1a. ガイア

文字数 6,389文字

Re: The program just activated.

時は冥王代。創造されて未だ間もなきころの地球。
先の水の彗星コンドールによる激突のダメージも揚々薄らいできた頃の話である。
大宇宙に存在する全恒星群、それらの総意としてのメッセージが彼女に届いていた。
直接には、我らが太陽が中継の窓口となってである。

間も無く、婚姻に向けての支度(セット・アップ)が始まると。
ソレが済み次第、着床の儀が執り行われると。
こころの準備をしておくようにとのことだった。

物質を構成するすべてに意識たるは宿る。粉塵のパーティクル一個ださえにも。(*1)
当然に大気を構成する気体、その最小単位においてにも同じである。
対流循環することにより情報の共有/関連/統合が逐次おこなわれる。

地球本体、其れを取り巻く大気、これらの全部がまとまって、関連関係して、
記録の、情報のやりとりをしている。恐ろしく巨大で複雑なネットワークなのだ。
電波、電位、磁性、そしてなんと星幽体さえもが、このネットワークにおける
メディアの役目を果たしている。それら全部が生きている。そう言える存在なのだ…。
数えきれない程の意識の小片、断片、その全部ががまとまって、一つになって、
ただ一個のアイデンティティが析出されて存在していた。
これが[ガイア]。是れこそが彼女に与えられたコード・ネーム。

彼女はすべての出来事を、過去のあらゆる事件のことを憶えている!。

女性格が惑星に与えられることは滅多にないことなのだ。
このことは、『命』が託され、それを育む為の特別な星あることを意味した。
このことは、宇宙全体において、非常に、本当に、稀なことなのである。

幼きながらにも「彼女」には、厳粛にして峻厳たる使命感が既に備わっていた。
また、まごうことなき母性たるものが持つべきの特徴をである。
母たるものとして、存在していることへの憧憬、喜び、満足。
まだ見ぬ子らに対しての、期待、情愛、思慕 …。

やがてには、慈しみて慈しみて、憶えして、見守りて、励まして、尽くして、
すべてにとっての永世の庇護たるにならんと…。

未だ子らは存在せずして、彼女の思いは高まりゆきて、やがてに祈念にも等しくなる。
その祈りは太陽系の隅々にまで届く程までに大きく木霊していた。
着床のときよ至れよ! 

萌え出ずる数多の我が子たちを(かいな)に抱きて、
我、愛して、愛し尽くしての育みをば行わん。
永遠に永世に終わることなく…我が命が尽きるその時まで…。

超高速回転するマントルが鮮やかなるクリムゾンにて光り輝き、
上空遥かまでピンクの優しい放射光が出現していた。
それが地球をすっぽりと包んでいた…。


〈暗転〉






ある日に外宇宙より飛来したと思わしき正体不明の大群を感知する。
直ぐに大気圏上空の殆どが、その奇怪なる群れで埋め尽くされていた。
深宇宙よりの、「土工」の来訪である。
婚礼の介添人たるが彼らの務めであった。

小さく細かなるもの、また巨体にして嵩高きもの、恐るべき数とその種類があった。
その合計、その総体は、計り知れなかった。
ガイアは歓迎として受け入れのサインを送り、それらを自らの懐へと迎え入れた…。

土工たちは地球への到着後直後に、ホームベースたるのを一箇所に定める。
次元と空間の魔術操作が其処でおこなわれた。
拠点の整備を終えた後は、即刻、地表海洋大気圏に遍く散って、
各自本来の活動たるものを開始する。

地に別れて散らばり、多くが地に潜った。
海に入って広がり、深海に潜るもあった。
大気圏に舞いあがり、細かに無数に別れて散って、見えなくなった。
地殻深部(マントル)に潜りこむものさえもあった。

