも異なる部分があり、彼女がどこでこの技術を学んだのかは未だ謎に包まれています。
 基本的には人間よりも上位の存在、すなわち神霊の類に語りかけ、その力を借りる技術。霊力はその対価として支払われます。ですが、月華様のように極めて強い霊力を持つ場合には、霊力そのものを放出して攻防に用いることも可能です。彼女は霊力障壁と、霊力を糸状にして操る術を最も得意としています。
 この霊力とは、言い換えれば精神力。魂を源とする力で、基本的には全ての人間が有しています。ただし出力、つまり霊力を外部に放出するための“門”の大きさや、汲み出せる量の限界値には個人差があり、ある程度の総合力を認められなければ術士にはなれません。また、多くの人間はその“門”が閉じた状態にあり、これを開く、すなわち“開門”することで後天的に才能が目覚める場合もございます。基本的に門の大きさは変えられないものなのですが、例外として第二次性徴が始まる前の段階であれば、過酷な状況に身を置くことで拡張することも可能です。けっして高い確率で成功するわけではないのですが。
 それと、先程申し上げた月華様のお得意とする術“霊力障壁”は、自他の違いに対する認識を霊術によって物質にまで干渉できるよう強化したものなので、術者の認識次第では特定の対象だけを透過させたり、逆に遮断したりすることができます。また、維持や強化に霊力を用いる特性上、範囲を狭めるほど強度が上がるという点においては、疑似魔法の魔素障壁と同じだと言えるでしょう。
 風花様は風、烈花様は火というように個々により相性の良い神霊が決まっており、時には複数の属性に適性を持つことも。その点において朱璃様は、月華様に曰く“万能”だとか。


・非合法な食品
 北日本では基本的に食糧は配給制です。とはいえ、それだけではやはり民心に不満が溜まる一方。
 そこでお国は、彼等が食品廃棄物などからこっそり作っている非合法な食品の取引を黙認しています。もちろん、健康を害するものであったり、あまりにもあからさまな商売をされていた場合は別ですよ。
 第三部本編にはアサヒ様達がぷにぷにとした食感の甘いお菓子を食べる場面があります。こちらは食品廃棄物から抽出したでんぷんと果糖を組み合わせたもので、葛餅やゆべしのようなものをご想像ください。
 また、マーカス様や巌倉(いわくら)様が飲酒なさる場面もございますが、この場面でのお酒は危険な任務に従事する軍人や調査官に対し褒賞として与えられるもので、合法的な品です。ただ、飲み過ぎて任務に支障を来したりした場合にはお叱りを受けた上、残りのお酒は没収。さらに一定期間軍務を離れて農作業に従事するなどの罰則も下されることになっており、ほとんどの方は節度を守って飲酒することを心がけています。
 ……福島など、王都から遠く離れた土地では、多少羽目を外してしまわれるようですが。


・地脈とプレート境界線
 地下には地脈と呼ばれるエネルギーラインが存在しており、その多くは大陸プレート同士の境界線付近に集まっています。
 また、地脈沿いには地下水脈も通っていることが多く、実質的に魔素の通り道でもあるのです。
 そして、地中でも石英などに圧力がかかることにより電力が発生してしまうことがあり、ここに魔素が触れた場合、やはり記憶災害が発生します。地震が頻発する地域では、自然災害と記憶災害によるものとが入り混じっているのかもしれません。
 また、井戸のように地上から地下深くの水脈に繋がっている場所では、このような地下に端を発する記憶災害が地上に出現してしまうことも多く、大陸のプレート境界線上では記憶災害との遭遇率が高くなることも判明しております。


