6. 撃破†SAM

文字数 5,923文字

〈抜粋:バプテスマのヨハネ登場シーンより〉

Re: 『汝ら、悔い改めよ』

荒れ野から怒りの声が聞こえてくる。

『蝮の末裔どもよ!』
『すでに斧は根元に置かれている』
『悔い改めにふさわしき実を結ばない木は、
   伐り倒されて、業火へと投げ入れられる』

声の主は洗礼者ヨハネ。
衣はラクダの毛で編まれており、腰部には皮が巻かれている。
蝗と野蜜を食物としていた。

『御国は近づけり。』
『主の道を整えよ、彼の道を”真っ直ぐ”なものに。』
『彼は、”聖霊”と”火”にて汝らにバプテスマを施さん。』

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Re: Back to Titan

AM3:15、満天の星空の下、タイタンが地響きをあげて歩いてゆく。
望遠で青白い焔がチラホラ燃えて点在するのが見えた。廃棄ガスの燃焼フレアである。
目的のエリアが近くなったことがわかる。

砂漠地帯へと入る直前、両肩のシャッターが開きオービタルが射出された。
重さがないかのように浮遊する正12面体。五つが付き添う。
一機は頭上へと、残り四機は足元に巨大な正方形を作って広がった。
すべてを結べばピラミッドとなる。

以後、この編隊は一ミリたりと離れたり陣形が崩れたりすることはない。
タイタンの歩みにピタリと合わせて移動してゆく。
まるで宙に留め置かれたかのようにして。

同時に巨人の体からは振動が発せられる。
複数の低周波がピッチを変えて組み合わせられている。
低周波は、震え、畝り、しとどに巨人の体表を上から下へと流れる。
可視化が叶うならば、溢れ零れ落ちる無数の撚糸たるものの白糸の滝。
これが原因であろう、砂地は固い陸路と化していた。
大地の頑強さは一切失われていない。

*************************

ここまでの途上、ルートを外れてタイタンは青海湖近くに現れている。
とある基地跡を訪れていた。211工場、これがそこの名称であった。
1960-1987年、核兵器の開発拠点であった場所(高濃縮ウランの再処理実験もしている)。

ここでこしらえられた玉の性能を確かめるべく起爆実験は長期で行われた。
1964ー96年の32年間にも渡る。外部に知られているだけで延べ46回、
タクラマカン砂漠の北東、”ロプ・ノール”にて集中して実験は行われた。

その数、広島で使われた玉の約1,370本分
この砂漠のそれも

起爆実験は行われたのだ!。
よりにもよってである。
浅はかにも程があるというもんだ。

当然の話として汚染物質は砂塵と交じり合い宙を舞った。
周辺および風下へと舞い降りていった。
また、偏西風に乗って彼方、東へ、と飛んでゆく。
また、循環する水を媒介として川が、湖が、そして地下水が汚染されていった。

放射能汚染による災害が何処に誰におよぶかなど考えもしなかったのだ。
ただ手間とコストを惜しんだだけ。核武装による戦力増強のみしか頭にはなかった

憎しみの思いを込めて、タイタンはここを木っ端微塵に踏み潰した。
徹底的な破壊、また一切容赦なきの蹂躙であった…。

『流石にこれに言い訳はできないな』とエリアは思った。
『まあ行き掛けの駄賃だ』と思い、さして気にはとめなかった。

彼女はこの国が嫌いだった。
現在、この地の”党員ら”は[蟻]の存在に近いモノへとなってしまっている。
活動原理は”翳質”と”激質”のみ。

1842年のアヘン戦争における清の滅亡を契機として、その後この国が辿った変節の数々。
国民のほとんどが、数十年にわたる長期の精神的退行が余儀なくされていた…。
そして現在の共産党こそが、それらの終局、結実点としての姿なのである。

1978年の開放政策からはたったの40年余りではないか…。
1980年代、かって眠れるドラゴンと呼ばれていた。
その市場の潜在的な可能性をさしての言説ではあったが…。
既に暗示されていたのだ‥

たるものとしてそれが目覚めることは…。

激動の果てに、どこかで

のだ!。
そして、それは裏舞台において、秘かに、どの蠢動を高めてきていた。
蟻という群生動物は、太古”スズメ蜂”から分化派生してきたものなのらしい。
やがてには[その頭には黄金の冠に似たものを付けたイナゴ]として語られる
ようなモノになっていくのかもしれない。これは可能性としてだけの話しである…。