備え持つ特殊能力にて、大地、海洋、大気の成分変更と質調整を行っていった。
又、生物の生存を考慮し、大掛かりな環境整備、それらの造作造形を行う。

ガイヤは無抵抗のままにその身を彼らに晒し、されるがままに身を任していた。
高き山や深き谷、広き平野、河川の多くが創り出された。

すべてはあらかじめ受け取られていた計画と指令(プログラム)に元ずいてものである。
それらは我らが太陽を中継として送られてきたものであった…。


〈暗転〉






Re:花婿の来訪。

その彗星は突如空間に出現してきた。
深い深い緑色を宿した、まるでエメラルドでできてるかのような星だった。
命のオーラで満ち溢れており流石は生命の方舟であるとそう思えた。
また知性の透徹さが背後に見え隠れしている。そう感じられた‥。

動きは激しく逞しい。そして荒々しかった。
最高速度でいきなり現れ、以降の軌跡は、まったくの予測外の動きとなっていた。
大きく振幅をとりながら悶えるように蛇行して飛んでゆく…。

この彗星は、水媒体が過剰に存在する星に向けて

準備された箱舟である。
天界におけるコード・ネームは:

SPARTAN 3γ EO2’ 」 (スパルタン・スリー・ガンマ・イーオーツーダッシュ)

最良の最高純度の生命種、種苗等満載の超豪華特別仕様のコンテナー。
積載されたるそのロットの数は

ダース!。
片道のみの有用で、到着後は現地にて破棄されるのが

であった…。

其れは、なんらかの次元跳躍を経てから、この太陽系に現れたと推測される。
出現から恐ろしいまでの速度を既に獲得していたのだから。
スイング・バイを経て、跳躍のゲートを潜り、この太陽系に現れたと思われた。
(まこと)渾身(こんしん)からの、魂そのものたるの豪速球

更に、太陽系に突入してからの軌道がまた異常だった。
土星軌道の近く、上方より垂直降下で、きりもみしながらそれは突然現れた。
既に大きなブレを抱えており、出現からしてそれは危なげな挙動だった。
そのまま突き抜けて、彼方へと去るのかと思えば、然にあらず!。
突如、直下の超低位から大きくアールを描いて反転急上昇し始めたではないか!。

螺旋軌道を描いて飛んでいる。その振幅が、段々とその振れ幅が、大きくなってゆく。
そう、最後のえぐるようにして行われる螺旋運動が、そのまま上昇に向けての、もしくは
方向転換の為の力としてに使われている。自己振幅の分銅ドライブ…。
それの進行は、ただただ天を突くが如きの勢い。

繰り返そう!。シンカーで最初にドロップ・イン。そのまま突き抜けて、
深く深く潜ってゆく、そしてそのまま彼方に去るかと思えば、なんとエグい角度で
立ち上がって戻ってきたではないかー!。その操舵力、力の源はやはり回転にあると
しか思えない。ギュンギュン回転を高めながら、また微妙な傾きを幾段階をも踏んで、
途方もないアールを描いて帰ってくる。これは怒濤の如きのいやさかなる屹立だった。
そしてそれは最終目的地たりを地球に定めて、最終コースへと入ってゆく。
この目的地を深く抉る、突き刺さって果てる、この一念だけを胸に
最後のトラックへと参入してゆく。

敢えて、最も際どい危険なコースを、この星は飛んできていた…。

惑星間の斥力と見事に同期して、自らの運動との相互間にて引き起こる力の応酬、奔流。
この渦中において

、それらを独自に自在に組み合わせている。
このことよって推進力/操舵の力は獲得されていた。簡単に言えば、惑星相互間の引力、重力、
斥力における確執、葛藤、これらを運動エネルギーに換えてそれは飛んでいたのだ。
相対的には矮小であるがゆえに

からの影響はとてつもなく強大なものとなる。

巨大惑星の引力に引き込まれそうになれば、
離脱の為の推進力との間で、大いなく確執/ジレンマ/軋轢が引き起こされる。
これこそが更なる力の獲得増強蓄積の為の力の源となりえていたのだ。
自由への意志の貫徹によって、変換変性分捕りのダイナミズムが叶うこととなっていた。
単純な引き算にはならない奇跡がここに見て取れた。

身近にある惑星の引力へと身を敢えて曝す。
これの作用を自ら敢えて浴びるようにして己を開く。
そして、これの牽引に堪えに堪えして、力として蓄積し、動力へと変換する。

