9. メビウスの帯

文字数 2,639文字

メビウスの帯が暗黒空間に回転している。
果てしない広がりにあって、それは余りにも小さいものでしかない。

そこは時の狭間にある虚数空間。
一切が在ってないに等しい観念としての宇宙。
輪は細かな震えと揺れとを織り交ぜ然ながら生き物のようであった…。

最初、その見かけは、まったくもって素っ気のない限りのただの「白」だった。
暗黒にメスを入れて裂いてみたら中身は何にもなかった。
まったくの「空」でしたってな感じかな?。面白みも何にもない。
詰まらないだけの「のっぺらぼう」。「空房」としての真っ白け。

やがてスリットの表面に変化が起こる。
何やら砂を撒いたかのようなテクスチャーへと見えなくもない。
色の微粒子が現れてきた。

色は三原色のみから始まりやがては多色へと増えてゆく。
柔らかく穏やかだった粒立ちの加減は、段々とその明度を上げてゆく、
強烈になってゆく。

微細なる彩光が湧き出るようにして雑多に入り交じっていた。
凶暴とさえ思える程の激しい流動性が、活発な相互侵蝕が、
其処に働いているのが分かる。音とはまったく無縁の、この隔絶空間にて。

今や光の粒立ちは、どれも目にも鮮やかだ。
艶かしいと思える程までに。
中には金属光沢までもが認められている。

色調において、各々同質なるものが寄り集まってゆく。
やがて帯は光のスペクトラムにきっちり層分かれしていた。
爛熟の極致。極彩色の横縞の帯と化す。
これらが生きた蛇の様にのたうち回り、お互い身をすり寄せ絡み合ってゆく。
とても隠微にして、まっこと畏るべきの動態となる
今や、最後には、一枚の「黄金」の帯へと変わっていた。
眩さも…当然に熱量も何故か全く其処には存在してはいなかった。

やがて、再び、黄金色の帯は、薄らぎ始め、解けて、ぼやけて、弱まり、
やがては最初のただの「純白」へと返っていった。

このシークエンスが繰り返されている。
延々と終わることもなく。
これは…そう「呼吸」…そして更には「時間」だ…。






〈暗転〉


クリスティンの創り出したメビウスの時空牢は、緩やかに回転を続ける。
中では、エノクと等身大の女スフィンクスが向かい合っている。
あのアンチ・ユニバースを脱した頃の話である。

エノクは頭の整理を急いだ…。

直感されたのは「純粋なる痴」としてあらんとする意思だった。
無限数のセンター(スタンドアローン)がランダムに、
あえて滅茶苦茶にコネクトされていた。
デタラメもいいところだった。レイプとの言葉が定まっていた…。

それが何故、意味ある〈解〉として出力されうる?。

表の宇宙の現し身として成り立っているからだ…。
鏡に映った虚像のような存在なのだ。
しかし、これは本体の目的を台無しにすることのみが機能なのだ…。
自己の考えなどないのだ…。善も悪もない…。

完全なる一元論的な存在。

神の備えられた秩序にのみを標的とする宇宙。
争うではない。無駄にする、無効化する、台無しにする為だけのものなのだ…。

それ故なのか神と同等の力を備えていると看做さねばなるまい。
ならば…その存在の原因は父なる神以外にありえない。
エノクは、その理由は分からないまでも、そう確信していた。

『これはメタトロンの記録にもなかった話ではないか…』


〈暗転〉


『まさか…こんな事になるなんて…』

クリスティンは絶句して恐るべきことを報告してくる。

『この檻が侵食されだしています。』






〈暗転〉

光のグラデーションで呼吸しているメビウスの帯に異変が起こっていた。
黒の糜爛が多少なりとも混ざり混んできている。
ほんの僅かな局部ではあるが…。

クローズアップしてみると。グロテスクな、蜘蛛みたいな極微の生物が
取り付いている。「キーキーキャーキャー」耳障りな悲鳴あげながら帯を
喰らい増殖をしてっている。恐ろしいスピードで…。





〈暗転〉

檻の中。

クリステンはショックを隠しきれない様子で一人呟く…

『理論上あり得ない…』
『以前に彼処に行った時には何も変化は起こらなかった…』
『だから、てっきり安全だとばかり思っていたのに…』

考えられることは、前回は見逃されていたのだ。
この不可知の存在たる空間が察知されていたのだ。
だが今回は違う。エノクを連れている。
アレが何をどうやったのかは知れないがターゲットとされてしまった…。

クリステインはエノクに向き直り切迫した様子で話しだす。

『時間がもうあまりありません。』
『予定は短縮せねばならなくなりました。』
『あなたが今知っておくべきは後三つ』:

創世におけるヨベル・バージョン。
四神によるレンの侵攻。
そして現在、南極大陸と呼ばれる地に聳えてある狂気の山脈。

創世において何が造られたのか、あなたは未だ知らない。

レン侵攻は大洪水の直前の出来事で、これもあなたは知りません。

そして、数多の土工が葬られている南極大陸…。
恐らく、ここがあなたの旅の最終ポイントになるのでしょう…。

彼の地の蔵は、かってギバーリームたちによって開かれていまったのです。
そして、もうこの世にあってはならない者たちの多くが運びだされてしまった。
そして大いなる対戦が太古の世界にて行われた…。

今となればギバーリームたちはすべて死に絶えました。

でもネフィリムたちは沢山今も生き残っています。そのすべてが…。
運びだされた土工たちも条件が整えば再起動は容易すい。
異空間として開かれた世界も未だ彼処には存在している。

【終わりの時】は近づいています…。
不必要な混乱は取り除く必要があります。
さあ、急ぎましょう…。

〈続く〉



あとがき

当然に、あっちはミケーネ帝国の原型たらんとしての話しになる。
マジンガーは出ませんけど。機械獣+神人同士の戦い。
当然に、お子ちゃま向けである!!!。

今回は粗筋の概要説明としての内容でした。
これやっとかんと訳ワカメになられるでしょうから…。
再見(サイチェン)!」
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