〈暗転〉






モニターに、タリム油田の様子が映っている。前方約100K。
煙突の頂きにある航空障害灯が制止を求め、突き刺すようにビームを寄越してきている。
施設の彼方此方に設置されてあるLED光源が全体を厳かに照らし浮かび上がらせていた。
剥き出しのステンの輸送管、鋼鉄の筐体が青白い光に染まって浮き上がっている。
深夜にも関わらず、不夜城の… 否、

の如き異彩をそれは放っていた。




突如コックピット内で警報サインが閃いた。
左方九時方向より急速接近する飛行体があった。
ツァイダム盆地より発射された[東風―4]である。

索敵が果たされた時点で、待機してあった5機のオービタルに変化が起こる。
分厚いガラスが砕け散ったかのような高く硬い音が発せられていた。
4096Hz/天使界を開く音。不思議なのは最初の音が延々とフラットに続くことである。
減速したり尽きたりすることは一切なかった。五機より発生させられた振動音は互いに
急速に干渉しあい、そして瞬時に調和して、全くの無音状況へと変わる。
タイタンの周りには不可視の防壁が展開されていた。

DF―4は、最終三機が使用された。念には念を入れたのであろうが、全くの無駄に終わった。
爆風による砂嵐の中、目標には何の変化もなく健在が確認されたのだから。
歩みには何の停滞も遅滞も及んではいなかった。
以降は要観察モードへと移行されただけだった…。


〈暗転〉




皆様へ、
以降の内容は大幅に変更されます。
現在のものは、あくまで未完成の試し書き程度のものとご理解ください。
敬具






眼前にあるプラントに変化を捉える。
エリアの目には実相は全く異なって見えていた。
夜の射干玉に浮かび上がる霊光纏う金属の面に、無数の眼球たちがいた。
瞬くもの、目を細めるもの、見開くもの、涙を流すもの…

『なぜにお前たちは、今、こんなところに、そんな器において現界しているのだ?』
『ネフィリムたちよ!誰がお前たちをそんな姿に変えたのだ?』
『未だ意志なるなるものがお前たちに残っているのなら塵へと還ることを願え。』

タイタンは両腕を斜め45度に真っ直ぐ掲げ、胸部を開放する。
二つの巨大ダイアフラムより物理崩壊をもたらす振動波が発せられていった。
円を描いて、波紋状に繰り出される。拡散して広がり、全てを包んでいった。
分子レベルでの結合解除のコード信号である。
すべては文字通り「塵の如く」崩れて霧散した。
コンクリートも、H鋼も、ステンレスも、強化プラスチックも、何もかもが…

『このタクラマカンの地に触れることは許されない。』
『ここを開くことが許されているのはあの星(*)だけなのだから。』
『それまでは、この地獄の閂を外すことは何人たりとてあってはならない。』

*アヌリオス。もう一つの月のこと。微小片。やがてこれは落下してくる。

〈暗転〉

周囲は朝日によって明るみ始めていた。

「少し出しゃ張りが過ぎたようだな…』

心話が聞こえ、小指に称号サインが走った。

タイタンの頭上にあの重力球が浮かんでいた。

気付いた時にはもう遅かった。

間髪入れず、無軌道の多元的移動にて同着で暗黒球がタイタンに襲いかかる。
単なる物理的な衝撃であったに見えたにも関わらず、
巨人の体は、一瞬にして、引き千切れ、四肢胴体は四方に飛び散っていた。
空に[虚]が開かれ、散らばった残骸は浮かび上がり、吸引されて飲み込まれてゆく。

〈暗転〉

夜明けとなっている。
砂地を歩きながらサリムは事後を検分する。

「あの小娘は何処へやらへと逃げたか…」
「タイタンが無くなった以上、深追いをする必要もあるまい。」
「しかし余計なことをしてくれたものだ、ここの開発はまた振り出しに戻ったことになる。」

「既に、この地の底へと送られたショックは目覚めを促すにおいては十分であったはず。」
「代理者は再び活動を開始している。
   あの夢見へのヒトの参画は日を追うごとに増えるばかり」
「時の歯車は回り続け、ことの遅れは寸分もありはしない。」

こう呟き彼も消えた…。


*************************



Re: SAM Co. Ltd.

