10. 地上の灯

文字数 3,263文字




機内アナウンスが入った。
成田着陸までの残り時間が約3時間であることが告げられる。
飛行高度は、これより緩やかに下げられてゆくと…。

窓の外に明かりは一切なく何も見えはしない。
遠に日本に入っていることだけは確かだろう。
夜の遥かな高み、薄暗い客室(first)に座して独り運ばれてゆく…。

日本列島…、この国は別格だ。
『ガイア』が選別した国なのだから。
かって神の選別に呼応して、彼女も似たようなアクションを執った…。

神が選ばれたのが猶太。
そして『ガイア』が、その反映として定めたのが「ここ」なのだ。
奇しくも両者はコインの表裏の関係にあるとも言える…。

大陸より切り離し、海もて周囲を分断した。
隔絶によって外界(世界)から物理的に分離させられた。
自然の懐に包まれてあることがそのまま『器』としての役目とされた。
彼女は「純粋性」が『自然』によって保たれる『環境』を用意したのだ…。

龍脈(ライン)に沿っての列島配置とした。
これに引き寄せられて夏場には台風が雨を運んでくる…。
この島は、信じられないほどに『真水』に恵まれている。

女神の慈しみ、彼女のその思いは、豊かな自然の贈与として実現された。
四季の移り変わりに現れてくる変化は、過剰なまでに情緒的かつ繊細。
寒暖の落差は厳しくもあるが、生存に叶う範囲を決して越えない。
空の青さ、水の清さ、深き繁盛なる緑…。
山々の美しさ、端正さ、そして嶮しさには確かな霊性が宿っていた…。

地球上の何処を探しても、これほど自然が表出している場所はない。
宙からの視認でしかなかったが、驚嘆し注目するに値するものがあった。

裏返された環境。
(自然豊かなの意味)
女神がその愛を「表現」した国。
(天の選定に対して『ならば私は…』でガイアが〈一〉を選んだの意味)
それが、この『日本』。

世界の[雛形]…その一つ…。


〈暗転〉





Re: ランディング。

旅客機は偏西風に乗り飛行高度を緩やかに下げられてゆく。
高度は10,000mを現在切ったとのこと。
静岡、神奈川の上空を通って東京へと向かっているらしい…。



座席シートで、エノクは先ほどの夢の印象が甦ってくる。
黒曜石の台座にあって、脈動し乱舞する光輪のだ…。

あのプロセスは、どこでも、いつの時代でも同じだ。
生存エリア内に複数のグループが起こり、これらの間にて勢力争いが起こる。
そして、長きの闘争の結果、最終一勢力による統治が完成する。

この日本においては、それはBC660年になった。
そして、その後、2,679 年間に渡り、その国体は生き永らえている。
これは特別なケースだ。”異常な”とも言える…。
国としての存続は、世界最長になる。
地理上の”利”によるものだけなのか?。
否、それとも、やはり…。

今へと至る筋道からすれば、1890年が分水嶺となる。
この時、『神』と「人」を〈仲介〉する『祭司職』が、[国体/国制]の【要】と
して〈プロトコル〉に組み込まれた。これは[欽定]憲法の発令としての意味だ。
理由は、〈神権〉をもって、「民間統制」を急ぎ行う必要があったから…。

既に、国家間における覇権争いは、完全に世界規模にまでその舞台スケールを拡大
していた。大国は、新たなる植民地を、[略奪/搾取/支配]を行うに易い小国を求めて、
勢力的にその介入を行っている。この世界動向に危惧を抱いた上でのことだ。

このことは、「王制であるドイツ」の憲法を、自国憲法の雛形にしたことに表されて
いる。あの鉄血なるをもってその名を知られる宰相ビスマルクが中心となって作られた
憲法である…。あの『祭司職』が、政治の表舞台から長きに渡って遠避けられ、そして
やっと「中心」に舞い戻ったのが1867年の大政奉還。この時よりたったの23年後のこと
である。国体として、いかに危機感を持っていたかが知れる…。

しかし…やがてに…、憲法の『言霊』の効力は敗戦によって[解除]
させられてしまう。民間統制はGHQによるものとなった。
されど、あの『祭司職』は象徴の名の元に残された…。