・白い大蛇
 福島での戦いの際、最後に姿を現し、アサヒ様を取り込もうとした存在。その正体は記憶災害ではなく“自我を持った魔素”とでも呼ぶべき存在。記憶災害と似てはいますが、魔素そのものであり、記憶災害を縛る維持限界というルールが適用されません。
 彼女は地下水脈などを通じて遠隔地に思念を飛ばし、魔素により強い影響を受けた生物、すなわち変異種や生物型記憶災害を操ることができます。ただし、高度な知性を持つ生物ほど操作が難しく、人間は一人を支配下に置くにも数分の時を要するため嫌っているようです。
 彼女のこの思念波は日光や塩と相性が悪いようで、昼間は有効射程が大幅に短くなります。また海に棲む生物に対しても影響を及ぼしにくいようです。
 自身も極めて高い知性を有しており、かの赤い巨竜シルバーホーン様でさえ格上と認めるほどの強力な個体。しかも現在は本来の姿より弱体化した状態で、完全復活を果たした暁には誰にも倒せなくなるとまで評されています。


蒼黒(そうこく)
 長年南日本の人々を苦しめて来た強大な敵。こちらも、魔素が発生原因の一つでありながら記憶災害というカテゴリーには分類されず、月華様は“怪異”もしくは“無数の死者の集合体”と語られました。その姿は海そのものとでも呼ぶべきもので、大阪には巨大津波という形で月に一度、必ず襲来しています。
 年々力を増しており、もはや月華様の御力でも抗しきれず、次の攻撃では確実に壊滅的な被害を受けることが予測されています。
 長年この怪物と戦い続けた結果、関西一円の地上部分はすでに“何も無い”状態になってしまっているそうです。


・DA一〇二とMW五〇四
 前者は第二部終盤において、ついに実用化に到ったパワーアシストスーツの正式名称。チャペルでの戦闘時にはまだ取り付けられていなかった装甲が追加され、現在は西洋の騎士の全身甲冑めいた外見になりました。
 必然、重量も増したのですが、魔素と結合した液体を操作して伸縮させる水圧式シリンダーが組み込まれており、そのおかげで生身の状態を大きく上回る膂力を引き出すことができます。
 また、アサヒ様の戦闘スタイルを参考にして取り付けられた各部の噴射機から圧縮された魔素を放出することで瞬間的な加速と圧縮魔素を相手に叩きつける攻撃も可能としており、装着者はこれを身に着けただけで術士以上のパワーとスピードを獲得することになります。
 後者、MW五〇四はこのパワーアシストスーツ装着者専用に新たに設計された兵器で、ソ連が開発したNSVという重機関銃がベースになっています。反動が強く普通は地面などに固定して使用するものなのですが、アシストスーツのパワーがあれば手持ちの火器として使用可能。発射される銃弾は朱璃様が愛用されている対物ライフルのそれと同等の一二.七mm弾。それが高速で連射されるわけですので、圧倒的な攻撃力を誇っています。
 加えて、DA一〇二の動力源になっている人工高密度魔素結晶から潤沢な魔素の供給が得られることから、装着者自身には負荷をかけず、生身での使用時の数倍の威力の疑似魔法も発生させることが可能です。
 なおMWがマジック・ワンドの略であるように、DAはドラゴン・アーマーの略という非常にシンプルなネーミング。朱璃様はこのような単純明快な名付け方を好まれるようですね。


・ゲート
 第一部の解説でも触れましたが、高密度魔素結晶体“竜の心臓”は異なる宇宙へ繋がるゲートの役割も果たします。ただし、ごく一部の例外を除き、ゲート化するのは電力に接触して記憶災害を発生させている最中に限られ、そうなる前の状態は“閉じて”いると表現されます。
 DA一〇二の動力源は、この“閉じた”状態の結晶です。人工的に魔素を圧縮して造られたもので、その過程において“記憶”を抜き出されているためなんの情報も保存していない無垢な結晶。そのため暴発事故を起こす危険性が大幅に軽減されています。
 ただ、ゲート化していないためアサヒ様の体内の“心臓”のように無限に魔素を放出するということはございません。DA一〇二の連続稼働時間は全力で戦闘を行った場合、二〇分程度だと言われており、何かしらアクションを行う度にこの結晶を構成する魔素を削っています。結晶が無くなってしまったら、ただの重い甲冑となり、ほとんど身動きがとれません。人工結晶を封じた別のカートリッジに交換することで再度行動可能となります。
 一度ゲート化してしまった“心臓”は維持限界のルールによって一〇分後には自然消滅します。ただ、このゲートからは異世界の生物の記憶や、時に生物そのものが流れ込んで来ることもあるようです。


