1. ヘルモン山登攀

文字数 4,241文字




Re: 再起動。

エジプトのカイロ郊外。ギザ大地。夜間。
大スフィンクスの前面にある広場を男が歩いている。
なぜか警報装置は作動しない。
ザクザクと砂を刻んで進んでゆく。
やがて男はピタリと止まり、

” アルカイック・スマイル ”を闇に仰ぎ見た。
久しいなという感じで同じく微笑む。

「喜んでいるのか…」
「やっとお前の念願も叶うところとなる」
「背後のものどもを存分に拝むがよい」

「先ずは、彼方の時空へと移されし、その実体を取り戻せ。」
「還れ!スフィンクス。」男はそう叫び、腕を胸に組んだ。

突如、幾つもの次元平面がいづこと知れぬ彼方より飛来し、
重なり、交わり、そして再び宙に帰るかのようにして広がっていった。
(すべてスフィンクスを共有線とする)
眩いばかりのオーロラが幾重にも、その帳を石像の影へと下ろす。
下から押し出されるようにして巨像の表面から石塊が剥がれ落ちた。
そして、それは、身震いをして立ち上がっていた。

おかしい。
元の像からすれば遥かに巨大なものとなっているではないか…。

その体表は漆黒の装いで、見る角度によっては虹を纏う。
メタリック・ブラック・リキッド・クリスタル。
双眼は琥珀が嵌め込まれたが如く、オレンジ色に怪しく輝いていた。
本体への帰還は 1,0490 年ぶりのことであった…。

この[マキナ]は時空間の定点観測を目的として建造されたもの。
端的にはタイムマシーン。
時空間を自在に移動することができるが「実存」は現在のみ。
過去は絶対確定。未来は変動解となる。

*男の呼称は「ゾフィー」。(『Jophiel』が正式な名前)
*本当は、スフィンクスには

と鷲の翼もあるのだが割愛。
*過去も未来も「不可視の観察者」としてのみ存在可能となる。

*やっぱ女なんかね?! ← 後の展開において女性としての

があることが判明する。

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Re: 雅歌4:8[改]

我が永遠の友よ、その峰々から早く降りてきておくれ。
山脈の峰々を飛び越えて、ヘルモンの三つの頂から。
獅子の隠れ家、豹の潜む、その山々から下りてきておくれ。

君の美しさは谷間の百合。まるでシャロンの薔薇のよう。
その唇は紅の糸。
風になびく嫋やかなその髪は、
ギレアデの山を下る山羊の群れのように豊かにして美しく波打っている。

(これは追う者の心情として採用。超改訳。)

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Re: ヘルモン山登攀。

ヘルモン山の南の麓、メイダルシャムスでルート98に乗り換えた。
更に19分走り、山の中腹にて車を降りた。以降、DB5Sは不可視モードにて待機させる。
ここからは徒歩での行軍となる。目指すべきポイントは何故か自ずと知れていた。
四日を要した。この時の長さはエノクにとって絶対に必要なものであった。

ヘルモン山は山脈と言っていい。その裾野は700〜1,000㎢ 。日本での比較を探すならば琵琶湖になる。あっちは670なので少し広い。標高は2,814mで北アルプスの五竜岳とドンピシャ一緒。
ここはほぼ同じ高さの三つの山の集合体。名称としては、アマナ、セニル、シーオンそして
ヘルモンなどいろいろ。Hermonは「老いたるものの山」の意になるらしい。

ここの伝説としては飛び切りなのが三つある:

一つ目は、ギルガメッシュによる、”巨人”(Humbaba)殺害が原因で、この山は三つに
分裂した。二つ目は、以前に話したけど、監視者である天使の一団が天より降り立った
のがここ。そして三つ目は、超弩級の内容!。『イエス』は一度だけ、弟子たち(三名)の
眼前にて[変身]をされている。
『その顔は日の如く輝き、その衣は白光を放つものへと変わった』これ。
そこに『モーゼ』と『エリア』が現れて三者にて話合いが持たれる…。
時はまさに【受難】の直前。計画の最終打ち合わせだったのだろう。
その場所たるのが、ここヘルモン山。*(聖書に具体的な表記はないが可能性は高い)


〈暗転〉


Re: ヘルモン山登攀。

山野を歩きながら、地表を覆う[大気]に刻まれてある情報を読み解いてゆく。
肉体(本能/動作/性)センターと感情センターをもってのみのアプローチである。
ただただ同調し、共振してあるのみ。感受性のみにての消化を自動でおこなってゆく。
以前の高次元の超高感度OSを介した知性センターによる状況把握とは全く違う。
知性の出番はまだまだ先。すべての情報が共感摂取されてからだ…。