やがての限界のにおいて、その間際に、この星との関係は解除、無効化される。
他の惑星からの引力へと切り替えて、新たに自らを明け渡す。同期化する。
同時にこれまで溜め込んできた力を開放する。これらが相まって、
爆発的な推進力が突如現れ獲得され、巨大惑星の引力からの離脱が可能となっていた。

どの星の引力を選択し、どれだけ、どのように取り込むかは彼の選択だった。
いや戦術だ。見えはしないが、太陽系にはいくつもの複雑な力が交流して働いている。
それも恐ろしいほど巨大な力の奔流、濁流、乱流として!。

これらを、複数を、いくつも、同時に、複雑に選択し己に作用させる。
また同時に解除を、逐次、細々としたコントロールにおいて成し遂げてゆく。

これらの

利用していたまで。
核心たるの妙は、自死を覚悟してこそ初めて可能となる芸術的なまでの
取捨選択の能力にあった。これはすべて直感であったと言ってもいい。
後は、宇宙の全体が、唯一の、然るべきコースへと自然と彼を誘ってくれていた…。

要はだ…

をすればするほど、彼の力は増大していったまで。
ただし、歪として、自分ではコントロール不可能な力の蓄積、堆積、焦げ付きも
同時進行で起こってきてしまっていたのだが…。

これにはこれで、後に活かす術は、目的はあった…。

禁断のコースを敢えて策定しているかのように見えた。
全ての負荷が嫌ましに強力に己が体内に蓄積されてゆく、してゆく。

それを、


 その男星は定められし相手とのコンタクトを胸に、
   臨界点たるを迎えるのタイミングを絶対に過たないことのみを心に刻んで
     飛んでゆくのでありました〜!。

最後の最後に、月の引力を利用して、急角度のカーブを切った。
そして地球への最終直進コースへと入ってゆく。

絶対的に定められたる太陽と月との位置関係が鉄壁の梃子として利用されてしまてった。
然もなくば、月自体も大きく影響を受けて、その軌道は変更されてしまっていたことだろう。
それほどまでに直前の運動する質量は莫大なものとなっていたのだ…。

減推による速度低下とそれに引き続きての爆発的な急加速。
これによって、自らにこれまでに溜め込んできた軋轢はバランス崩壊を開始する。
トリガーとしての最後のストレスの供与者として月は大いに役に立ってくれていた。

そして最後のコースへと入った瞬間、男星は瞬く間に破断され、引き裂かれ、
木っ端微塵に粉砕されてしまっていたのでありま〜したー。
その最後の最後は、見事に地球の引力圏内に星はあったのでございま〜したー。

分裂分散したその体は、無数の矢のようになって地球の全土に降り注ぐ。
数多の粉々に砕かれた破片が、地表に落ちて、突き刺さっていった。
海面に潜り、そのありかは所在は判らなくなっていった。

運ばれてきたのは生命の種である。
そして、ガイアは受胎を無事に果たしたのであった…。



暗転〉


長の年月が過ぎる。

記録すべき出来事:

アストラル界から堕とされた「ザアダム」がこの地に預け入れられた。
後に”ヒトの子”との呼び名に変わった。

聖霊にたるるソフィアの指揮の元、
自然なるを彼等の為に新たに整え直した。大掛かりな変更だった。
あまりにも精妙なりし、新規構造が幾重にも幾重にも付け加えられたがゆえに。

趣意たるは


であった。これが隠された重要な主題とされる。

色たるものをふんだんに、すべての光学的彩色数を百万倍にまで増やした。
これはヒトらの為にのみ。彼らにしか識別は、その味わいは叶わない。
他の生き物たちにとっては無用の長物に過ぎない…。

又、彼らにとって解毒としての要たる薊に荊を大地に生やす。

それらは彼等にとって皮肉なるかな唯一の薬となりうるもの。
障害として、絶えず、どこででも、果つる事なく、立ちはだかり、現れてくる苦悩の源。
これが役割、それが慈悲として、願いとともに供えられた…。