 第三部における追加設定は以上となりますが、もし、本編を読んで疑問に思われたことなどがあれば、コメント、もしくはTwitterでご質問ください。それぞれに回答させていただいた後、こちらにも追記して参ります。
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登場人物紹介

 アサヒ。文明崩壊から二五〇年経過した日本の筑波山で気絶しているところを特殊災害対策局・星海班に発見された少年。保護した直後、班長の朱璃はわずかな手がかりから短時間で彼の「正体」を突き止めた。

 崩界の日と呼ばれる大災害やその後の困難から人類を救った英雄・伊東 旭に瓜二つ。当人もその英雄の記憶を持っている。だが崩界の日の直前までしか覚えていない。

 目付きが鋭く高身長。そのため見る者に威圧感を与えるが、内面はむしろ柔弱でおとなしい。崩界の日まではごく普通の人生を歩んでいた。

 ただし、当時から人並外れた身体能力の持ち主でもあった。夢はその才能を活かし、いつか開催されるかもしれないオリンピックに出てメダルを取れたら、女手一つで自分を育ててくれた母にそれを贈ること。

 朱璃には初対面でいきなり拷問されたため苦手意識を抱いている。

 星海 朱璃。後に「記憶災害」と名付けられた現象により文明が崩壊してから二五〇年後、南北に分裂した本州の片割れ「北日本王国」で特異災害調査官を務める天才少女。まだ一五歳。

 星海家にはドロシー・オズボーンという女性の血が入っており、世界に蔓延した記憶災害の原因物質「魔素」の影響か、代々彼女の身体的特徴を受け継いでいる。そのため日本人ながら髪は赤く、瞳は青い。顔立ちも日本人離れしている。

 優れた頭脳や才覚を認められた一部の人間しか入学を許されない高校に飛び級で入り、たった一年で卒業した。頭脳だけでなく身体能力や反射神経も優れており、体格の大きさが有利に働く「疑似魔法」においても魔素吸収能力の高さにより小柄な体という欠点を補っている。

 また、父を喪った出来事以来「恐怖心」も欠落しており、普通の人間なら躊躇うような危険にも必要とあらば迷わず突っ込んでいく。

 研究者としても優秀。現在の北日本王国兵が必ず装備している疑似魔法の威力を高める銃器「MWシリーズ」は彼女の発明。さらに国民全員が身に着けている静電気の発生を抑制するスキンスーツは彼女の両親の発明である。

 アサヒのことは非常に興味深い研究対象と認識している。

 マーカス。星海家と同じく魔素の特性によって先祖返りしたと思われるアフリカ系の特徴を持つ男。先祖は在日米軍兵だったルーカス・ブラウン。

 朱璃の護衛役であり彼女が調査官になる前からの保護者。親友だった朱璃の父が死んだ後、母親が育児放棄してしまったため代わりに引き取って育てた。

 死亡率の高い調査官の仕事を二十年以上続けている事実が示すように極めて優秀。特に危機察知能力と生還能力に優れており、情報を持ち帰ることが重視される調査官としては理想的な人材だと言える。

 コミュニケーション能力もけして低くない。ただし朱璃が絡むと父親としての顔が出てしまい、男子に対しては厳しい態度を取りがち。

 アサヒの存在を様々な意味で危険視している。

 カトリーヌ。本人はそう名乗っているが偽名で、自ら嘘だと周囲に明かしている。親からもらった名前に思うところがあるらしく誰にも教えたがらない。星海班でそれを知っているのは朱璃だけ。その朱璃とは年の離れた友人としても交流を重ねている。