またエノクが生きた時代、その太古の頃とは世界環境は大きく違っている。
数千年の時の変遷があるのだから。その重みを理解せねばなるまい。大至急で!。
歩み、疲れ、休む、を繰り返す。その間にも心には膨大な量の情報が流れ込み続けている。
ことはこのエリアだけのことに留まらず、全世界規模での情報の吸収整理統合を行なってゆく。
歩に伴い、惑い、動揺、落胆、が目まぐるしく表情に現れては消えていった。

総括として、やはり御子の世界への顕現が決定的な変革を、刻印を、結んでくれている。
庇護としての、聖霊によるガイド・システムが強力に作動してくれている。

しかし、これはご宣言の通りの狭き門だ。
見よ、光のグリッド構成、その明滅は著しく乏しい…。
活発な点在が多数、広くみられるが、これでは余りに孤独な戦いではないか!。

しかし何故、ヒトは、一族、父母兄弟、そして同胞仲間から、
 かくも心離れるようなってしまったのだ?

これでは、やがてには間違いなく詰んでしまうぞ」。

また、特に気になったことがあった。ネットを介してのゲームなるものの存在。

「なんだ?この強力な潮流は???」

禁止の違反…ポトラッチ? いや違う。

生の空虚なるを、仮想現実において体験充足せんとする企て…。
強く感覚や本能に訴えるものがあるが、本質は隔絶されて静的な

世界だ。
感情や肉体の持つ本来的な能力キャパは殆ど活かされることはない。

有史以来の生命活動としての膨大な


それらの成果/精髄として獲得された

たるの本能が、
不関与なまま、活かされることのできない状況下へと移行されてしまっている。

世界、いや宇宙の総体からは、もう完全に遮断されてしまっている。
人工の、見せかけばかりのワンダーランド…。

これは自然に沿うものではない

そこでは安全が保障されている。何があっても現実においての実体に影響は及ばない。
仮面をつけて誰にでもなれる。

同好の士でのネットワークが多数成立している。
脳裏に、” 繭 ”の密集する蟻塚(ありづか)の様なイメージが浮かんできてた。
真綿で包まれ肥大した繭どうしは、お互い隔たっているのだが交信している…。

突如、ビジョンは大きく変化する。
次には

(はち)の巣箱としてのイメージとなっていた。
それと同時に「マトリックス」という概念が自然と頭に浮かんできていた…。

偶然に、さしたる意味もなく、突然発生する放電によって、お互い結ばれたりする。
繋がりは明滅し、便宜的なもの、

のものでしかないことが分かる。
まら瞬時に、彼方との新たな組み合わせが行われてしまうこともあった。
隔壁(グリッド)に阻まれながら、放電の交錯、明滅、それらの棚引きは起こっていた。
波の如くの動きとなって、盤面すべてを明るく点灯させることもあった。
だがすぐに元の木阿弥。バラバラの点灯だけの状態へと戻っていった…。

「大地との直接的な関わりが失われてしまったせいなのか?…」

おかしい…超越者の関与がなければ、ここまでの隆盛は不可能だ…。
魅せるにおいて巧みが過ぎる。
夢を現実とする環境が、工夫が、至れり尽くせりで、加速度的に整っていってる。

なんたる情熱の迸りか!

今の、この世界は、決定的に何かが変化してしまっている。
これは、思ってもみなかった確信の一つである。
現実において、

作用/変更/反映
及ぼし出してきているいることにヒトはまだ

!。
緻密に、またドラスティックに、合理的にも環境は整ってきてしまっている。

「魔術の大衆化?」

滅びの広き門が開け放たれ、倦怠する数多の魂の群れが緩やかにそこへと向かってゆく。



世界は、不穏にして静かに、(いさか)いへと真っ直ぐ向かっていってる…。

「自己浄化作用が機能せずに、

かのようにみえる…」

歩きながら延々と考え続けた。
夜は仮の廬を樹々の元に作り、そして眠った。
不思議ことに翌朝にはマナが寝所の側に置かれてあった…。


〈続〉


あとがき:

『わたしは地球ができる前から存在している』。

二千年前の人間にできる発想ではないな。
SF作家でもこのセリフは思いつかないんじゃないかな?。
そりゃ石投げられるわ。恥知らずの気狂じみた妄言にしか聞こえない。
あり得るとするならばだ…『真実』だから、そう述べたまで…。

*『はっきり言っておく。アブラハムが生まれる前から、『わたしはある。』」(ヨハネ8)
*『父よ、

、わたしがみそばで持っていた栄光で、
  今み前にわたしを輝かせて下さい。』(ヨハネ17:5 )
*「すなわち神は、世界の

、この方にあって私たちを選び、
  御前に聖なる、傷のない者にしようとされたのです。」(エペソ1:4 )


よくRPGも知らんと書いてるからねー。
スーパマリオサンシャインと動物番長しかやったことないからねー。
天使関係のカードゲームもあるんだってねー。

Uumbabaじゃないからネー。


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