至高なる方々が、彼等の監視見守りを目的として地に降りてきた。
大層な数だった。超常の方々である。

やがて、イヴらとの契りが持たれ、新たなる生命が誕生した。
それも二種の。共に超常の子たちだった。数多いた。
彼らもヒトの女との間に子をもうけた。

どれも皆、すべての呼吸する命なれば、我が子に相違なし。
私は彼らをも見守りて、同じく愛して、大いに眼をかけた。
だが、やがてには、一種は残こり、一種は失われて彼岸へと渡っていってしまう…。

巨大な悪しき蛇たる存在が堕とされてきた。真紅の蛇だ。
天にて大いなる戦があったのだ。
大地の門が開かれ、そこ知れぬ穴が現れた。
其れは多くの輩とともに中へと落とされ、そこは封印がなされた…。
至高の方々の多くも、また別の時に、これ以前に、同じ所に堕とされ封印されている。

私はただ黙って見ていたまで…。

時がまた過ぎた。

新生の命たちに注目する。驚異たる生命だった。ヒトの姿外見をしているが、
魂の組成、内部の構成においてヒトとは著しく異なる。
もうヒトなどでは全然ない。ヒトの域を遥かに超えている。
父親たちと同じく超常の存在であった。

彼らこそが、寿命あるが避けられずに、
やがてに全部彼岸へと渡ってその姿を消したものたちなのだ…。

彼らの能力は父親たちのものと同じく、変わらずして、またそれ以上とも思われた。
見た事も感じた事もない神能力の発現を見せてくれたのだから。
母方が備えたる神聖なる神の分霊が、何らかの作用を及ぼしたものと思われる…。

中でも一人飛び抜けて目を引く存在がいた。名を「ゼウス」とされていた。
彼は、在らぬ彼方より雷撃を召喚し、自在に操ることができた。

針の穴を通す程の制御力を持っていた。
又、彼がその一念でもって召喚するエネルギーは桁外れのスケールとなっていた。

地にて生まれしも、なぜか彼には天界のスケールが備わっているのが分かる。
彼ならば、念じさえすれば、半球の丸ごとを雷撃の雨で埋め尽くす事も可能で
あろう。その力の源泉は、どこか彼方の星々からの譲り受け、もしくは強制的な
略奪によるものなのであろう。どういった経路で、いかな手段で、彼がその力を
振るうのかは分からない。瞬時の、瞬く間に、ことは整い、発動は神速の速さで
あったのだから…。

彼と似たような超常の力を持つ新種たちは大勢いた。
いつの頃からか、ヒトらは、彼等を神として祀るようになってゆく。
庇護を彼等に求めた故の結果である。

私、ガイアは、この地に生まれしものたちの全てを愛す。
慈しみて慈しみて、憶えして、見守りて、励まして、尽くして、
すべての永世の庇護たらんとすることを欲す。

是れのみの為に、私は生み出されたのだから。

感謝して、感謝して、ただ感謝して奉らん…。


〈続く〉





*1
正確にはその物質が定められた性質を獲得するためにはある一定単位での集合、
ユニットが条件になる。例えば、水の分子がスプーン一杯の容量あってこそ


水は水たりうるみたいな。そうなっていてこそ、パーティクルの、分子の、一個も
初めて本来の意義を獲得する。…。分かりにくいのでこうしよう!。
人間も三人を最小単位として、この数が揃ってこそ、各々は


人間存在たりうるみたいな?。(だから個人ではダメなの!)
このユニットの、集合の条件は、あまり意識されないがゆえにも、とても重要。
これも第三の力の範疇に入る。


あとがき:

「なんじゃコレー?!」「オドレは何をゆうとんのじゃ〜?!」の内容になりましたね。
 結局、またもや、いずれにしてもで…。こめんなサーイー。
 これもまた「 やれ!」って。○○美ちゃんが〜…。嘘。


 また、何気に下ネタかよの内容でしたね。
 でも、何故(なにゆえ)か…ガイアの思いには心が打たれる。
 最後のはそれに対しての自分の思いでしかない。

 自分の創作で自分は泣いてもたー。



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