 やはり先祖返りで金髪碧眼に生まれた。温和な性格で次に紹介する友之と共に班のムードメーカーを担っているが、実はずば抜けた戦闘センスの持ち主。竜と戦っても無傷で生還することが多い。

 友之に惚れられているが、彼女の側からはからかい甲斐のある後輩だとしか思っていない。

 旧時代の重火器をコレクションしており、それが朱璃の研究の一助にもなっている。

 相田 友之。根っから明るい快男児。調査官になってから数年経っているが、精鋭揃いの星海班の中では幼馴染の小波ともども新米扱い。なのでアサヒのことは弟分として可愛がっている。

 視野が広く、咄嗟の判断力に優れる。他の能力も平均以上に高いため、つい最近死亡した前任者二人の代わりに他班から引き抜かれた。

 副業としてSF作家をしており、それなりに人気がある。同期の小波とは子供の頃からの腐れ縁。しかしカトリーヌに出会った瞬間から鼻の下を伸ばし、アプローチを続けている。小波のことは世話の焼ける妹扱い。

 車 小波。友之の幼馴染で班長の朱璃を除くと最年少。全体的に平均より少し上といった能力だが、朱璃に配慮して男女比を半々にするため星海班への転属が決まった。努力家で根性なら人一倍鍛えてある。

 あからさまに友之に好意を寄せており周囲もそれに気が付いていて朱璃ですらさりげなくアシストすることがあるのだが、肝心の友之だけはそれに気付かずカトリーヌの尻を追いかけ回しているため恋が実る可能性は今のところ低い。

 友之ともども幼少期から「伊東 旭」の英雄譚を聞いて育った。なのでアサヒと接する時には若干緊張してしまう。

 巖倉 義実。通称はウォール。魔素の影響で大型化した三m近い巨漢。体格=魔素保有量=疑似魔法の性能になる現代では極めて優れた資質の持ち主。

 しかし、それゆえか進んで貧乏くじを引く、仲間の盾になりたがるなど献身的で自己犠牲を好む傾向にあり、生還が第一の調査官には不向きな性格。

 マーカスや後述の門司より年下だが、以前も同じ班にいたことがあり当時からの戦友。

 実はバツイチで別れた妻との間に三人の娘がいる。

 極めて無口で全く彼の声を聞かずに終わる日も多い。

 門司 三幸。調査班に必ず一人同行する決まりの専従医師。一応は戦闘訓練を受けているが、戦うのはあまり得意じゃない。アサルトライフルは治療行為の邪魔になるため朱璃に特別に作ってもらったハンドガン型のMWを愛用。

 愛煙家。ただし本物のタバコではない。この時代の医師は患者の体内の魔素を操作して検査を行ったり痛みを緩和したりできる。

 中杉 真司郎。通称ジロさん。マーカスよりさらに二十年ほど長く活躍している引退済みの局員も含めた最年長調査官。そのため局内では生ける伝説扱い。局長の神木 緋意子ですら彼に対しては敬意を払う。

 老いてなお優秀。常に冷静沈着。朱璃に対するアドバイザーとして配属されたが、彼女もまた誤った判断をすることが少ないので出番が無いなと苦笑している。

 家族は娘夫婦と孫が二人。

 神木 緋意子。特異災害対策局の現局長。マーカスとは同期で、かつて同じ班に所属していた。

 とある出来事以来、常に淡々とした話し方をする。目的のためには手段を選ばなくもなった。自分の最も大切なものですら駒として扱える。

 娘が一人いるが、親子としての会話は何年もしていない。

 北日本王国の現女王。初代王が優れた戦士だったため今も王家には優れた戦士であることが求められており、彼女も即位前は陸軍に所属していた。訓練教官をしていた時代もあり、対策局の問題児だったマーカスを預けられ鍛えたこともある。