問題は…「職」をもって霊性との交流が保証される訳ではないことだ。
虚ろな器では、『ガイア』の祝福を国の中に導引することはできない。
天分と正しき儀礼が、これを成すためにはどうしても必要になる…。

制御/支配の本質は、【契約】と呼ばれる『言霊』に基づく。
文言化された〈プロトコル〉、言語による[呪]でしかない。
これも『天使たち』が、禁を犯して、ヒトに教えてしまった『天上の秘儀』の一つ。

肉の欲もて、我欲によって、ヒトたるがヒトに対してこれを使用することは許される
ことではない。しかし、「世界」は、もう既に…これの暴威に翻弄されてしまってい
る。CPUが叶えたネット環境は、強靭な【枷】をワールドワイドで嵌めてしまった。
[呪]と[インフラ]、現在これら二つは、お互いを強力に支え合う関係にある…。





機内の窓から地上の灯りが見え始める。
かなりの範囲で光のラインが縦横に走っているのが見える。
高度がもうかなり下がってきているのだろう…。





光の密度が、そして、それの覆う面積が急速に増してゆく。
これが首都の灯りなのかといえば、そうではないことが直ぐ分かる。
着陸予定時間は未だ未だ先の筈だ。





地上は鮮明な白光ビームによって、際立ったグリッドを形成していた。
あまりに鮮やかな光芒を引き連れて…。
それが尽きることなく大地に広がり、更に延々と続いてゆく。





今や光輝は騒がしいまでの重なりを見せはじめている。
まるで…地上に宙の星々をすべて移したかのよう…。

そこにあるであろう物量を思えば驚くしかない。
過剰なる堆積が広範囲で果たされていることは間違いない。
どれだけの時と資本が投入されたことか…。

1時間近く、この地上の光景は続いている。
そこで、やっと最終アナウンスが入った。
三十分後に成田着とのことだった。

時速700から450へとダウンとの説明もあった…。


〈暗転〉





Re: スタンディング・アップ。起立する影。

時は少し(だけ)遡る。
丁度、エノクの飛行機が神奈川上空を通過した時だ…。

横須賀米海軍施設からは目と鼻の先にある「吾妻島」で異変が起こる。
「吾妻島」はアメリカに接収されている小島。
一応は日本の自衛隊との共同管理地になっているが完全なブラック・ボックス。
当然に一般市民は立ち入る事は出来ない。

この「吾妻島」の地下には、PRISM (通信監視プログラム)が設置されている。
これのメインフレームが異常をきたす。

何かを察知した、何かを感知してか、ある【存在】が実体化を「これを出口」
として行ったのだ。日本においては数体ある内の一体がである。

生命、その存続を支え維持していた環境を省みず、投げ捨てて、
剥き出しの[魂]として現界していた!。





その姿は淡く燃立つ青白き火柱。

直ぐにこれは地上へ居場所を移し、送電塔を「依代」に移動してゆく。

あっという間に、海をも渡り切り、接岸近くの送電塔を頼りに更に移動してゆく。





「ぼう」と輝く光の柱は、

何処へやらへ、誰かを求めて、瞬く間に三浦半島を北上してゆく。

向かう先には横浜、川崎、そして東京があった…。












〈続く〉



あとがき:

なんかデリケートなこと書いたかも。
できるだけ穏便になるよう気は使ったつもりなのだが大丈夫だろうか?。
まあ、日本と猶太は違う。双方の民族指導霊も違う。
でも、個人的にはそれなりに統合/整合化するための考えが欲しくなる。
んで、想像したものが今回のベース。
あくまでも個人的なので、対外的には「これ妄想!」と申し上げておこう。

肝心な日本における指導霊に関してはブラックボックスとして棚上げしている。
八百万で非常に多い。なので精霊をも含めた自然すべてが聖性とおく。

なんでか知らないが、僕は古事記も日本書紀も読めない。
拒絶反応がある。

*龍脈に関してのくだりは、木の根がもたげるようにして列島を切り離した。
 もっとも地表近くにあって支点として使い、盛り上がったのが沖縄。
 後は深く地に潜るが、後3点地表近くある。
 その三箇所は何故か放射能によって汚染されたエリアの真下。




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