タリムで採掘される天然ガスは超遠距離をパイプ輸送をもって東部の都市群へと送られる。
その距離は約4,000キロになる。よって、各局所に設置されるコン○レッサーを制御する○○機器だけは日○製を採用するしかなかった。入札の時は、双方英語の通訳を介しての話になるので、意味の取り違いは当然の話し。図面に山程書き込みをして責任回避の策は一応労してくるのだが、これもあまり意味はない。終局は、商談の舞台は都市部に移され、夜の友愛の儀にて契約の締結となる。後は知ったこっちゃねえ〜。技術者を山ほど送り込んで、常駐させて、事あれば対処にあたらせばいいだけ。*(これ空想として語っているからね)。

欧州の会社も入札の時には沢山参加してた。彼らは中東において実績があるので無視もできない。そう言った出入りの中、アノ会社との関係はできてしまった。
プラント設備の営業マンとして会ったその代表は変わっていた。
精悍な面構えに野生と文明が見事に調和している。
歳がまったくわからなかった。しかし責任者としての貫禄は十分すぎるものが在った。
浅黒い肌に鋭い眼光。彼は流暢に北京語を話したのだ。
現地サウジでの実績と何故か共産主義への理解を強くアピールしてきた。
破格の価格提示は、そのことの証であると内緒話として伝えられる。
パイピングのすべてはこの会社が落札することとなった。

全く不思議なことだ...この営業マンについては会った人間達は皆口を揃えて言う。

「あまり…詳しくは憶えていない」と。

あり得るのだろうか?
数十億の契約の相手であるのに…
誰一人、彼の名前すら覚えてはいなかった。



〈続〉


付録:

Re: 勝手に意味読解!(こじつけ御免)
テレビコメディー『チアーズ』(Cheers)の主人公二人の名前において。

Mr.【Samuel "Sam" "Mayday" Malone】
舞台となる地下階にあるバーのオーナー。

Samuelは、色々あるがこのケースでは死の天使であるSamael。つまりはワル天使。
Samは、ヘブライ語の毒で、”彼の君”を表す隠語。
Maydayは、緊急事態においてで、いつもトラブルに巻き込まれることを表す。
しかし、これは彼の歓迎する事態、もしくは実は彼の操作の結果である。
Maloneは、maleのaloneでしかない。その存在が孤独であること、
そして唯一無二であることを示しているのだろう。

Miss.『Diane Chambers』
悪しき蛇(SAM)に誑かされてしまう若く美しい利発なお嬢さん。ウエイトレス役。

Dianeは月の女神のDiana。自ずとDivine、神々しいが特質として与えられている。
Chambersは複数形で、簡単には[空室]の意味であろう。彼氏がいない。
まだ恋愛経験が少ないことから魅力的な男性の多くに関心を持つので複数形なのかも知れない。

*あのドラマは本当によくできていた。
面白いだけのドラマにこんなきな臭い要素を持ち込むのはやったらあかんことだったかもね。
でも正解だと思う。「So〜 fake!」もだから返って効果を生む。あそこは彼の王国なのだから。

頷いてくれるのは、長期でアメリカ滞在を経験している五十代の方々のみでしょう。

機会があれば、ノーム、クレイブン、フレイジャーにおいてもやろう!

numb で、鈍感、無神経な人。craven で、臆病者。fragile のer付きで、繊細で傷つきやすい人。
辛辣な口利き役のカーラは、何故かヒンズー教のカーリーからだろう。
色黒で痩せてて背の低い「ミー」(ムーミン)としてある。ダイアンと同じくウエイトレスさん。
フレイジャーは、本当は”光の騎士”の役回りなんだけど、あそこじゃただの道化と化してしまう。
舞台が悪すぎ。サムと状況に手玉に取られてしまう。

おすすまいすw」


Re: 【アヌリオス】
この二つの破片の大きなほうは『ルーンデルペルゾ』、小さなほうは『アヌリオス』と名付けられた。〈略〉最近では大きな破片は『月』と呼ばれ、小さいほうの名前は次第に忘れ去られていった。 〈略〉惑星地球上の現在の生物たちは、小さい方の破片の名前も知らないばかりか、それが存在していることさえ気づいていないのだ。〈略〉この惑星にかって存在した『アトランティス』という大陸の住民たちは、まだこの第二の破片のことを知っていて、やはり『アヌリオス』という名でそれを呼んでいた。〈略〉末期にはこの第二の破片を『ケメスパイ』と呼ぶようにもなった。

それは『人に安眠を絶対に許さないもの』という意味であった。


Belze. (邦)、P.64、月の生成の原因より。

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