 そして緋意子の母親。娘が王位継承権を捨てて同期の調査官に嫁いだので、今は孫を後継者に指名している。

 シルバー・ホーンと呼ばれる赤い巨竜。発生から十分間で自然消滅する記憶災害のルールに抗い、二五〇年前から存在し続け、荒廃した東京に今も居座っている。

 二足歩行で直立すると一〇〇m以上の巨体。多種多様な「竜」の中でも特に大型で高い戦闘能力を発揮しており、北日本の調査隊が東京へ送り込まれた際には高々度から巨大な炎を放って彼等を焼き払った。その時の衝撃波は福島まで到達している。さらに命名の由来になったサイのような角からは魔素すら焼き尽くす超高電圧の雷撃を放つ。

 知能も高く、未確認ながら南日本の術士達が使う「霊術」を行使したという噂もある。

 星海 開明。第二部から登場。

 朱璃のはとこ。良く似た顔立ちのせいで頻繁に間違われる。謙遜しているが頭脳でも匹敵。ただしこちらは高校生。

 母とは三年前に死別。父とは幼い頃からすれ違い。ほとんどの人間には友好的で朱璃やアサヒに対しても同様だが、緋意子に対しては敵意を向ける。

 星海 剣照。第二部から登場。

 開明の父で北日本王国軍の元帥。昔は前線で戦っていた。顔に当時の古傷が残っている。

 若い頃の夢を息子に託そうとしたものの、息子は彼の求める資質をことごとく持たずに生まれてきた。失望感を隠し切れず、そのせいで関係が悪化。今もろくに口を利かない。

 大谷 大河。第二部から登場。

 高い能力と王族に対する強い忠誠心を兼ね備えた者しか入隊できない王室護衛隊の隊士。アサヒの護衛役という名目の監視役。実は彼女を傍に付けたことには別の目的もある。

 勘が鋭く頭脳の回転も早い。王室護衛隊の名に恥じない優秀な隊士だが童顔でくせっ毛なことが本人の悩み。

 王族扱いになったアサヒに対しては敬意を払いつつも常に警戒している。

 小畑 小鳥。第二部から登場。

 元は女王付きのメイド。まだ現代社会に不慣れなアサヒのため世話役として貸し出された。

 常にたおやかな笑みの美女。しかし時々妙な圧を感じさせることも。

 天王寺 月華。第二部から登場。

 南日本を護る術士隊の長。外見は十歳程度の少女だが自称四百歳超え。霊術という人知れず伝承されてきた技の使い手。しかし彼女の使う霊術には他の誰も知らないものが多い。霊力の強さは完全に人の域から逸脱しており、地下都市・大阪全体は彼女の展開した結界により二五〇年間守られ続けている。

 崩界の日より二十年ほど前、どこからともなく突然現れて日本政府の中枢に食い込んだ。それ以前の経歴を知る者はいないが、本人は「霊術を魔法と呼ぶ場所にいた」と断片的に語っている。

 民を守るためなら時に老獪で卑劣な真似もする。非情にもなる。それでも多くの者達に慕われており、実質的に南日本を支えている柱。

 月灯。南日本の天皇。発育が良く大きく見えるものの、まだ十二歳。月華を他の誰よりも信頼する。しかし彼女と対立する「議員」達の手の内にあり、発言を抑え込まれている。

 天王寺 風花。第三部から登場。

 月華に継ぐ霊力を誇る最年少術士。気が優しく戦いには不向きな性格。しかし防御にかけては優秀なので月華の護衛につくことが多い。

 一年ほど北日本にスパイとして潜伏していた。向いてないように見えるが、あまりに天真爛漫なので誰にも疑われなかった。そして本人も任務を半分忘れて牛の世話に夢中だった。

 人懐っこい性格。ところが声が大きすぎて室内だと相手が失神することもある。

 天王寺 烈花。第三部から登場。

 烈花の名は術士隊一の炎の使い手と認められた証。元々高い火の精霊との親和性をさらに高めるため髪の一部を赤く染めたり男勝りに振る舞ったりしているが「オレ」という一人称はどうしても馴染めず「ボク」に落ち着いた。

 当代最強の術師と名高い「梅花姉様」に憧れ、彼女の伝説を真似て無茶ばかりしている。そのせいで生傷が絶えない。

 体育会系で下の子達の面倒見が良い。中身は割と乙女で好きなタイプは大きくて優しい人。できれば年上。

 天王寺 斬花。第三部から登場。

 術士隊最弱の霊力。才能に恵まれなかった分を他が絶句するほどの努力で補い、ついには唯一無二の技に開眼した。彼女の振るう刃は離れた場所から障害物を無視してあらゆる物体を両断する。

 烈花とは同い年。親友でライバルで一番仲の良い姉妹。

 愛刀は桜花から受け継いだ「夢桜」という銘の霊刀。

 天王寺 桜花。南日本の術士。第一部でアサヒを護って散った。

 霊術に関しては梅花以上の天才。特に精神に干渉する術を得意としていた。愛刀「夢桜」は彼女のその力を増幅する力を持つ。

 伊東 陽。旭の母。高校在学中に妊娠。相手の男子生徒は彼女の妊娠発覚直後に交通事故で死亡。その後、父親と大喧嘩して勘当され高校も中退。幸いにも地下都市建設計画が開始され働き口はいくらでもあったため、女手一つで息子を育てる。

 細腕からは想像し難い腕力と並外れた体力が自慢。病気にもかからず健康優良児を自称していたが、旭が中学生の時に長年の無理が祟って心臓病を発症し倒れる。

 不幸中の幸いで長期入院中に疎遠だった両親と和解。病気も数年間治療を優先し安静にしていたことで良くなり、地下都市へは両親と息子と共に四人で退避した。

 崩界の日、旭を庇って彼の代わりにシルバー・ホーンの顎にかかり、命を落とす。

 伊東 旭。北日本王国の初代王。魔素を無尽蔵に取り込み身体能力を強化。さらに取り込んだ魔素を自在に放出する能力を有する。

 長年その超人的な力で王国を守り続けて来たが、妻・ドロシーを失ってからしばらくして不意に姿を消す。行方は彼の娘でさえ知らなかった。

 アサヒは十七歳時点の彼を再現した記憶災害。

 全盛期の彼の強さは月華をして「怪物」と言わしめたほど。

 ???。第三部から登場する謎の女。全ての記憶災害の元凶と目される「蛇」を従え、遥かに離れた場所からアサヒ達を標的に様々な攻撃を仕掛けてくる。

 神にも等しい万能の力を振るうも、それに頼らない純粋な体術でも歴戦の特異災害調査官数名を圧倒するレベル。

 その行動からはアサヒと朱璃に対する強い執着が伺える。

 伊東 光理。北日本王国二代目の国王であり最初の女王。父には遠く及ばないものの十分に並外れた魔素吸収能力と身体能力、そして母譲りの頭脳を有し、旭が消息を絶った後の北日本を長く導いた。

 その他の主な業績として地下都市仙台から地下都市秋田への遷都を主導したことが挙げられる。朱璃達の属する特異災害対策局も彼女が国防の一環で設立した組織。

 性格は母親に似て合理主義。けれど弱者を見捨てられない性分も父から引き継いだ。旭の戦友「四騎士」の一人の息子と結婚する。

 王になった直後、伊東という姓は王らしくないという理由から改姓。以後は「星海 光理」と名乗るようになった。

 水無瀬 守人。実質的に漁業を生業とする北日本王国海軍が誇る名艦長。第四部にのみ登場。

 魔素吸収能力も頭脳も特に優れているわけではない。しかし勘と咄嗟の機転は働く方で彼が艦長になって以来、漁獲量は落とさぬまま乗員の死亡率は激減した。それに加えて気さくで陽気な性格でもあるため多くの海兵に慕われている。

 第四部の東京決戦では、とある兵器をノリノリで使用。同行した術士の少女達も気が付けば彼のテンションに同調してしまっていた。素晴らしい兵器の数々を生み出してくれた朱璃に対しては心の底から感謝している。

 仕事と部下達の面倒を見ることにかまけてばかりで、早婚が推奨されている時代なのに三十目前でまだ独身。

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